-3- 撮影

二人が美術室で撮影を始めると、

「木村が佐藤撮ってるぞ」

と、部長が言った。

紗良が、

「動画コンクール用の映像なんです」

と言うと、

「おお、がんばれ」

と、部長が言った。

木村がうなずいた。

部長が紗良に言った。

「佐藤の絵、文化祭で評判良かったよ。美大は本当に行かないのか?」

「行きたいんですけどねー。色々事情があるので」

「ま、みんなそれぞれに色々あるよな。木村は、大学どうするんだ?」

木村は、首をかしげる。

「ま、高二も後半になると嫌でも進路のこと聞かれるからさ、今は考えなくてもいいのかもな」

会話をしながらも、木村は、カメラを回す。

「どうして絵を描こうと思ったの?」

「うち、転勤が多くて、引っ越しばかりしてたから、仲良くなってもすぐバイバイなんだよね。だから、楽しかった記憶を忘れないように、綺麗な色で描くんだ」

「辛い記憶は?」

紗良は、首をすくめる。

「忘れちゃう」

すると、

「私も入れて入れて!」

松田先輩だ。部長とともに、今日、美術部を引退した。割と背は高く、後ろで髪の毛を一つ結びにしている。頼れる先輩だ。

木村は、一瞬松田先輩にカメラを向けたが、すぐにそらす。笑顔の松田先輩。

部長が、

「おい松田、木村をからかわない」

と言うと、松田先輩は、

「からかってないわよ。だって、木村くんにはちゃんといい人がいるじゃない。」

と、言った。

「え、木村、誰なんだ?」

と、部長。

首をかしげる木村。紗良は、そんなみんなの様子を見ている。

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