私とお友達になってください
私は彼女の目をじっと見つめる。
彼女を最初に見た時から違和感はあった。
ただ髪型や服装を考えるのが面倒くさくてボブカット&黒い服固定にしている私とは違う。
体型は近いが、顔立ちはちょっと大人びていてもっと色んな色の服が似合いそうだ。
彼女はきっと私に容姿を似せて、今の恰好をしているに違いない。
「え? 西園寺さんってTJフォロワーなの? ってことはTJと仲良くなるためにわたしに近づいてきたんだ。なんだー、早く言ってくれればすぐ紹介したのに」
「うるせー。話をややこしくすんな。お前はだまってろ」
私に睨みつけられて、トンチンカンな推理をかましたマッキーは驚愕で目を見開く。
「西園寺さん、私の言ってること間違ってたらごめんなさい。でもね、たぶんマッキーが芸能人だから仲良くしておきたいって思ったわけじゃないと思うんだ」
「……うん」
「マッキーだって、別に私が黒髪ボブでいっつも黒い服だから仲良くなろうって思ったわけじゃないのと一緒だよ。そんなところ真似したって仲良くなんてなれないんだよ。あと胡散臭い神様なんて頼る必要もない」
「じゃあ……私はどうしたら?」
「私ははっきり言って、あなたよりも人間のことはわからないと思う。サークルに入る勇気もなかった。でもね、思ってることを普通に口に出して言ってみたらいいんじゃないの? それを拒絶されたら……相手がきっと悪いか、相性が悪かったって諦めもつくんじゃない?」
マッキーが隣で「いいこと言うわー、流石TJ」とか言ってるが、たぶん何もわかってない。というか、こういう伝わらないやつには直接言うしかないのだ。
マッキーだって直接言えなくて回りくどい怪盗Vなんてものになっていたのに、どうして逆の立場になった瞬間なにもわからなくなるのか。
変な奴過ぎる。
「そう……だよね。見た目だけ真似したってダメだよね」
「幾ら真似しようと思っても私は美少女過ぎるんでね」
「TJ、正気か?」ツッコミが入るが別にボケて言ったわけではない。
「私はいつでも正気だが?」
「そういうことにしておいてあげて」マッキーが肩を竦めながら言う。
「う、うん」
そして西園寺さんは震える手で少しだけ水を飲むと、胃のあたりを抑えながら言った。
「あ、あの……牧村さん、東城さん……私とお友達になってください」
「いいよ」
「あ、私も? もちろんもちろん」
友達とか別にいらんなって思って大学生活を送ってきたが、もう最近は友だちの投げ売り、バーゲンセール状態だ。
別に一人二人友達増えたところで変わらない。
「私と友達になりたくて、TJみたいな恰好して、告白列に並んでキョドって神様がどうとか口走ってたの? リンちゃん」
「あだ名で呼び始めんのはえーよ。あとなんで私はTJとか変なあだ名なのに、西園寺さんは普通に可愛い呼び方なんだよ」
私はこの馴れ馴れしさの権化みたいな奴にかなり引きながら、肩をひっぱたく。
「だって、西園寺だとSJじゃん。エスって言いにくいんだもん。だったらリンちゃんでいいじゃん」
「いいけどさ」
「あとリンちゃんさ」
「えっと、なに?」
あまりのスピード決着に茫然とするリンちゃんにマッキーが言う。
「TJの上位互換みたいな恰好はね、やっぱり似合ってないと思うよ」
「私もそう思ってた」
リンちゃんはそう言って笑ったが、私にも言いたいことがあった。
「おいおいおい、私の真似なんだから下位互換、ジェネリックでしょうがよ。何言ってんだよ」
「いや、TJはなんかGUとかじゃん。リンちゃん良い服着てるよ」
「わかってるよ! なんかちょっと私の方がみすぼらしいのは」
「じゃあ、今度三人で服買いに行こう。いいよね?」
「うん」って言ったのはリンちゃんで、私はいいとも悪いとも言ってないが、まぁたぶん行くことになるんだと思う。
「でも、その前に……神様とやらのバケのガワを剥いでからね」
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