やたら高ランクを設定している作中人物は相当な無能


「金ランクのダンジョンが?」

「あぁ。ビショップ級モンスターがウジャウジャいるのが、街の近くに突然生まれた」

「厄介な……」

「そこで、お前さんを呼び出したってわけだ。この街唯一のSSSランク冒険者であるお前さんをな」

「とっとと踏破してこいってことかよ……Sクラスのクエスをポンと言うなよ。ギルドマスターの横暴じゃないのか?」

「ダンジョンに関わることで、街がおびやかすようなことが起こりゃ、ギルドマスターの仕事だろうが? そんで仕事ならキッチリやらなきゃいけないだろうが?」

「アンタも元SSSランクだろうが……たまには現場で仕事してみろよ。深々度ダンジョンなら、甲種のアイテムだって見つかるぞ」



………



 階級・階位・等級・ランク・カテゴリー、色んな言い方があるだろうが、まぁひと目で強さや優劣の序列がわかるアレだ。

 特にファンタジー作品であればよく使われるのを見かけるが……個人的にはこれもケチつけたい。


 ランクというものを『ひと目で強さや優劣の序列がわかる』と前述したが、実は違う。

 なんとなーく漠然とわかったような気になるだけで、本質的にはなにひとつわかることは、ほぼない。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


■なにを基準にランク分けしてんの?■


 まず、一番わかりやすいだろう、災害のカテゴライズから話そう。

 上記の例でいえば、『金ランク』としているダンジョンの脅威度、『ビショップ級』としているモンスターの脅威度がこれに当たるだろう。それに依頼の難易度『Sクラス』も関連してくる。


 現実の災害では、台風と地震、火山噴火にランク分けが存在する。


 台風は簡単だ。日本の場合は最大風速で『強い』『非常に強い』『猛烈な』の三種類、風速15m/s以上の範囲の大きさで『大型』『超大型』の言い分けをするよう、気象庁が定めている。


 火山は、噴火警戒レベルという物差しが一般的で、たまに火山爆発指数というものが出てくる。

 噴火警戒レベルはその火山ごとに基準を定めるので、一概には言えないが、大雑把にはどれだけ生活に影響があるかを基準に定められてる。

 火山爆発指数は、噴火した際の噴出物の量でランク分けされている。


 地震の強さはマグニチュードと震度で表される。

 マグニチュードは震源から観測点までの距離と、振幅から計算し、地震で発生するエネルギーを算出しランク分けする。

 震度は揺れの大きさ……ひいては継続時間と加速度を計測して算出する。


 このように、なにかを計測し、結果が『○○以上~○○未満だから階級はいくつ』という風にわかりやすく発表しているのだ。



 でだ。フィクション作品の場合。

 地域やらモンスターの脅威度って、なにを基準にして、なにを計測して、ランク分けしてんの?


 仮にランク分けするとしたら、モンスターを魔法の眼鏡で見て、『戦闘力…たったの5か…ゴミめ』とかやってんの?

 いやまぁセリフは冗談だが、一番手っ取り早いのはコレなのだ。魔素だか魔力値だか架空のエネルギー濃度、ゲーム的にはレベルやステータスポイント、MP量など、なにか基準となるものを数値計測するのが一番なのだ。技術的にそれが可能なのかという疑問もあるが、作中世界内のことなのでどうとでもなる。


 まぁ、これはキチンとした設定づけをしなくても、漠然ばくぜんとそうなっている作品がほとんどだが。魔力が多い=強いにしている作品が圧倒的なんだし。


 ダンジョン……階層型空間という定義であれば、階層の数や深さでランク分けできる。建物高さで分けられる現実の高層建築と同じだ。深いほど強いモンスターが出現するという設定でも書かれていれば問題ない。



 しかし依頼の難易度となると……これはランク分けが難しい。

 要素が複合的に絡んでくるからだ。


 そもそもモンスターの脅威度だって、計る基準を保有魔力の強さとしても、脅威度を示しているとは言いがたい。概念的な『強さ』とは全く異なると考えるべき。

 体格が中型犬くらいでも、単体と群れでは対処が全く異なる。毒や遠距離攻撃手段の有無でも異なる。

 保有魔力が多く『強い』とされるモンスターでも、縄張りを犯さず遭遇しても対処すれば、問答無用に襲い掛かるのに比べれば脅威度は低くなる。

 現実で一番人間を殺している動物は蚊だと言われている。デング熱やマラリアのウィルスを媒介しているからだ、『強さ』とは異なるという意見があるかもしれないが、それを言えば毒や知恵を持つものも同じことが言えるし、『脅威度』という物差しだと変わらない。


