誰も気にしないだろうけど自分はすっごく気になる設定
風待月
『○○ビーム』『○○レーザー』と安直に名づけるの少し考えて?
「エーテルレーザーが効かない……!? どうなってるんだ!?」
「主人公さん、敵機が発するフィールドが、レーザーを減衰させてかき消しているんです!」
「だったらフロギストンビームだ!」
「ダメです! 効果ありません!」
「く……どうすれば……」
「最大攻撃力で突破するかしありません」
「あれか……あれは確かに強力だが、スキが大きいし、発射した後のデメリットが大きい……なによりヒロイン、お前にも大きな負担をかける」
「でも、他に方法がありません。それに、主人公さんのことを信じてます」
「…………わかった。やるぞ!」
「はい!」
「「彼ピッピしゅきしゅきビームッッ!」」
………………
…………
……
ビームとレーザー。
SFではお馴染み、たまに他のジャンルでも出てくるこの言葉。
これねぇ……もうちょっとなんとかなんねぇの? って時があるのよ。
技術的なことは専門書にでもお任せして省略するにしても、まず前提として『レーザー』と『ビーム』の違いを説明する必要がある。
○ ○ ○ ○ ○ ○
■レーザーもビームの一種■
言ってしまえば太陽光も月光もビームだ。
LightやRayを使うことが多いのでピンと来ないだろうが、自動車のヘッドライトをハイビーム・ロービームなんて言い方をする方は理解していただけるだろう。
しかも
一般的にはどちらも『レーザー』の一言で済ませてしまうが、現象なのでそれを行う機器を『レーザー発振器』、照射されるのは『レーザー光線』と呼ぶのが正確となる。
そう。光線。
つまりレーザーもビームなのだ。
科学用語としてのビームは、光に限らずなにがしかのエネルギーを収束して放つ方法の総称で、大きなカテゴリーを示す。
その中に、光(厳密には電磁波)を収束するレーザービームという小カテゴリーが存在しているのだ。
なのでビームは他にもある。電子レンジが食品を温める仕組みであるマイクロ波をビーム化すると『メーザー』、超音波をビーム化すると『フォノン・メーザー』と呼ばれる。
科学に詳しくない大抵の人は、『レーザー』と『ビーム』をふわっとした認識で完全なる別モノと思っているか、よくわからんけど同じものと思っているかのどちらかなので、この同じようで違う関係性を理解していただきたい。でないとこの先の話が進ませられない。
○ ○ ○ ○ ○ ○
■ビーム兵器=荷電粒子砲■
そして前提第二段。まだ本題ではない。
小説・マンガ・映画といったフィクション限定の話をすると、『ビーム』という言葉はほとんどの場合、攻撃手段として登場する。未来科学によるビーム兵器か、あるいは魔法のような不可思議な手段によるかは作品それぞれだが、光の束を発射して大爆発するアレを思い浮かべる。
あ。『謎ビーム』とか『剣ビーム』とかは除くよ?
で。このビームだが。
特にSFの場合では、総称としてのビームの中に存在する小カテゴリー、『粒子ビーム』のことを示している場合がほとんどと思われる。
レーザーをビームと称している可能性もゼロではないが……『レーザー』という言葉は現代一般人の日常生活内でも使う可能性あるが、『ビーム』はSFアニメ好きでなければまずありえないので、無視してよかろう。
粒子といっても砂粒ではない。原子やより小さい素粒子を光速未満、光速の何パーセントという超高速で発射するのが粒子ビームだ。
これそのものは身近……とまでは言えないが、まぁ珍しくはない。今や絶滅状態のブラウン管テレビは電子ビームを利用していたし、真空溶接にも使われている。炭素イオンの粒子ビームはガン治療に利用している。
そして、これは出力、粒子の種類、密度にもよるので一概には言えないが。
粒子ビーム兵器とは、名前が違っても設定上は荷電粒子砲だ。
フィクションの中で、『ビーム』と呼ぶ時は通常攻撃、『荷電粒子砲』と呼んだ時には必殺攻撃、みたいなイメージが漠然とある気するのだが、実は同じだったりする。
○ ○ ○ ○ ○ ○
■『○○レーザー』『○○ビーム』なを変に思っちまう原因■
そして前提第三弾。まだ本題に入れない。
一般的に言われるビームは大きなカテゴリーで、その中に『レーザービーム』と『粒子ビーム』という小さいカテゴリ―が存在すると上記した。
つまり、『なんたらレーザー』『なんたら粒子)ビーム』が複数種類存在していて、全てひっくるめて『レーザービーム』『粒子ビーム』と呼ばれているのだ。
まず粒子ビーム。こちらはわかりやすい。
