召喚師リリカと八英雄たち~チート異世界転移者達と契約して世界を救います~
@kawagoeasahi
第1話 旅のはじまり
ここはよくある普通の剣と魔法のファンタジー世界。
王城の謁見の間。召喚師リリカは王の命を受けてこの場へと立っている。
「召喚師リリカよ、よく聞け。先日女神教教皇が神託を授かった。」
王は威厳のある声で少女へ話しかける。
「はっ。その内容をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか……?」
リリカは尋ねる。うむ。と王は返す。
「女神が別世界から特異な能力を持った者を8名、この世界へと送った。」
リリカは息を呑む。王は続ける。
「……その者たちがどこに飛ばされたのかまではわからぬ。目下捜索中である。」
「……特異な能力の内容とはなんなのでしょうか。」
「わからぬ。少なくとも戦う事が出来る能力か、戦士であろうな。野垂れ死ぬようなことは無いとは思うが……」
思案している王の目線は遠くを見ている。
少しの沈黙。
王の視線がリリカへと向いた。
「召喚師リリカよ。お前に頼みたい事がある。」
「何なりとお申し付け下さいませ。王様。」
「異世界からやってきた8名、彼らと契約を結び、呼び出せるようにせよ。」
「はっ。」
短い返答。うむ。と王は表情を崩さず返す。
「彼らの行方は王国の方でも捜索する。召喚師リリカよ。お前にも捜索に参加してもらいたい。」
優秀な召喚師ならば馬を飛ばすよりも早く移動出来よう。と王は言う。
「仰せのままに。我が力の限りを尽くします。」
「全員と契約が結べたら、魔王城へと突入し、彼らの力で魔王を封印する。」
まぁ、これは実際に全員と契約した後に細かく詰めることにしよう。大雑把に把握しておけ。と王は続けた。
「旅費等は当然王国持ちである。支度金の額を言え。用意させる。」
「承知しました。後ほどお話させて頂きます。」
「うむ。要件は以上だ。出来るだけ早く出立して貰いたい。頼んだぞ。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とんでもない事になってしまったなぁ。と私――――リリカは心の中でぼやく。
もっともっと年を取ってから受けるような仕事だ。
一子相伝の召喚師なんて家系に生まれてくるとこんなことが起きるんだ。
14歳にして世界の命運掛かってる感じ?
ヤバいなぁ~~~~~~~本当にヤバい。旅の道中私が魔王軍に襲われて死んだらヤバい。
まぁ大体は勝てるんですが。天才なので……
いや、私が死んだら召喚使わずに直接連れて行くのかな?
1000Gくらい貰っておけばなんとでもなるかな。足りなきゃその都度要求していこう。
そんなことを考えていたら自宅へと着いた。
両親に旅に出ることを伝えて、支度を始める。
魔力が回復する霊薬、即時体力が回復するポーション、後は野宿用装備を適当にリュックへと詰め込み、準備完了。
愛用の杖を手に持ち、王城に寄り支度金を貰う。
さて、どう探したものかな……とりあえず冒険者ギルドに行って近辺で何か起きてないか聞いてみようかな。
私は冒険者ギルドへ向かうことにした。いつもと変わらない王都を早足で歩いて行く。
20分後、冒険者ギルドへ到着。ドアを開けて入る。
店内はそこそこの賑わいだった。仕事帰りで飲んでいる冒険者たちに話を聞いてみよう。
「ん?いや特にいつもと変わらなかったよ。魔王軍に近いところに住んでいる人達が王都に住みたいって言ってるくらいかなぁ。俺らに言われてもなぁ……」
「いつも通りだよ。オークにちょっと手こずったくらいかなぁ。あいつらも強くなるんかねぇ。」
「特にねぇなぁ。俺はカリンス村に行ったんだけど、仕事無くてな。」
んん?
違和感を覚えた。
カリンス村は近郊の村だ。スライムやゴブリンが周辺に居る村で、村人だけでも対処できなくは無いが、今までは冒険者ギルドの力を借りて安全に暮らしている。
「すいません。その話詳しく聞かせて貰っていいですか?」
「ん?いいけどどうせなら一杯奢ってくれよ?」
私はウエイトレスを呼び止めて葡萄酒を頼む。冒険者に向き直ると上機嫌な顔で話しかけてくる。
「悪いねぇ嬢ちゃん!ありがたく飲ませてもらうよ!」
私は微笑んで軽く頷く。
うーん国のお金で奢るのはなんとも気分がいい。冒険者は口を開いた。
「今日の事なんだけどよ、まぁカリンス村の仕事と言えば弱え相手だけど報酬もしょっぱい。けど行きゃあほぼ仕事があるんだよな。」
知っている。カリンス村といえば王都にも近く、出てくる魔物も弱いため駆け出し冒険者や日銭をとりあえず稼ぎたい冒険者が向かう村だ。
冒険者はそこまで言うと、表情を不思議そうな顔へと変える。
「けど今日は仕事が無かったんだよ。まぁそんな日もあらぁなって思って適当に挨拶してきたんだが……。」
ウエイトレスが来て葡萄酒がテーブルに置かれる。冒険者はスッと取りグビリと飲み。こちらへと向き直る。
「……なんか反応が微妙だったんだよな。もしかしたらもう冒険者ギルドにお願いすることは無い。みたいな事を遠回しに言われてよ。」
「ふむ……。」
私と冒険者は沈黙し、思案する。どうも理屈が合わない
専属の用心棒を雇った?いや用心棒なんて泊めてずっと居てもらう程の財力は無いハズだ。
それにゴブリン退治やスライム退治は新人がやる仕事だ。続けたところでキャリアアップも望めない。
「新しい住人がやってきて、その人が魔物退治が出来るとか……」
「んー?いや。多分ねえな。家は増えて無かったしな。」
「ふーむ……。」
再び沈黙。少し考えたがちょっと思い付かない。私はため息をついて肩を落とす。