 依頼や任務の難易度となると、もっと複合的になる。

 そういったモンスターの遭遇率は当然、地形も見通しが利く・利かないで変わってくる。水場の有無、食べられる植物の有無でも『生存』という視点においては重要だ。砂漠や活火山や氷雪など極環境であれば、そこに行くだけでも難易度が上がる。

 

 人間相手、街中での依頼とかになると、どんな脅威があるか不透明な部分が大きいため、脅威度をランク分けするのは相当難しい。



 現実に難易度を示しているものを考えると、例えば入学試験は学校の偏差値で表される。模試だと加えて受験者数から合格率を算出し、AからEのランク付けをする。

 あと、国家試験などでは、合格率そのままを難易度として示す。低ければ低いほど難易度は高い。


 だが、目安に過ぎない。

 合格率が何パーセントだろうと、受験する人間にとっては、合格100不合格0かのどちらかだ。

 それに部分的な判定に過ぎない。門の狭さを示しているだけなのだ。

 仮に合格をしても、その学生が卒業までその学校の授業について行けるかは別問題だし、国家資格を得たところでその職業に就いて食べていけるかは全く違う話だ。そしてその部分の難易度は示されることはない。結局その人次第だから。


 フィクション作品で短絡的に描かれる難易度は、この複合的な部分を一言で示そうとしている意図があるため、無理があるのだ。


 仮に冒険者の活躍する場をランク区分するとしたら、一番手っ取り早いの過去の依頼達成率でのランク分けだ。

 地域別、そして討伐対象や依頼内容別の過去データを参照し、高達成率なら低ランク、低達成率なら高ランクと区分する。こんな感じに。


・Eランク:依頼達成可能性80パーセント以上

・Dランク:依頼達成可能性60パーセント程度

・Cランク:依頼達成可能性50パーセント程度

・Bランク:依頼達成可能性30パーセント程度

・Aランク:依頼達成可能性20パーセント程度

・Sランク:依頼達成可能性10パーセント未満


 Sランクは存在しないし、アルファベットのつけ方が逆順だが、模試の合格判定基準はこの考え方だ。


 ただこの場合、冒険者ランクと難易度クエストランクには、なんら関係がない。

 個人にカスタマイズされた基準ではないのだ。請け負う冒険者の優劣に関わらず、純粋に達成の難しさを示しているだけだから。初心者向け、冒険者暦ウン年以上向けくらいの目安にはなるが、それ以上は無理。


 具体的には『この依頼はDランク冒険者以上でないと請負えません』なんて展開は不可能と考えるのが自然となる。

 だって高ランク冒険者でも、高ランククエストは普通に失敗、最悪死ねることになるじゃん? そんな依頼、誰かが請け負う?


 この辺りの話は後に解説するが、冒険者ランクを『免許』として扱っているなら、まだあり得るのだが……

 冒険者ランクに関わらず低ランククエストばかりが掃けて、高ランククエストは塩漬け状態。仕方なく高ランククエストは高ランク冒険者が義務として請負わせる⇒失敗、そして死という非人道的展開になるよ?

 まぁ、冒険者はみんな、ハイリスク・ハイリターンに燃えるスピリッツを持っているとするならば、まだなんとかなるか?


 もっと詳細に難易度のランクを定めようとしたら、上記に書いた内容で、独自の基準を定めるしかない。

 例えば、討伐対象のモンスターがDランク相当だとしても、クエストランクを安直にDとは定めず……


・見通しが利かない茂った森 +2

・群れで襲撃してくるモンスターが生息する地域 +3

・木の幹を削り縄張りを主張 ー1

……


 てな感じで、何ポイントでランクを上下させて最終的に発行する。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


