第4話 俺たちはゲームの才能があるのかも。
鈴葉がバトルシップから降り、着いたのは物資が美味しい町。
いつものように一パーティと被せたのかと思いきや、被りは無し。
いつもはガツガツ行く鈴葉も、今回ばかりは慎重なようだ。
物資を整え、アンチを見た結果今居る町と真反対が最終アンチになっているようだった。
フライトルで移動し、最終アンチになりそうな場所を取った。
ここで、同じポジションを狙っていたのかエリストスのスキャンが入った。
「格好のカモが来た」
「味方離れてるぞ、フォーカスするぞ!」
「おうよ、エリストス落とした!」
「ナイス、周り見てる。確だけ入れちゃって」
「おけ、まってこっち来てる!」
「分かった、竜巻起こすからグレ用意して!」
「いえす!」
一枚落とした事により状況的にはこちらが有利、展開していた味方に早い段階で鈴葉が気づいていたので俺のアビリティで竜巻を起こし、敵のフライトルを竜巻に巻き込んだ。
「おっけ、割れてる。やった!」
「ナイス、あと一人。あ、味方のスキャンで引っかかってる。カバー行くぞ!」
「お兄ちゃん頼んだ!私確殺入れて来る」
「おけ。あ、味方が倒したわ。そいつ多分セカンドシールド」
セカンドシールドとはダウンした状態でも、確殺さえ入れられなければ少し時間はかかるが蘇る事ができ、ランクマッチではかなり嫌われている物。
鈴葉がセカンドシルード持ちの敵に確殺を入れると部隊数が一部隊減った。
現在順位は10位、かなり良いとこまで来ている。
エクシャス帯、やってみて分かるがかなり部隊の減りが早い。
【減り早いな、ポイント消費ヤバいから上手い人がキルしまくってんだな】
【もう10部隊か、ダイアならまだ15部隊はいるぞw】
【てか、適応してるのヤバすぎだろ】
コメントを見ていて俺はなるほどと思った。
確かエクシャス帯の人は一マッチするのに60ポイントが取られる。
だから、大量に敵を倒してキルポイントを貰わないとあまりポイントが美味しくないのか。
こんな事を思っている間にも、もう一部隊減った。
倒した敵の物資を奪い、アンチを見る。
少し外れてしまったが、遠くは無かったので良い場所に移動するべくフライトルで移動した。
特に何事も無く、残り3部隊。
見た事のないアンチになり、ほぼ遮蔽物が無いような形になってしまった。
今はアンチ外の小さな岩場に居るが、気づかれているため動くに動けない状況。
フライトルでもう一度飛ぶのも良いが、フライトルが空中でダウンすると高確率でバグり銃を構える事が出来なくなってしまうので、それは避けたい。
鈴葉が持っているスナイパー『ワンショット』という武器。
この武器はヘッドショットだとどんな状況下でも相手を一撃でダウンさせることが出来る最強の武器。
これで一人でもダウンさせてくれれば良いのだが。
「くそっ、ミスった」
「落ち着け、我が妹よ」
「ああ、落ち着くさ。ほらよっ!」
銃弾は敵の胴体に命中したのか『敵のアーマーを割った!』というログが出た。
「まじかよ」
「惜しい」
「あと一発や、もう一部隊はどこにいるんや……」
人数の場所を見ても『?』と表示されていて数は不明。
これだけ撃ち合っているにも関わらず、戦闘に参加してこないとなるとハイドの可能性が高い。
ハイドとは戦わずに隠れて順位を上げたり、奇襲したりすることを指す。
回復も尽きかけ、弾も無い。
「これにかけるかぁ」
「頼むぞ頼むぞ」
「妹ちゃんスペシャルアタック!」
「何だそのダサいの……って抜いてるし」
「行くぞー!」
ワンショット最後の一発で鈴葉が敵を一枚ダウンさせた。
味方のエリストスもログを見てなのか、アビリティを使い一気に仕掛ける。
俺の使うフォンのアビリティとスキルを使い、空中に浮かび上がった後、敵の近くに竜巻を発生させてグレネードを投げ込んだ。
「おっけ、蘇生されたやつやったわ」
「ナイス、私も一枚ローにした」
味方のエリストスが鈴葉がローにした敵と残りの一人を倒し、あとはハイドだけになった。
エリストスがスキャンすると、一人だけ反応に引っかかった。
「うわ、こんな窪みにいたわ」
「お兄ちゃんやっちゃえー!」
「うい、ナイスー」
「良くやった。これでマスターか」
「何か、何も感じなーい」
「だな、アッサリだった」
【マスター言っても何も感じないのかよw】
