あんたは特別だから虐待しないが、そのかわり妹はできが良くないから虐待します

雪月華月

なんだそれと言える話

 この世にこんなやつおるん? というお話をしようと思う。

 あまり明るくない話である。


 私は創作をするのが好きで、もう十七年ほど書き続けている。

幸いなことに、けなされることはそれほどなく、褒められる時は褒められ、とても幸せな創作人生を歩んでいる……と言える。


 まあ、それは対外的にそうなのだ。そして事実そうだと重々

承知している。私自身も。


 だけど私は褒められるたびに、強いプレッシャーやなにか恐ろしいことがおきるのではと怖くなってしまう。

 褒められてもちろんとても嬉しい側面はある、嬉しくて、その喜びをかみしめてしまい、相手への返信が遅れてしまうこともしばしばだ。だが、褒められるたびにとても恐ろしい。


 理由はわかっているのだ。

 私は【書くことが出来た】から【虐待】されずにすんだと。

 その記憶が私を穏やかにさせない。


 私の一家は複雑で、ことの詳細ははぶくが母親がまず、実の母親に虐待され、誰からも馬鹿にされていた。それは夫でも、義母ですらそうだったのである。それでも母親はめげずに、ただただ子どもを愛していたのだが、とある事情が重なり実家に戻ることになった(父が亡くなったことも大きかった)

 だがそこで待っていたのは、母親を奴隷のように扱う祖母と。その血を引き継いでいた娘の虐待だった。

 その当時たまたま自立していて、家を離れていた私が帰省して驚いた。家に残っていた妹が精神にぼろぼろで、疲れ果てていたことだ。妹は何も言わなかったが、母の話から、精神的な虐待を受けていたようだった。


 私も母の娘なので、虐待されて当然だった。できの悪い娘から生まれた子どもなんて、祖母からすれば可愛くないのだから。


 だか、私はそうならなかった。


 実家に戻った際、母は私の作品を持ち帰っており、たまたま祖母はその存在を知ってしまったのだ。祖母はそのことを自分の姉に伝えた。祖母の姉は文芸に詳しく、小説をかけるだけですごい才能があると喜んだ。この子は作家になれると。


 祖母にとって姉は、あこがれというか、かなわない存在だった。


 その姉が褒める孫がいる。

 それはとても利用価値のある。

 虐待しないだけの理由になり、可愛い存在になれたのだ。

 でも筆者の妹は可愛くないので、駄目なやつなので、虐待します。


 なんだそれという話である。


 結果的に妹はいつも普通普通なにもない、お姉ちゃんのように得意なものはなにもないと、卑下のはげしい、人に自分を見せない子になった。


 なんだそれって話である。

 なぜ姉妹で、愛情や待遇に格差が生まれてしまうのだ。

 親が愛されなかったことが、孫まで影響しなければいけなかったのだ。


 母親は必死に守ろうとしたが、本人が祖母の奴隷なのである。限度もあったのだろう。


 そして私も何も出来なかった。自立していて家にいられなかったのも、大きかったが。それでも何も出来なかったことに無力を感じている。


 いつも人に褒められるたびに心のなかでとても恐ろしい気分になる。考えてはいけないのだ、皆が祖母でないのだから。

 だが私はいつも心の底に恐怖が溜まっっている。


 褒められれば褒められるほど、称賛をうければうけるほど、過去の経験がフラッシュバックする。


 私は今度は誰を犠牲に、褒められているのだろう。

 そんな馬鹿げた妄想につきまとわれている。


 けれどパニックになってもおかしいので、嬉しさもあるし

 素直に言葉を受け入れている。


 それが私の過去への抵抗だ。

 恐怖に屈してはいけない……恐怖に耐えなければならない。

 

 だがその抵抗も、嬉しさと苦しさが同居しているのだから、人生って、難しいなと思う。


 ちなみに皆さんは、この苦しみの解消法を、知っていますか?


 なにかあるなら、どうか教えて下さい。

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