■『価値』を定める『ランク』はない


 次に物の評価だ。会話例で言えば『甲種のアイテム』にあたる。


 これは現実には、様々な評価基準がある。

 一番多いのは大きさおよび重さだ。食べ物でも服でもS・M・L・LLなどとランク分けしているのは全部これにあたる。


 ただし『価値』となると、また話が変わってくる。アイテムのランクとなるとそれだろう。

 日用品ならばともかく、希少価値がある物の価値は、普遍的で固定化されてはいない。相場はあるが、評価者によって変わってくる。

 中学高校レベルの美術経験しかなければ、子供のラクガキみたいなピカソの絵がなぜ大金で取引されるのか理解できないだろう。そういうことだ。

 なのでアイテムをランク付けする基準で考えられるのは、やはり数字、査定価格でランク分けしている……というのが一番手っ取り早いのだが。


 もうひとつ考えられるとすれば、ブランドだ。

 装飾品や衣料品だとアバウトだから、食べ物に限定すると、見た目はもちろん糖度や大きさを厳しく検査し、クリアしたものだけをブランド名をつけて売り出す。

 そのブランドを冠する商品はそれだけ美味い、つまり価値があるという保障をつけているわけだ。

 それをどうやって測るのかに疑問が残るが、たとえば人間の手で到達できる範囲を最低ランク、鍛冶に秀でた種族ドワーフで作れる範囲をその次、神でなければ製造できないのを最高ランクとか、そういう分け方は考えられなくもない。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


■冒険者ランク、マジで役に立たねぇ!■


 最後に冒険者ランクの話だ。

 これはマジでわからん。

 冒険者ランクは『資格』なのか、『サービス』なのか。どっちも考えられるし、どっちでもないと思えるからだ。


 現実に存在するランク付けの中で、冒険者ランクに当てはめ可能そうなのは、『資格』の考え方だと思う。

 剣道・柔道・書道・将棋・囲碁・英検・漢検などで使われている段級位。

 あるいは警察・消防・自衛隊で採用されている階級。

 もしかすれば建築士・簿記検定・自動車整備士・電気工事士など、○級と付く国家試験を思い浮かべるかもしれない。


 電気工事士だと一種と二種とがあり、着手可能可能な工事規模が違う。二種だと一般住宅程度の仕事しか請け負えないが、一種だと大型施設の仕事も請け負える。仕事の重要性や難易度も変わってくるが、給与も当然変わってくる。

 冒険者ランクも似たようなもの……という設定を作ることは可能だ。ランクごとに報酬いくら未満まで、採集・討伐と可能な仕事内容が変わるとか、設定はできる。



 考えられる冒険者ランクの基準で、もうひとつは『サービス』だ。

 飛行機の席ならエコノミー・ビジネス・ファーストクラス、ホテルの客室ならエコノミー・スタンダード・デラックス・エグゼクティブ・スィートと、支払う金額で受けられるサービスが異なるランク付けがされている。

 あるいはポイントカードで、獲得ポイントや利用状況で、ゴールド会員とかプラチナ会員とランクアップするほうが身近だろうか?

 冒険者ギルドも依頼達成がポイントが付与されて、累計で冒険者ランクが上がる、とも考えられる。



 だが、実際作品内での使われ方を見ると、どちらも考えにくいのだ。そこらを深掘りして納得できる作品もあるにはあるが、ごく小数。


 大雑把に冒険者ランクを設定している作者さんは、『サービス』の考え方を漠然と採用していると思う。

 難しい依頼を完遂しました。プラス何ポイント。

 強いモンスターを倒しました。プラス何ポイント。

 累計何ポイントなのでランクアップします。

 そんな感じだろう。


 しかしこの場合、冒険者ランクを優秀さの基準にするのは危険すぎる。なろう系作品がバカにされる時に散々言われることだが、周囲Sageして主人公以外のキャラのノータリンにしている。


 ビギナーズラックを実力として数えてしまうのだ。

 『運も実力のうち』という言葉もあるが、それは実力があっての話だ。『運がなければ実力はない』程度の人間を高実力者として認定してしまう制度など、意味がないどころか害悪だ。

 例えば、高ランクモンスターの死体を偶然見つけて、討伐証明となる部位を持って帰って、事の真相を話さなければ皆がヨイショしてくれる。

 で。ランクアップしたら、護衛も採取も完璧な信頼できる冒険者として扱われるわけだが?

 そんな実力はないわけだから、冒険者当人が破滅しても自業自得だが、冒険者ギルドはそうはいかない。優秀ではない人間を優秀として喧伝したわけだから、責任問題に発展するぞ?



