解決編 探偵 vs V殺しの呪術師(中編)
私は現実の方でしっかりと座椅子に深く座り直すと視聴者にもわかりやすいように整理しながら、話し始める。
途中で私がどこまで真相に辿り着いているのかじゅじゅが自身で察して、自ら傷を広げないようにV殺しのことを認めるならいいが……最後の最後まで彼女が折り合いをつけられないなら、きっとあまり愉快ではない結末を迎えてしまうだろう。
「まず最初に呪井じゅじゅさん、あなたとコラボをした相手が次々に不審な引退をしてしまうという噂がまことしやかに囁かれています。じゅじゅさんとのコラボの直後に引退したVtuberはこれまでに10人います。見覚えはありますよね」
私は仮想ウィンドウに彼女たちの姿を投影する。
平和ナオ
梶野エース
玉田らっこ
デスサイズ
火縄カンナ
玉田キュウ
ルー
金剛ダイヤ
きめら
小林らら
「えぇ、一度コラボをした程度ですが、お名前は見ればわかります。この方たちをわたしが呪ったとおっしゃるんですか?」
「いえ、私は彼女たちがあなたの呪いで引退に"追い込まれた"とは考えていません。でも、引退の直截的な原因はあなただという確信があります」
「わたしが何かをしたと?」
「そうです。……続けます。まず私は彼女たちの活動期間への違和感を感じました」
「活動期間?」
どうやらじゅじゅはその不自然さに自覚がなかったらしい。
彼女たちの活動期間には明らかにおかしな点がある。
「わかりませんか? 彼女たちの活動期間はまったく被っていないんです。一人が引退して、次がデビューする、また引退の後デビューとまるでバトンを引き継ぐようにしてデビューと引退を繰り返しています」
私は彼女たちの顔と名前を活動期間順に並べ替えて提示する。
[たしかに]
[だから何だっていうんだ]
[まぁ大人しく聞いてようぜ]
[〈¥101010〉]
「…………たまたまではないですか?」
「たまたまではないと考えています。次に彼女たちの風貌です」
「どの方も個性的な見た目ですね」
じゅじゅの声に明らかに動揺が混ざる。
「えぇ、個性的です。無理やりキャラ分けをしたような、ね」
「何をおっしゃりたいんですか?」
「残っている画像を元にした解析なのでこの10人全員とは断言できませんが、この10人のママ……イラストレーターは同一人物です」
[言われてみるとそう見えなくもないな]
[全然違うじゃん]
「私一人は最初2、3人の目の雰囲気が似ていると思っただけでした。ただ、その違和感を見てみぬフリをすることはできず、私のママ……姫咲カノン先生に送って見ていただいたのです。その返事はおそらく同一人物の手によるデザインだと思うということでした。目の描き方だけでなく細部でクセが出ているそうです。さらに絵画の鑑定AIも使用した結果、同一人物の手によるデザインだと判明しました。正確にはAIの検証結果は7人は99.9%同一人物、2人が90%、1人は60%というものです」
じゅじゅは何かを誤魔化すようにテーブルの上の紅茶を手に取る。
データの塊でしかない紅茶では喉の渇きを癒すことなどできないのに。
「なるほど。わたしは全く気付きませんでしたが……」
「いえ、あなたは知っていたはずです」
私はじっと彼女を見つめる。
彼女は何も言わない。
「あなた……呪井じゅじゅもまた同じイラストレーターのデザインだからですよ」
「まぁ、似ているなとは思いますけど、それが何か関係があるんですか?」
[じゅじゅは自分と同じママのVを狙ってたんじゃないか?]
[嫉妬か?]
[じゅじゅが一番デザイン凝ってるし、あとの連中は弱小だろ?]
[ニコが適当な言ってるんじゃねーの?]
[全然一緒に見えないけどな]
「まだしらばっくれるんですね。ではこれ以上続けるともう後戻りできませんがいいんですね?」
「構いません」
じゅじゅはやはり……覚悟を決めてきている。
「引退した10人の中の人はあなたです。引退した10人と呪井じゅじゅを足した11人はすべて、あなた一人によって運営されていたんですよ」
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