No.2 転校生は元囚人
「はい、ユキチカくんあ~んしてください」
「あー」
「ユキチカ、クッキーはそのくらいにしとかないと昼飯食えなくなるぞ。お前らもクッキーしまえ」
ユキチカと呼ばれる坊主頭で拘束具まみれの男に制服の格好をした女性がクッキー食べさせていた。
「ああ、すみません。ここにサインだったね」
「……あ、はい。他の書類も内容をご確認頂いて、問題なければ線が引かれている所にサインを」
なんとも違和感しかない状況に戸惑いながらもイエナガは手続きを進行させる。
「子煩悩は変わらんな鬼丸、浮かれすぎだ」
フドウがユキチカの口の周りを拭いている男に向かっていった。
「当たり前だろ!この鬼丸ヤスシ、愛息子の大事な日に浮かれないでいられるか!」
男は鬼丸ヤスシと名乗り自身の胸をドンと叩く。
「やはりお二人は親子なのですね?」
イエナガが尋ねる。
「そうだ!まさかうちの子が犯罪者とでも?」
「い、いえ!別にそんな事は!」
首をブンブンと横に振りそう答えるイエナガ。
「まあそのとおりなんだけど」
「え?!結局囚人なんですか!?」
驚きでメガネがズレるイエナガ。
「まあ、小さい頃に色んな国の機密情報にアクセスして落書きしたぐらいだ」
(いや、ガッツリやってる!!!)
内心ツッコんでしまうイエナガ。
その後ろでユキチカは拘束具を外してもらっていた。台から立ち上がったユキチカは伸びをする。
「んーー!」
「身長180cm体重は100kg。大きく育ったな」
伸びをする彼を見てフドウが言う。
「ひろーい!お父さんの部屋みたい!」
まだ拘束用のベルトが服にぶら下がった状態で走り回るユキチカ。
「早くユキチカのベルト回収してくれ。おーいユキチカ、人様の部屋で走り回るのはダメだぞ」
ユキチカはピタッと止まる。
「ねぇお父さん、ケーキ食べたい!ここに来る間にあったお店!」
「ケーキ?うーん、いや、これからお前はお世話になるクラスの皆さんと先生に挨拶するから、今はダメだぞ」
話していると扉をノックする音が。
「あ、到着したみたいですね!良いタイミング!」
イエナガが扉を開ける。
そこに立っていたのはエプロンドレスを着た少女だった。
「初めまして、汎用型アンドロイドNo.13U223577です。本日より鬼丸ユキチカ様の専属メイドとしてご奉仕させて頂きます」
そう名乗ったアンドロイドは丁寧にドレスの裾を持ち上げお辞儀をした。
「これは丁寧にどうも、ほら、ユキチカ!ご挨拶しなさい、えーっと」
「No.13U2235777です、呼び方はなんなりと」
「じゃあウルル!」
後ろからユキチカが現れ、アンドロイドのエプロンに刺繍されたロゴを指さした。
「ウルティメイト社製のアンドロイドだからか?」
フドウが刺繍をみてそういった。
「ウルル、畏まりました。ではどうぞウルルとお呼びください」
ウルルがお辞儀をするとユキチカも彼女を真似てお辞儀をした。
「署長、そろそろお時間です」
「なに!?どうせいつもの会議だろ!?あと30分くらい遅らせろ!」
「すでに1時間遅らせています。これ以上は流石に反感を買いますよ」
「はあ、心狭い連中だ。我が子以上に時間をかける価値があるもの等無いというのに。どうせやるだけ無駄な会議だし」
部下からそう言われた鬼丸ヤスシはユキチカに抱きついて頭を撫でる。
「ユキチカ君の前でみっともないですよ」
露骨に不機嫌な顔をした鬼丸ヤスシはユキチカをもう一度抱きしめた。
「それじゃあな、ユキチカ!元気に幸せになるんだぞ、大丈夫きっとできる!たまには顔見せてくれ」
「うん!お父さんも元気でね!」
ユキチカがニコッと笑って答えた。
「うおおお!うちの子の笑顔100万カラッツ!!ダメだ!自分の力じゃコイツから離れられねぇ!」
それを見て思わず涙を流す鬼丸ヤスシ。
「はーい、じゃあ引きずって行きますからねぇ~。じゃあねーユキチカ君、学校生活楽しんでね!」
「ユギヂガァァァ!」
泣きながら部下に引きずられ鬼丸ヤスシは部屋から出ていった。
「個性的なお父様ですね……」
「しょうがない部分もあるが。子離れしないとな」
鬼丸ヤスシを見送った二人が部屋の中に戻る。
「さて鬼丸ユキチカくん、君の教室だが……」
そこにいるはずのユキチカとアンドロイドのウルルが居なくなっていた。
「え……ええええ?!」
「はぁ、早速か」
叫ぶイエナガ、自身の額をピシャッと叩くフドウ。
二人は一体どこに?
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