-15- 甘い、甘い。
宿舎の庭に紗良が出て、木村にそっと近付いた。
「木村くん、お疲れ。」
「お疲れ。もう、撮影はこれで終わりでいいと思う。あとは残りの夏休みで編集する。」
「いいの、できそう?」
「わかんない。でも、やってみる。」
二人は静かになった。
「もしこの映像が完成したら、私たちの関係は終わってしまうのかな。」
木村は、紗良の方を向いた。
「木村くん、今、話したいことがあるんだけど、いいかな。」
うなずく木村。
「私、木村くんの撮る映像が大好きだよ。でも、それだけじゃないの。私のこと撮ってもらいたかったのは、木村くんと話すきっかけを作りたかったからだったんだ。でも、木村くんに撮られれば撮られるほど、自分が気持ち悪くなっていくの。木村くんに撮られると、誰にも見せられない自分を見せちゃうの」
黙る二人。
「木村―!佐藤―!食事時間だぞー!」
「木村くんの、誰もいじめないところ、みんなに平等なところに、救われたの」
木村は、紗良をじっと見つめた。
「初めて、カメラ越しじゃなくて私を見てくれたね、ちゃんと。」
木村は、頭をかいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます