第3話 解除作業2
「はぁ!?」
八つ!?冗談じゃねぇぞ!どんな天才でも二つが限界って言われてんだぞ!?
いや、待て落ち着け俺。叫んでるだけじゃあ何も始まらん。とりあえず一つずつ見ていこう。
――――――――――――
さて、何十分も掛けて全部の魔法陣を解読はした。ちなみにだが、まだまだ時間がかかりそうなので、母さんには夕飯の準備に戻ってもらった。
結論から言うと、強度の設定が無かった。まじで泣きたい。なんで無いんだよ!おかしいだろこの封印!
残りの七枚に何が書いてあったのかというと、二つのことを七枚にかけて書いていたのだ。大規模すぎるがそれ相応の効果が記されていた。
一つは対象の記憶抹消。
最初から意味が分からん。そんなことが出来るはずが無い。だが、これが本当なら結晶の中にいる少女は記憶喪失になっているということだ。
これを幸と言うべきか不幸と言うべきかは分からない。記憶が無いから、封印を解いた瞬間に襲ってくるとかはないはず。だが、何故封印されたのか。そして、ここが何なのかは封印された本人はもう覚えていないから分からずじまいだ。
とにかく、この魔法陣の効果が発動できいるなら、この少女は記憶喪失になっている。
二つ目は継続時間
これも普通なら入れないはずなんだが。継続時間は込めた魔力で決まる。しかし、恐らく人間が体内にある魔力を全て使ったとしてもせいぜい一日持つかどうかだろう。中には二日もつ人もいるかもしれないが、誰がどう頑張ってもそれで打ち止めだろう。
なら、長期間封印しておくにはどうしたら良いのか。それは魔法陣に魔力を後からでも込められるように記述しておくことだ。そうすれば、魔力を込め続ける限りほぼ永遠に封印しておくことが出来る。
さらに、魔法陣に書くならこっちの方が100倍楽だ。継続時間の指定なんてのを書くのに何日かかるのか、いや、もしかしたら一年ぐらいかかるかもしれない。確かに、継続時間を指定する魔法陣は、魔力要らずで指定された年数残るが、如何せん書くのが難しい。
で、指定されていた継続時間は一億と二千年。馬鹿じゃないのか?人間の寿命は七十年前後だぞ?そんな時間経ったら塵も残らないわ。
はぁ……これをやった人は馬鹿なのか天才なのか分からないな。まぁ解く目処はたったから良いか。
多分、この継続時間を0にすれば封印は解けるはず。と、思っていたところによく聞く声が俺の名前を呼んだ。
「カイル」
あれ?もう帰ってきたのか。上から声をかけてきた父さんは、びくびくしながら梯子を下りてきた。
「早かったな、父さん」
「ああ。それでその結晶が母さんが言ってたやつか?」
「そうだよ」
八つの魔法陣を浮かべた結晶を見て、ほぉー、すごいなーとか言ってた父さんの顔が急に曇った。
「なぁ、カイル」
「ん?」
「これ、解いて大丈夫なのか?」
「襲われることは無いよ。ほらここ」
「対象の……記憶抹消?どういうことだ?」
最初に見た時はそうなるよな。俺も訳が分からなかったし。
「そのまんまみたいだ。この少女の記憶を消すためのものだ」
「つまり、記憶喪失になってるから、自分が何者かも分からない。だから急に襲われることも無いだろうと」
「そんな感じだ。それに、母さんが解けって言ったし」
「ああ、なら解くしかないな」
父さんはそう言って苦笑気味に笑った。
そういえば、一つ気になってたことがあったんだ。
「なぁ父さん。この家って何年ぐらい前からあるんだ?」
「少なくとも100年以上前だな」
そんな前なのか。父さんが分からないくらいとなると、床が抜けたのも頷けるか?
「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「いや、だってここの床が抜けるとか普通、ありえないだろ?」
「まあな。だが、真下にこんな空洞があるんだからありえなくはないだろ。それにほら、あそこを見てみろ」
父さんが指さしたのは地下の部屋の方の天井。うん?何があるんだ。
そっちの方を見ると、天井に所々ヒビが入っていた。経年の劣化でこんなことになったのか?あれ、岩っぽいんだが。ほんとに何年前からあったんだよ。
ん?じゃあこの封印は何時からあったんだ?
いや、確か物体をどこかに送る、空間魔法なるものがあるって聞いたことあるな。魔法陣を八つ重ねられるような奴だし、それぐらいはできそうだな。
「あれ、今崩れてきたりしないよな」
「分からん。魔法で補強しておくか」
うん、まあその方が良いだろうな。あれが崩れてきたりしたら、間違いなく俺たちは死ぬし、この地下にある本も全部ダメになりそうだ。
そのあたりは、父さんが初級魔法を使って直してくれた。やっぱ初級魔法って便利だよな。戦いとなると全く使えないが。
「そんじゃ、こっちも解くか」
「なぁ、父さんは本も気になるんだが」
父さんは、息子が頑張って珍しい魔法陣を解いてる姿を見るよりも、知らない本の方が大事らしい。
「本は変な記号ばっかで読めなかったぞ」
「ふむ……解読でも頼むか」
「なんか価値ありそうだし、高く売れるんじゃねえか?」
「馬鹿野郎。そんな美味い話がある訳ないだろ」
それもそうか。そもそも歴史的に重要なことなんて魔王関係しかない。人類の敵である魔王関係の情報は王族や研究者なら網羅してそうだな。あーあ、大金持ちになれるかと期待したんだけどな。
まあいいや。さっさと封印を解いちまおう。
俺は再び、意識を魔法陣へと向けた。
あー、これがこうなってて、ここがこれか。それで、一の位がここか。これを0にして……そういえば一番上は何桁だ?えーと、一、十、百、千、万、十万、百万、千万、一億。……げっ、九桁もあんのかよ。面倒くさいな。
って、あ!これ、違う奴じゃねえか?どれどれ……転移?それと掘削?つまり、転移した場所を掘るってことか?
……この地下作ったのこれじゃねえか!
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