子供が欲しい時にレスなんて……その悩み、アンドロイドにお任せを

睡蓮

♠アンドロイドがやってきた

「お届け物です」


 日曜日の午後、運送業者が置いていったのはとても大きな段ボール箱だ。

 受取人は俺、発送者は『愛❤アンドロイド研究所』となっている。

 そんなもの注文した覚えは無いのだが。


 妻が注文したのだろうか。確認する前に箱を開ける訳には行かないと思い、買い物に行った彼女の帰りを待っていた。

 ボケッとしているのもどうかと思い、先程の会社を調べてみた。その名のとおりアンドロイドを製造販売しているようで、その用途はモロにセクソロイド、つまりセックス用のものだった。




 妻の梨奈ななとは五年前に結婚した。

 同い年で大学生時代に付き合い始め、卒業を待って同棲し、半年後に入籍した。

 学生時代からカラダの関係は良好で、結婚しても二年間はほぼ毎日肌を重ねていたのだが、徐々に頻度が落ちて最近は月に一度がやっとという感じになっている。


 まだ二十代だから女性にも興味はあるし、行為そのものもする気はある。ただ一度疎遠になるとなかなか元の関係になるのは難しいと思っている。自分一人で悩むのではなく正直に妻に言えれば良いことはわかっていても、いざ口を開くにはもの凄く勇気も要るし気恥ずかしい。


 同世代の仲間たち、特に独身連中からはカミさんとから羨ましいと言われることがあるが、今の状態を正直に伝えるのも悔しい感じがして適当に笑って誤魔化すことをしていた。

 この苦しさはお前達にはわからないだろうと脳内で毒づきながビールジョッキを飲み干すことも一度や二度ではなかった。




「ただいま、何これ、貴男が頼んだものなの」

「俺は知らないぞ」

「そう…あ、もしかしたら」


 カミさんがスマホを持って連絡した相手は、義母のようだ。


「何でそんなことしたのよ」

「だって、この間話した時に梨奈が随分悩んでいるみたいだったから。それに…」

「どうしたって言うの」

「私達もアンドロイドちゃんに救われたのよ。だからあなたたち夫婦もきっとそうなると思って」


 セクソロイドに救われる?

 どういうことだかさっぱりわからないのだが、スピーカーからは間違いなくそう聞こえてきた。


「あの話、旦那にはナイショにしてたのに……あんなに大きな荷物は邪魔よ」

「わかってるわよ。あれは一ヶ月だけレンタルした物なの。その辺りのことは箱の中に書類が入っているはずよ。騙されたと思って使ってみて」

「もう、余計なことするんだから」

「良かったかどうかは後でわかるから。あ、使う時は必ず『快感学習モード』にしてね」

「何なのそれ」

「ふふ、それはお楽しみよ」


 そんな会話で電話は終わった。

 俺にナイショって……ひょっとしてレスのことか。梨奈も悩んでいたのか……

 何が何だか良くわからないことだらけだが、荷物を始末しないといけない。箱を開けて説明書を読んで、それから置き場を考えないと。


「キャッ」

「ウヒョォ」


 頑丈な三層の段ボールで作られた箱から姿を現したのは全裸の女性だった。

 仰向けに寝る彼女は見た目は二十歳そこそこだろうか。恐ろしく整った容姿をしていて、顔だけでなくプロポーションもグラビアアイドルかそれ以上のものだ。


 取扱説明書を早速読んでみると、動作にはいくつかモードがある。

 義母お勧めの快感学習モードは夫婦の倦怠期解消に有効だとも書いてある。これにより新しい性感帯を開発でき、マンネリの解消につながるという。


 どこまで本当かはわからないが、これでレス解消になれば万々歳だ。

 上級者モードやマニアモードなどと言うものもあるが、今回は使わない。とはいえ気になる……

 そう思いながらリモコンを操作し、彼女を起動させた。

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