発射する粒子の種類によって名前が変わる。
電子
水素の原子核から
『新世紀エヴァンゲリオン』で出てきたポジトロンライフルは、電子の反粒子・
『機動戦士ガンダム』に出てくるビームライフルは、名前が省略されているが、架空の素粒子『ミノフスキー粒子』のビームを放つ。メガ粒子砲の設定はちょっと微妙なんだが……
名前は『○○ビーム』ではないが、『ウルトラマン』のスペシウム光線は、架空物質・スペシウム原子のイオンビームと考えることができる。ふわっとした設定だからレーザー説も否定できないのだけど……
そしてレーザー。こちらは大きく二系統の分類がある。専門的にはもっと分類法があるが、大雑把だとこの2種類になると思う。
まず媒質の違い。
レーザー発振にルビー結晶を利用しているならルビーレーザー。
希土類イットリウムとアルミニウムが混合したガーネット結晶ならYAGレーザー。
発振筒内に有機色素が溶けた液体が満たされていたら色素レーザー。
二酸化炭素が満ちていたらCO2レーザー。
アルゴンやフッ素などの混合ガスならエキシマレーザー。
こんな感じで種類があるので、用途も異なる。
次に波長による分類。
光には波長がある。プリズムを通して見ればこんな風に分類される。だから虹は七色に見えるんだ……みたいなことを学生時代、理科の授業で習っただろう。
それと同じで、赤外線レーザー・紫外線レーザー・X線レーザーなどと分類する。
○ ○ ○ ○ ○ ○
■どんな風に変なのか?■
さて。ようやく本題に入れる。
現実のレーザーとビームは前述のような命名法なのだが、フィクション作品の『〇〇レーザー』『〇〇ビーム』は、独自色を出そうとこの分類から外れることが珍しくない。
『冷凍ビーム』は効果から名づけられてるのはわかるし、原理的には不可能ではない(あくまで原理だけ。実用できるとは言っていない)ので、そこまでヘンに思わないんだが。
『バスタービーム』とか『コロニーレーザー』は、発射システムを搭載する側の名前で、そういう命名法もアリと思う。
『ホーミングレーザー』? あぁ、あれは光ってるからレーザーってついてるだけで、実際はミサイルの
この辺りは現実とは命名法が違っても、納得できる理由があるのだが……理工系の人間にはたまにヘンに感じる時がある。いくら架空の物語だといっても限度ある。
大御所にケンカ売ると……
スーパーロボットの金字塔、永井豪先生原作『マジンガーZ』。自分もさすがにリアルタイム世代ではないけど、スーパーロボット大戦でおなじみだろうし、最近でも新作アニメが作られたりしてるので、若い人も理解できるであろう。
これで出てくる『光子力ビーム』。
『光子力とはなにか?』という部分にいささか議論の余地があるが、普通に考えたらこのネーミング、レーザー光線なんだよ。粒子ビームではない。
初出はファイナルファンタジーⅥ、あとは関連作品でちょぼちょぼ出てくるくらいかな?
『魔導レーザー』
……魔導による技術で放つレーザー光線、といった意味合いのネーミングだと思うが、空想科学技術=魔導の扱いだから違和感がある。『科学レーザー』とか『魔法レーザー』なんて言い方どう?
あとは……特定の作品を貶める意図はないけどそうなってしまう、なにで見たのか覚えていないネーミングだと……
『サンダービーム』『エレクトロレーザー』。
電流は
ならばレーザーはおかしいというのは想像つくだろう。電子ビームじゃないんかい。
直進する雷をイメージしての命名なら、プラズマチャネルという別の現象なんだが。
『プラズマビーム』。
不特定多数の作品で使われているだろうけど、これはマジでわからん。
映像で登場する際、なぜか見た目が光弾で、
高温プラズマを弾丸として発射すると軌跡がビームに見えるみたいなネーミングなら、まだ納得するんだが。
そもそも攻撃手段で『プラズマ』と名前がつく場合、見た目電撃なパターンもあるせいでの違和感もある。
どうせならバラエーナプラズマ収束ビーム砲くらい、ちゃんとビームしてほしい。
自分が一番ナシと思ったのは『核融合レーザー』。
『レーザー核融合』なら存在するのだが、核融合反応を発生させる方法なので、攻撃手段ではない。
なので核融合発電で得たエネルギーでレーザー光線を照射する、という意味でのネーミングであろうから、ちょっと……
別の発電方法なら『風力レーザー』『水力レーザー』『石炭火力レーザー』に変わるの?
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