 じゃあ『免許』か? とするにも考えにくい。

 資格というのは、段階的ではあれど『その筋のプロフェッショナルだ』と保障する証明書だ。

 危険物取扱や警備に関する資格みたいに、『冒険者・探索』『冒険者・護衛』『冒険者・対人戦闘』なんて免許が何種類も存在し、その取得数に応じてランクが上がる……というシステムなら納得できるのだが。


 でも、多くの作品で見られる冒険者の生き様は、そうはなっていない。腕っ節がありさえすれば誰でも就ける職業として描かれている。プロフェッショナルにはほど遠い。

 そもそも冒険者ギルドに依頼を出す側も投げやりな募集をしている。普通に考えれば探索依頼ならば探索が得意な者、護衛依頼ならば護衛が得意な者を求めるはずなのに、大雑把な説明を掲示板で張り出されるだけなのを許容して『誰でもいいや』と言わんばかりの募集をしている。なんでも屋を専門家と誤解しているか、専門家など必要としていないのか、どちらかとしか考えられない。



 冒険者ランクはどういった基準で分けられているのか、掘り下げて考えると全くわからない。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


■『Sランク』はありうるが『SSランク』『SSSランク』を定めてたら、それいい出したヤツ害悪だよ?■


 で。ここまでも本題と言えばそうだけど、前置きに近い。ここからが本番と言っていい。

 フィクションに出てくるランク付けは、基準がわからず目安にしかならない……といった話をした。


 だが現実の生活内でも、大抵はそんなものだ。

 武術なら級持ちよりも段持ち、段でも数字が上に行くほど強いだろうとは予想できる。

 国家試験でどういう違いがあるかわからずとも、二級よりは一級が上で、扱える業務も上位だろうと想像がつく。

 日常生活範囲内なら、その程度のファジーでアバウトな認識で問題ないので、作品内のフィクションランクがアバウトでも、まだ許容できるのだ。


 なので問題は設定というよりかは、使い方だ。ビミョーなニュアンスの違いになるが。


 一番わかりやすいのは、上位ランクを手厚くする理由がない。

 なろう系で大好きな、やたらSが並ぶランク。

 1級の上に特級は存在しうるので、Sランクはまだ認めるが、更に上のSSランク・SSSランクはありえない。


 こんなの設定をする作者さんは、『とにかくスゴい』って思わせたいから、そんなランク作ったんだろうけど、もう少し考えようぜ?

 だってこれ、『王様より偉いスーパーキングがいるんだぞ~』『だったらもっと偉いハイパーキング~』みたいな、すんごい幼稚で陳腐な張り合いだし。



 何段階かにランク分けし、その枠に収まらない存在が出てきたなら、全部ひっくるめて『Sランク』と認定するのが普通の考え方だ。


 前述したように冒険者ギルドがなにを基準にランク区分しているのかイマイチわからないが、ここは獲得ポイントの累計で考えてみよう。買い物する時のポイントサービスと同じだ。

 するとランク分けは下記のような定義となる。


・Cランク会員:0ポイント~100ポイント

・Bランク会員:101ポイント~500ポイント

・Aランク会員:501ポイント~1000ポイント

・Sランク会員:1001ポイント~


 だからランキング1位と2位以下ではポイント数に開きがあったとしても、2位以下も最高ランクの条件を満たしているなら、1位と同じSランクの枠組みに入れてしまう。


 それ以上細分化しても意味がないからだ。


 その理由も手っ取り早く説明するには……ホテルの客室グレードを例に出せばわかりやすいだろうか?

 定義はなく慣習的なものだが、ホテルの客室は以下のようにグレード分けされている。


・スイート

・セミスイート/ジュニアスイート

・エグゼクティブ

・デラックス

・スーペリア

・モデレート

・スタンダード

・エコノミー

・バジェット


 庶民は特別な日に奮発しない限り、エコノミーかスタンダードより上は用事ないし、金持ちは金持ちで高グレードしか用事ないから、そのホテルで働いている人間にしかわからない違いだ。

 庶民が他に感想あるとすれば『スイートが一番ゴージャス』くらいの認識だろうが、ホテルによっては更に上にデラックス・スイートとかエグゼクティブ・スイートとかあって、ワケわからんから。

 SSランク、SSSランクが正にそれなのだ。一般市民目線で考えたら、Sランク以上は『とにかくスゲー』くらいの感想で終わり。細かくランク区分したところで、なにが違うのか伝わらない。


 更に、このランクを設定した側にとって、デメリットはあれどなにひとつメリットがない。

 ランクやグレードが違うということは、そこに待遇の差が存在するということだ。

 なので、冒険者ギルドとしては、SランクとSSランク、SSランクとSSSランクと、待遇の差をつけなければならないのだが……

 なに変えるの? 少なくとも自分は思いつかない。


 ホテル客室の場合だったら、面積とか部屋の中の部屋数とか調度で差別化可能だ。例えばフロアに二部屋しかないスイートルームでサービスも同等だが、部屋面積の差があれば、大きいほうをデラックス・スイート、小さいほうを普通のスイートといった具合に名称区分する理由が存在しうる。区分するなら調度も変更したほうがわかりやすいので、差別化はしやすいし目的もわかる。


 冒険者ランクの場合はそれが可能だろうか?

