九鬼龍作の冒険 四個のチョコレートの行方!
青 劉一郎 (あい ころいちろう)
第1話
九鬼の館は実に広大の敷地にある。そのため、そこが人に知れわたることは絶対にない。その辺り全体が山に囲まれていることもある。自然豊かで、しかもあらゆる地形の場所が存在する。
今、その中にあるこぢんまりとしたあばら家の廊下に、九鬼龍作は、ビビ、ランと共に座り、眩いばかりの濃緑色の苔に包まれた庭を眺めている。大小の岩が散らばっている。その配置は計算されたものではなく、ごく自然にばら撒かれたように見えないでもない。
玄成院の庭が再現されているのである。
もともとの計画はごっそりと玄成院の庭を持ってこようと思ったのだが、突然現れた笠原めいの気持ちに配慮して、こういう方法をとったのである。
「まあ・・・いいだろう」
龍作はビビの頭を二三回撫でた。
「ラン、そうだろう?」
ワンワン
ランは優しく吠えた。
ピピ、ピックル
龍作が空を見上げると、マゼンダ色の覆われた鳥が飛んできて、ランの頭に止まった。
「どうだった、京都は?」
ピピ・・・
「そうか。そろそろ行くか!」
こう言うと、龍作は立ち上がった。
その七日後、龍作は京都市内を走る市電、通称嵐電に乗り、嵐山に向かっていた。今残っているのは、この雷電だれである。開け放された窓から吹き込んで来る、秋の爽やかな微風は心地よかった。
紅葉の時期には少し早かったが、それでも京都は観光地である。遺伝の中は立つ人はいなかったが、座席は多少空いているだけだった。京都だけあって
、着物姿の女性も二三人いた。
前の方の席に、ちょっと気になる乗客に、龍作は気付いた。三十歳前に見えた男と女の方は若い。まだ二十歳を過ぎたくらいだ。その女子が二歳くらいの女の子を膝の上にのせていた。
「夫婦・・・か」
一瞬、龍作はそう思ったが、どことなく変・・・に見えた。
(・・・!)
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