【この兄妹、もしかして元プロだったり?】
【実力的に元プロはありえる】
【兄弟の元プロなんていたか?】
なんだか急に考察が始まってしまった。
俺と鈴葉はプロゲーマーになんて一度もなったことは無いんだが。
それこそ、幼い頃色んなゲーム機を触れてきた。
家でやるCS機器やゲーセンに置いてあるようなアーケードゲーム、それこそファミコンなどの古い機械でもたくさんゲームをした。
その時の経験が、今活きているのかもしれないな。
「さて、目標も達成したし、次は何に手を出そうか」
「私、HEROXもうちょいやり込んでも良いなー」
「俺もそれでも良い、我が妹の仰せのままに」
「ほほう、良い心構えだ。では、HEROXを続行しようではないか」
「はっ、招致いたしました」
【寸劇が始まったぞw】
【兄、妹の尻に敷かれてるの草なんだが】
【なんか、これもこれでてぇてぇな】
いつの間にか11時を回っていた。
明日も学校だし、鈴葉は部活もしている。
流石に今日はここで終わりだな。
「11時か」
「そうだね、今日はマスター行ったしこの辺で終わるかー」
「だな、視聴者の皆さんここまで見てくれてありがとう」
「是非、私とお兄ちゃんのチャンネル登録をよろしく!」
「では」
「「お疲れさまでした!」」
二人で閉めの挨拶をして配信を切った。
大体配信が終わった後は30分ほど話してから寝るが、鈴葉は疲れていたのか「お兄ちゃん、今日は寝るねー」と言い鈴葉はサーバーから抜けた。
俺も明日の時間割を確認して準備をした後、部屋の電気を消してすぐ寝てしまった。
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首が痛い、軽く寝違えたようだ。
時刻は6時、俺は体を伸ばした後キッチンに向かった。
スマホで昨日の配信の反応を確認してみる。
【兄妹チャンネル、マスター達成の瞬間!】という題名で配信が切り抜かれていた。
うちのチャンネルは基本切り抜きを許可している。
過度なタイトル詐欺や明らかな視聴回数稼ぎのタイトルにした場合は、動画を削除させてもらっているが、基本それを守ってくれれば良い事にしている。
再生回数を確認してみると10万という数が表示されていた。
10万という数に驚きながらその動画のコメント欄を見てみると
【こいつら、バケモンやろ】
【確かこの人たち、FPS歴一カ月でこれだからね】
【キーマウでこのAIMは本当にヤバい】
など賞賛の嵐だった。
俺は高揚感で満たされ、なんだが気分が良い。
今日の朝食はサラダと目玉焼きの予定だったが、ベーコンも焼くことにして、弁当のおかずもすこしだけ増やしといてあげよう。
少し時間は経ち、時刻は7時。
未だに鈴葉は起きてこない。
あいつ学校では「品行方正、容姿端麗です」みたいな感じだけど、実際は全然違う。
俺はため息を吐いた後、重い腰を上げて鈴葉の部屋に向かった。
ノックをしてみるが反応は無い。
部屋に入って確認してみると鈴葉はまだ寝ていた。
横でスマホのアラームが鳴っているのにも関わらず、鈴葉は起きない。
「おい、起きろ。もう7時だぞ」
「もうちょっと……」
「ダメだ、遅刻する」
「お願いだよぉ……」
「甘えてもダメ」
部屋着がヨレヨレになっていてお腹の辺りがめくれていて、その隙間から細くしまったお腹が顔を見せていた。
そんな物にもは何も感じず、俺は鈴葉の肩を掴み体を起こさせた。
「おい、起きろ。飯も出来てる」
「んむぅ……」
「もういい、これからは鈴葉と喋らん」
「はわっ!うそうそ、起きる起きる!」
「よくできました」
魔法の呪文で鈴葉を起こし、俺はリビングに行き食卓に鈴葉の食事と弁当を置いた。
俺はもうすでに食事を済ませており、鈴葉の朝ご飯を置いたら家を出る。
「おい、飯と弁当置いといたからな」
「うん、いつもありがとうね」
「気にするな、じゃあ俺はもう行くから」
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
「鈴葉も気を付けて来いよ。行ってきます」
俺は義妹に見送られた後、自転車を倉庫から出して学校に向かった。
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