僕の“元”彼女は僕の言う事を全く聞かない女だ!

神石水亞宮類

第1話 別れる時もこうだった。

僕の彼女はそこら辺の女の子じゃない。





僕の元カノは、僕の言う事を全く聞かない。

別れる時もこうだった。



『ごめん、もう凜華とは付き合えないよ。』

『なんで?』

『もう僕は君に疲れたんだ。』

『でも、匠汰は凜華の事まだ好きだよね。』

『なんでそうなるんだよ!』

『凜華はまだ匠汰の事好きだよ、取り合えず匠汰と別れてあげる!

これでいいんだよね?』

『・・・あぁ、』

『“じゃあーまたね! バイバイ”』

『う、うん。』




あっさり彼女と別れられたことが僕は凄く引っかかった。

彼女はそんなタイプの女性じゃない!

ネチネチと絡みつくような性格の女だ。

そんな彼女が僕とあんなあっさりと別れるなんて有り得ない!

それに、最後に言った彼女の“じゃあーまたね! バイバイ”という

言い方も気になる。

取りあえずは今は会わないであげるぐらいにしか彼女は考えてない

はずだと僕は思った。

深く僕の言葉を考えない彼女ならそう捉えたのだろう。

少し時間が経てば、何事もなかったように僕に会いに来るはずだ!

当たり前のように“僕の彼女ずらする女”




『久しぶりね、元気にしてた匠汰?』




ほら? 思った通り1週間後に僕に会いに来た彼女。

ホント、僕の話をまったく聞いてない。



『あぁ、元気だよ。』

『今から行きたいところがあるんだけど、匠汰! 私ときて!』

『はぁ!? 少し前に“僕達別れただろう!”』

『あぁ~そんな事はどうでもいいから早く一緒に来て!』

『なんでだよ。』

『いいから!』




僕は結局、彼女に連れて行かれる。

連れて行かれた場所は、彼女の仲がいい友達同士の飲み会。

まあ、皆彼氏を連れてくる飲み会だ!

彼女も僕を連れて行かないと気まずくてお酒も飲めないようだ。

僕は渋々、飲み会に参加した。

そこで彼女がとんでもないことを皆の前で言い出した!




『凜華と匠汰は結婚しますー!』

『ウォーマジかよ! お前ら? 結婚するの?』

『今日はめでたい日だな~』

『おいおい! こいつら、結婚するんだって!』

『マジかよ! おめでとう!』

『ありがとう~』

『・・・・・・』

『凜華の事、幸せにしてあげてね!』

『おーい! 皆で乾杯だー!!!』


【カンパーイ】






・・・なんでこうなるんだよ。

別れたばかりなのに、【結婚】する事に変わってしまうなんて!

やっぱり彼女は、僕の話を全く聞いていない!

ふざけんなよ! なんで僕がコイツと結婚しなけりゃいけないんだ!

僕はイライラしながら彼女と一緒に歩いて帰っていると?



『ごめんね、あんな事言って!』

『本当だよ! 凜華は僕の話をどう聞いてたんだよ!』

『・・・ごめん、そんなに怒らないでよ。』

『普通、怒るだろう!』

『・・・怖かったの。』

『えぇ!?』

『匠汰から別れ話を切り出されて凜華怖かった。』

『・・・凜華、』

『皆には凜華から、“今日の事は嘘だって言っとくから。”』

『凜華、』

『ここでいいよ、もう一人で帰れるから。』

『・・・あぁ、』





・・・寂しそうな彼女の背中を僕は見送りながらこう思った。

【悪い事言ったかな?】と。





 *





・・・でも数日後、僕は友達から耳を疑う話を聞く。




『匠汰と凜華ちゃん、何処で式挙げるんだよ』

『えぇ!?』

『“結婚式だよ!” 結婚するんだろう!』

『い、いや?』

『いやじゃないよ! 凜華ちゃん、お前の家族に会いに行ったって!』

『えぇーーーええええ!? なにそれ?』

『まさか、匠汰知らなかったのか?』

『・・・あぁ、』

『結婚式も決まってるらしいぞ! 7月7日だろう!』

『そんな、凜華とはもう別れてるんだよ!』

『はぁ!? 結婚する奴が何言ってんだよ!』

『・・・で、でも、』

『嬉しそうに凜華ちゃんが俺に話してくれたぞ!』

『アイツが!?』

『男として、ケジメをつけろ!』

『なんで、そうなるんだよ!』





彼女は僕の言う事を全く聞かない!

別れ話をしたら? 何故、結婚する事になってんだよ!

意味が分からん! 

あの女は、もともと僕の話を何にも聞いていないんだ!

僕は彼女とは結婚しないし、別れてるんだから当たり前だ!

本当に腹が立つ!









・・・数ヶ月後、7月7日。

僕は結婚式場にいた。

隣にはウエディングドレスを着た凜華もいる。



【夫匠汰は、凜華を妻とし、愛することを誓いますか?】

【誓います!】

【...ち、誓います、】




なんで、こんな事になるんだ?

本当に彼女は僕の言う事を全く聞かない!

いつの間にか、僕と彼女は結婚式を挙げ籍も入れる事になった。

僕は彼女と別れ話までしたというのに.......。

付き合う彼女は必ず選ばなくてはいない!

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僕の“元”彼女は僕の言う事を全く聞かない女だ! 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru

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