第15話プロポーズ4

理久は、ただただ、クロの髪を優しく撫で続けた。


犬のクロに、いつもしていたように…


かなり長い時間をかけて。


やがて…


激しかったクロの唸りが、徐々に徐々に小さくなり、収まった。


鋭利な爪の方も、元の人間のように戻った。


「り…理久…理久…すまない…」


クロが、王国の支配者らしからぬ弱々しい声を出し、膝立ちのまま理久に抱きついた。


「いいよ…クロ…いいんだ…」


理久にはよく分かっていた。


クロは、最終的には理久を絶対に傷つけたりしない…


そして、クロがまだあの犬のクロにしか思えなくて、思わずその自分より大きな体を頭から抱き締めてやった。


どれだけの時間だろうか…


又長い時間、理久とクロは抱き締め合い合った。


こうやって抱き合っていると、理久の心はポカポカ温かくなると同時に、


何処か体の奥の方が…なんと言うか、ムズムズしてキュッとなる。


やがて…


「それに、俺達、二度と会えない訳じゃ無いだろう?クロのおじいちゃんの呪術があれば、いつでもずっと、ずっと会えるだろう?」


理久がクロの頭を抱いたままそう言うと

、クロが急に一瞬固まった。


だが、クロは、ゆっくり理久を見上げた


「ああ…そうだな……」


クロは、理久を思いやる余りに、誤魔化している事がある事を隠してゆっくり微笑んだ。








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