-15- 甘い、甘い。

宿舎の庭に紗良が出て、木村にそっと近付いた。

「木村くん、お疲れ。」

「お疲れ。もう、撮影はこれで終わりでいいと思う。あとは残りの夏休みで編集する。」

「いいの、できそう?」

「わかんない。でも、やってみる。」

二人は静かになった。

「もしこの映像が完成したら、私たちの関係は終わってしまうのかな。」

木村は、紗良の方を向いた。

「木村くん、今、話したいことがあるんだけど、いいかな。」

うなずく木村。

「私、木村くんの撮る映像が大好きだよ。でも、それだけじゃないの。私のこと撮ってもらいたかったのは、木村くんと話すきっかけを作りたかったからだったんだ。でも、木村くんに撮られれば撮られるほど、自分が気持ち悪くなっていくの。木村くんに撮られると、誰にも見せられない自分を見せちゃうの」

黙る二人。

「木村―!佐藤―!食事時間だぞー!」

「木村くんの、誰もいじめないところ、みんなに平等なところに、救われたの」

木村は、紗良をじっと見つめた。

「初めて、カメラ越しじゃなくて私を見てくれたね、ちゃんと。」

木村は、頭をかいた。

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