第11話
結城さんは姪御さんだった。
私は全く見当違いの誤解をしていたようだ。結城さんとの関係に自覚無く無意識に嫉妬していた。
そして訳もわからず先生を避け、勝手に悩んで勝手に弱り、最後には夕子に自宅へ強制連行される。
完全に一人相撲をしていた。
だが今はくよくよしてる場合じゃない。改めてはじめさんの言葉を反芻する。
はじめさんは教師として逸脱していると分かっていながらの私の心配をし、家まで来てくれた。
つまり少なからずまだ希望を持ってもいいと言うことだとポジティブに考える。絶望からのチャンスだ。
逃す訳には行かない。
私は今の好機を逃さない為にはじめさんを口説く事にする。
「
それでですが、、はじめさんには恋人は居ない。という事実がわかりましたので、、、もう遠慮はいりませんよね?
先程も言いいましたがはじめさんが好きです。いえそんな言葉では収まり切らない。誰よりも愛してます。
はじめさんにとって『好ましい』
もう外聞なんて構っていられない。誰かに取られる前にこの愛しい人を自分モノにしたい。
この独占欲は抑えられる気がしない。
そう言う気持ちを全面に攻めることにした。逃げる隙なんてみせるものか。
「、、は?、えっ?っはぁーー!!?」
案の定はじめさんは驚いた様だ。
さっきまでは『好きだと言う気持ちだけは伝えたい』とだけ言っていたのに今は『付き合いたい』と真っ向から言っているからだ。
「無理ですか?やはり私とはお付き合いはできませんか?
『教師と生徒だから』とはじめさんが躊躇するのであれば私は喜んでこの学校を辞めますよ。はじめさんが手に入るなら今すぐにでも。でもそうなるとはじめさんは責任を感じてしまいますよね?
生徒の未来を自分の所為で変えてしまうと。
なら、そうならないようにこのままお付き合いしましょ?誠意は見せたいのでお互いの身内には話したいですが、学校内では隠し通します。
もし学校内で露見した場合、はじめさんの意思を無視し、私が全ての責任を取りますよ。まあ全力で露見しないよう努めますが。
で如何ですか?」
はじめさんが否定する前に畳みかけるように言葉を続ける。
私の怒涛の口撃に、はじめさんは口をぱくぱくさせ言葉を紡げないでいる。多分動揺している。
だがそれはチャンスだ。肯定の言葉を貰えれば私の勝ち。
あと一押し。
下を向き両手で顔を抑えトドメの一言を口にする。
「答えてくれないんですね。、、、、うっ、私の事、嫌いなら、、、そう言ってくだ、、、さい。」
するとはじめさんは慌て言葉を発した。
「泣くな!全く嫌いじゃない!!こ、好ましいと思ってると言っているだろ。」
私は俯いたままで言葉を待つ。
「くっ!、、、分かった、、、分かった!こんな俺で良ければ、、、よろしく頼む。」
貰った!!!!はじめさんを頷かせ言質を取った。
嬉しくてついはじめさんに満面の笑みを向けてしまった。
その私の表情を見てはじめさんは驚愕の顔で、、、
「待て!お前泣いてないじゃないか?!騙したのか?今のは無「騙しては無いですよ。愛しているはじめさんに真摯に向き合い、全力で愛を語っただけですから。嘘偽りは無いです。その気持ちにはじめさんはOKを出した。そうですよね?」」
はじめさんの言葉に被せて言えば、何も言えないらしい。
「うっ」と言葉を詰まらせる。
流石に強引に押しに押したので少し罪悪感が、、、だからフォローを入れる。
「優しいはじめさんに甘えて強引に押し切ってしまいましたが、私の気持ちは本当です。はじめさんが教師、私が生徒という事実を全て背負います。だから私と付き合って下さい。
絶対に、絶対に幸せにしますから。」
そう言ってはじめさんに近づき抱き締めた。
はじめさんは一瞬身体を強張らせたが、はぁーと大きく息を吐いた後、抱き締め返してくれた。
「俺の負けだ。認める。俺はお前のそんな強気で強引で、でも相手の事を想いやれる所に初めから惹かれていたんだ。それに弱っているのを隠そうとする所も放って置けない。
お前の気持ちに応える為に取ってつけた訳じゃないぞ。言っておくがお前よりずっと前からこの気持ちを自覚していた!
それを言うつもりは無かったがな。
だがこうなったからには俺からも言おう。本郷、いや、ゆづ葉、、、付き合ってくれ。
もしこの関係が世間に認められなかったら責任はゆづ葉じゃなく俺が背負う。
そんな時が来たとしても、もうゆづ葉を離す気は無い。誰かに邪魔されそうになったら掻っ攫うからな。」
そうはじめさんに言われ、コクンと頷く。
思いもよらない言葉に加え初めての名前呼びに顔が、いや全身が熱くなってきた。まさかはじめさんからこんな風に言ってもらえるなんて、、。
どうしようもなく恥ずかしくなり両手で顔を隠そうとするとはじめさんがその手を掴んだ。まじまじと顔を見られながら
「お前そんな顔もするんだな。ふふっ、可愛いな。」
そう言ったはじめさんの顔は、今まで見た事が無い、意地悪そうでいて、そして優しい笑顔をしていた。
その後
初めて見る可愛すぎる笑顔を目の前に、私は羞恥を忘れ理性を失い押し倒した。
覆い被さった状態で無抵抗なはじめさんの口元に目が行く。
どちらとも無くゆっくり顔が近づいていきそして、、、パシン!バシーン!!と2回小気味良い音と同時に頭頂部に衝撃がきた。
突然の衝撃に涙目で後ろを振り向けば何故か夕子がスリッパを持ち仁王立ちしていた。
「はあ、こんなことになる気がして待機していたの。本能のままか、この野生動物
と説教を頂きました。。。
頭を押さえたはじめさんも隣に並び私と同じく正座をして夕子の説教を聞いていました。
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