それを見て冒険者もギブアップしたようで。葡萄酒を飲み干した。
「気になるんなら行ってみたらどうだ?なんか分かるかもしれねぇぞ?」
まぁ大したことじゃ無いんだろうがな。と男は言うと席を立った。
私にはなんのアテも無いし、捜索班からの情報待ちついでにカリンス村へと行って調査してみよう。
私も自分の飲み物と葡萄酒代を支払って冒険者ギルドを出た。
王都を出て、カリンス村へと続く道。
歩きで3時間程掛かる。日は傾いてきており16時くらいだ。
ただ私は飛べる。召喚師だから。
シルフが一番コスパが良いのでシルフを呼ぶことにする。
「風の精シルフよ!我が召喚に応えよ!」
こつんと杖で地面を突く。魔法陣が目の前に展開され、シルフが召喚される。
「―――――――――」
「来てくれてありがとうねシルフ。ちょっと村まで飛びたいから力を貸してね。」
こくりとシルフは頷いた。私の周囲に風が集まりだす。
地面を蹴り跳躍する。私は宙へと舞い上がる。
そのまま方向を定めて、馬よりも速く飛んでゆく。
飛行すること30分、当然道中でモンスターと戦う事無く到着した。
着地してシルフを還す。見ていた人が居たのか村人が寄ってくる。
「随分と凄いモノを見させて頂きました。この村に何か用ですかな?」
「ちょっと伺いたい事がありまして……村長さんの家はどちらでしょうか?」
あちらです。と一回り大きな家を指差した。
ありがとうございます。と頭を下げ、村長宅へと向かう。
村長宅のドアをノックする。中からどうぞという声が聞こえた。
中へと入る。夕焼けの光が窓から差し込んでいる。
「おや、先程空から来た方ですかな?どのようなご要件で?」
「ええと……先程王都の冒険者と話していたのですが……」
私は疑問に思っていた事を尋ねた。
なぜ、もう冒険者ギルドに依頼することは無いだろうという趣旨の発言をしたのか。
村長は少し思案した。が、言い訳が思いつかなかったのかバツの悪そうな顔をして答えてくれた。
「……まぁいつかはバレることではありましたが、これほど早く発覚してしまうとは……」
「教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「……わかりました。ただここでは家族も居るので、今家を空けている者の家へと移動しましょう。そこでお話させて頂きます。」
村長の案内に連れられて、家へと入る。
席につき、ろうそく台を手繰り寄せると、村長は苦虫を潰したような表情で先程の質問に答える。
「ええ……端的に言ってしまうと、我々の村を守ってくれる道具……と言いますか。そういう物が手に入ったのですな。」
「道具……魔除けのようなものですか?高価ですし家は守れても畑は守れないのでは……」
どうも要領を得ない回答だ。ぼかした言い方をしているということは言いたく無いのだろう。私は続けた。
「すいません。ぼかした言い方をされると困ります。別に村の不利益になるようなことはしませんし、道具を盗ろうなどとも考えていません。」
私は更に追求する。村長はなんとも困ったような表情をしている。
「ううむ……その……液体……ですな……。その液体を外に置いておくと勝手に寄ってきた魔物達を攻撃するんですな……」
村長はなんとも苦しそうな声で言う。
が、この情報に私は酷く驚いた!
自動で魔物を攻撃する液体。そんなものは魔法使い達の間では研究されていない。
水で攻撃する魔法はあれど術者無しでしかも自動で魔物だけを攻撃する液体。現行の研究の段階を大きくすっ飛ばしたオーパーツだ。
つまりこれは……
「村長、もしかしてそれは他の方から譲り受けた物ですか?」
「ええと……まぁ……そうですな……譲り受けたというか……魔法を掛けてもらったと言いますか……」
大当たりだ!十中八九、異世界からの転移者の仕業!!!
「その方は今どちらへいらっしゃいますか!?」
「タンシュの村の方へと歩いていかれました。2日前のことです。」
タンシュの村。ここから歩いて3日程の村。明日朝から道を見ながら飛べば十分追いつくだろう。
「ありがとうございます!」
重要な情報だ!幸運に恵まれている!
「なにやら問題が解決したようで何よりですな。」
村長はほっとしたような顔をしている。安堵したようだ。そのまま口を開く
「では、夜になりますし、そろそろ―――――」
「あ、すいません。その前にその液体を確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」
一応どんなものかだけは知っておきたい。オーパーツを前にした好奇心もあるが、転移者の能力を知っておきたい。
女神が遣わせた人なのだから話せば分かって貰えるとは思うが、もし拗れた場合戦闘もあり得る。力ずくの契約になる可能性も考慮しておきたい。
すると、村長はまた渋い顔へと戻ってしまった。
「…………」
本当に嫌なのだろう。だが私も使命を受けてやっている仕事なのだ。
「村長、本当に申し訳ないのですがきちんと全て話して下さい。私は王直々の命令でこういう調査をやっております。」
王の名前を出すのはあまりやりたくない手だが、もう話させるにはこれくらいしか切れる札がない。
切り札を切られた村長は、青くなって唸る。しばし苦悩した後に、観念したのか、話し始める。
「…………その……あの液体は……」
次の言葉に、私の脳は理解を拒み、頭をクラクラとさせた。
「私の孫……11歳の男の子の母乳です……」
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