 例えば、ドッグタグみたいな冒険者の身分証明があり、ランク上がると素材が鉄・銅・銀・金・白金とか稀少価値が上がっていく設定があるとしよう。

 SSランク・SSSランクどうするの? 変えなきゃいけないけど、ここでミスリルだのアダマンチウムだの幻想金属使うとSランクとの格差が凄まじくて、常人には届かない領域でもすごく安っぽくなるよ?

 だけど素材同じでSの数が違うだけってのも、差があるとは言えないでしょ?

 いい感じに『こう差別化すればいい』という案がある方は、是非とも聞かせていただきたい。

 採用できる案がないならば、Sランクだけを設定して、『最高グレードの待遇』としてしまったほうが楽だし、現実にもそれ以上は不可能と考えるしかない。



 最大のデメリットは、少数であることだ。

 最低ランクなら数万人規模だろうが、最高であろうSランクなんて数人しか存在しないだろう。

 で? 更にSSランク・SSSランクになれば、存在しないのが当たり前、あっても一人やひとつ。


 たったひとつの例外のために、制度全体を変えるの? 

 書類一枚書き換えればいいだけじゃないからな? 冒険者ギルドって中世ヨーロッパ風世界に存在してはいけない、リアルの現代にも存在しない、全世界超国家規模の組織だからな?

 そのランクを新たに作って掲示物を作り直すだけでも、組織全体ともなれば、とんでもない費用が必要になるけど?

 通常の基準では計れない事例は全部『その他Sランク』にカテゴリーしておけば不用なのに、特例の中でも更に特例を区分するって……

 そのランク分け作った人間、組織にとって害悪と言っていいぞ?


 いや。少数の例外で、制度全体を作り変えることはあるよ?

 現実には、気象庁の震度階級。前年までは7段階だったのに、三陸はるか沖地震や阪神淡路大震災を期に、10段階に見直されている。

 となるとSSSランク冒険者なんてのは、災害と同レベルの見方をされていて、自慢するようなモンじゃないしむしろ悪評と認識するべきだと思うが。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○


■ランク付けの目的と手段が入れ違ってない?■


 前述のSSランク・SSSランクにも言えることだが、特に自然現象、冒頭例文で言えばダンジョンとモンスターのランクに当たる内容が変なのだ。

 『上限設定』と言ってしまうと少し違うのだが、こう言うしかない。


>「金ランクのダンジョンが?」

>「あぁ。ビショップ級モンスターがウジャウジャいるのが、街の近くに突然生まれた」

>「厄介な……」


 冒頭例文のコレを見て、どう思っただろうか?

 自分なんかは『あーはいはいまだ全然通過点で話が続けばそのうち白金プラチナランクとかクィーン級とか出すつもりなのね』とか思って醒めた目を向ける。


 このように物語の問題点として、『まだ上がある』と一目瞭然のランク付け設定にしてしまうのは、個人的にはあまりいいとは思えない。

 これがまだ弱い主人公で、中堅どころでも充分すぎるくらい脅威なら話は違うが、最強主人公が中堅で危機感持ってるのはすごく冷める。



 設定としての問題点は、なぜその上限が定められているかわからない。


 たとえば震度――気象庁震度階級だと、震度7の激震までしか設定されていない。

 その理由は、ふたつある。


 ひとつはわかりやすい。震度8なんて地震が観測されていないからだ。

 これだけならば計算上で、上位のランクを定める可能性もあるが……


 もうひとつ。震度8のランク付けをしたところで、無意味だから。

 震度7の段階で最大級の対応が必要なのだから、それを超える地震が来ても、やることはなにも変わらないし、それ以上はできない。


 百歩譲って、特例Sランクの上に特例が現れたから、制度を改定した……とかならまだ理解できる。

 だけど前持ってそのランクがあるって、なに? 使うかもわからんものを前もって用意してるって、どういうこと?



 やたら学歴だの収入だのでマウント取ってくる人間は嫌われる。

 やたら上を作ってSUGEEするのはそれだからな?

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