ファースト・シーン

鈴木すず

-0- プロローグ

とある高校の美術部の教室。

今日は文化祭最終日。美術部には絵が並ぶ中、一つだけ映像が展示されている。

「木村はなかなかいい作品撮るんだけど、人間を撮らないんだよな。人を撮るようになったら、また変わってくると思うよ。ま、俺は写真や映像は専門じゃないから、俺の言葉はあてにならないけどな。」

顧問の先生が、映像を作った、木村健に言った。木村は、黙ってうなずいている。木村の映像を、同じ美術部の佐藤紗良が熱心に見つめている。もう何十回も見た。それでも、見飽きることはなかった。


部長が、紗良に、

「佐藤、休憩入っていいぞ。」

と、言った。

「あ、ここにいます。何か、手伝うこととかありますか」

「じゃあ、これコピー取ってきて」

紗良は、コピー用紙を受け取って、教室を出て行った。カメラを構えた木村とすれ違う。

「木村くん。」

しかし、木村は被写体に夢中になっていて、気付かなかった。何を撮っているんだろう。紗良は、少し止まって、また通り過ぎた。

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