第34話黄金の隧道(トンネル)2
「でもアビさん!まぐれでもこのトンネルが作れたなら、又作れるんじゃ?」
理久は、懸命に食い下がる。
だがアビは首を横に振った。
「確かに、このトンネルは理久さんに会う前に、魔法陣の代わりになるものが作れないか実験して作った物ですが…3回目でたまたま成功した感じですし…簡単には絶対に出来ません」
更に、アビは又首を振る。
「それに…失敗した2回でかなり恐ろしい危険な目にも合いましたし、作る魔法使いの体力を激しく奪い、下手をすれば死にます」
思い出したのか、アビの顔がかなり引き攣り、告白は続く。
「やはり、異界と異界を結ぶなどという事は神の領域なのです。おいそれと手を出せば、特別な者以外は、恐ろしい対価を払い悲惨な結果を招くでしょう…私は、もう二度とこんなトンネルは作りません。いや、作れません」
理久は、それをただア然と立ち尽くし聞いていた。
「理久さん…本当に時間がありません…貴方が本来いるべき、御両親のいる御自分の世界へお帰りなさい…」
そのアビは、念押しに理久の顔を見た。
だが、それでも理久は呆然として動かない。
アビは小さく溜め息を付き、尚も真剣に諭す。
「理久さん、正直に言いますが…理久さんはご存知ないと思いますが…あの…その…獣人の性欲は、人間より遥かに強くて粘着質で、殆どの人間には耐え難いと思います…」
「えっ?!」
「それに、普段でも強い獣人の性欲は、それぞれの種によって違う発情期には更に強まります。普通の人間には…本当に耐え難いと思いますよ」
理久は、思わず赤面した。
そして…
クロの城の寝室で見た、クロのあの陰茎を思い出す。
確かに、理久もそれなりの歳の男子なので普通に大きさはあったが…
クロの陰茎は、理久より遥かに遥かに大きい。
いや…大き過ぎる…
理久も男同士がどうやって性交するか位は知っていたので…
アレが…理久の体内に入ると思うとキツ過ぎて、確かに思わず理久は生唾を飲み込んでしまった。
でも…
でも…
理久は、獣人のクロと過ごした、怒涛の時間を思い出す。
まるで、野生の風のように現れ、理久に突然キスしたクロ。
理久にセックスを拒否られて、情けない位犬耳と尻尾をしなだれさせたクロ。
理久が異世界で困らないように、ずっと優しい視線を理久に向けるクロ。
そして…
アビだけで無く、理久の為にも輩達に一人で対峙したクロ。
「アビさん…ありがとう…」
「でわ…さぁ、ただ真っすぐ行けば良いだけですから…すぐ、理久さんの世界に帰れますよ」
アビは、理久の腕を取りトンネルに導こうとした。
しかし…
理久も、首を横に振ってハッキリ言った。
「アビさん…俺、このトンネルは行かない。それで、ちゃんとクロと話しをしたい。俺は、クロとこのまま別れて二度と会えなくなるなんて…どうしてもイヤなんだ…絶対に絶対にイヤだ!」
「でも、理久さん…それでは、貴方の世界に帰れなくなったら…」
理久は、一度視線を落とした。
「そう、そうだ…俺の世界には帰れなくなるかも知れないけど…二度と帰れなくても…」
すぐ理久は、真っすぐアビを見て言った
。
「その時は、その時は…俺…ちゃんと、腹をくくるよ!」
暫く、無言の間が空くが…
「そうですか…」
理久の表情が余りにスッキリと見えたので、アビは、それなら仕方無いと言った雰囲気でクスっと微笑んだ。
だが、しかし…すぐにアビの表情が曇る
。
「理久さん…すいません…僕…絶対理久さんが帰ってしまう想定してたんで…アレクサンドル陛下に余計な事をしてしまいました…」
「余計な事?」
理久が小首を傾げると、アビは、理久の横の暗闇に今現在のクロの様子を映像のように映し出した。
すると…
ジュリを抱くクロの横には、理久に全くクリソツの男子がいた。
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