心がむず痒くなる

 2ステの収穫が終わって、8ラウンド目。めくられたのは猪市場。スタプレの石積君は、もちろん初手で4人目の増員。むー、私はまだ2人なのにー。

 まあいいよ。私は当然スタプレで、とりあえずパン焼き天板を出しておく。出す条件は小麦畑がないことなんだけど、さっきの収穫で大鎌使いが畑を空にしてくれたから、条件はクリアしてる。これであとは脱穀板と蒸気鋤を出せばコンボ完成だ。

 次は土屋さん。


「私は授業で。1飯払って『畑の世話人』を出すね。で、出したときにレンガを払ったら小麦をもらえるんだけど……どうしようかな。いいや、3つとも払っちゃおう。3小麦もらうね」


 畑の世話人は、出したときにレンガを0/1/3払えば小麦を1/2/3もらえる職業カード。ついでにこのカード自体も畑になって、小麦や野菜を植えられる。序盤に出してパン焼きで食べていくも良し、終盤に出して小麦の点数を取りにいくも良しの優良カード。まだ誰もレンガ窯や石窯には手を出してないから、土屋さんはパン焼きで食べていくつもりかな。台所の芸術家は不発で終わっちゃったしね。


 甘菜ちゃんは3葦。もう2葦持ってるけど、さらに葦を取ったということはカゴ製作所でも狙ってるのかな。ヒキガエルの葦も降ってくるしね。

 石積君は2石。2石? 手元に7レンガあるから、製陶所狙い? それはさせられないなぁ。私は手札に製陶所の敷地があるし、汚水溜めのレンガがもらえるから、製陶所は譲れないね。


「製陶所取るよ。ついでに若い農夫の効果で小麦をもらって、植えとくね」


 パン焼き天板はもう出したから、心置きなく種蒔きできる。次のラウンドは増員小進歩で脱穀板を出して、もう1手で蒸気鋤を出すぞー! 楽しくなってきた!


 土屋さんは畑。小麦を植えるつもりかな。甘菜ちゃんは4木。石積君はレンガ改築、ついでに3レンガ払ってかまどを取得。さすがにあのインチキコンボだけでは最後まで食べていけないか。

 土屋さんは種パン。小麦畑を2つ作る。堅実だね。初心者って、目の前の飯問題を解決するために手元の小麦をつい焼いてしまいがちなんだけど、この打ち筋は腰が据わってる。やっぱり初心者とは思わない方がいい相手だわ。

 あとは甘菜ちゃんの手番が終われば、8ラウンド目が終了だ。


「授業で、1飯払って『動物訓練士』を出しますね。授業を使った後に、飯を払えば家畜がもらえます。0飯なら羊、1飯なら豚、2飯なら牛ですね。このカード自体出したときに発動するから、羊をもらってすぐに2飯、あ、屠畜具あるから3飯にします。すると『料理教室』でボーナス1点ですね!」

「そういえば甘菜、前のラウンドに料理教室出してたな。動物訓練士とコンボか」


『料理教室』は、授業と調理進歩(かまどや調理場)を同じ手番に使ったときに、ボーナス1点を得られる小進歩カード。動物訓練士は授業を使うたびに家畜をもらえるから、相性は非常に良い。コストが2飯だから、序盤に出すにはちょっと重いのが難点なんだけどね。


「甘菜ちゃんのコンボも面白いね!」

「本当はもっと早くやりたかったんですけどね。さすがに路面舗装工から入った方が強いかなって思って、後回しにしちゃいました」


 確かに甘菜ちゃん、料理教室を出す前に職業3枚出してるもんな。ここから職業出し切っても、料理教室は最大で4点か。って、それでも十分強いじゃん。


「これでラウンド終わりだから、日曜大工で増築しときますね」


 そうだった、甘菜ちゃん日曜大工で増築できるんだった。じゃあ次のラウンドは初手で増員しないとダメか。どっちにしても私のやることは変わらないだろうけどね。


「僕はインチキコンボで『現場監督』を出すよ」

「あ、とうとう自分でインチキ言い始めた」

「出したときにすぐに大きい進歩ができるから、井戸を取るね。コストを支払うときに資材1種につき1つまで1飯で払えるから、1木3石のところを2飯と2石で払うよ」

「ええ……お兄ちゃん、インチキの上塗りだよ……」

「2石取ったのって、それで井戸取れるからだったんだね」


 9ラウンド目。めくられたのは野菜の種。6木できてるけど、私は涙を飲んで初手で増員、ついでに脱穀板を出す。土屋さんはスタプレ。へー、土屋さんも6木スルーなのか。


「『小麦畑のベッド』を出すね。条件は小麦畑1つだから、出せるよね?」

「うん、大丈夫だけど、それ、家族が住む場所がないと発動しないよ?」


 土屋さんが出した小麦畑のベッドは、次の収穫のはじめに住む場所があれば家族を増やすアクションを得る小進歩カード。今現在、土屋さんの家族は3人で家も3部屋だから、このままだと小麦畑のベッドは発動しない。


「だからこのラウンドで増築するよ。誰も増築の競合いないしね」

「なるほど」


 よく見てるなー、土屋さん。やっぱこの子のセンスは初心者離れしてるよ。


 甘菜ちゃんは6木、石積君は4木。あっという間においしい資材はなくなっちゃったけど、このラウンドは資材を取ってる場合じゃないから仕方ない。あとは私は残る1手で蒸気鋤を出さなきゃいけないんだけど、どうしようかな。スタプレ埋まってるし、大きい進歩は空の畑がないから小麦を植えられないし。それならいっそ改築で出すか。


「改築で。まずは3レンガと1葦払って、それから1木と1飯払って蒸気鋤を出すよ。帰宅時に2木と1飯を払えば、ワーカーを置かずに畑を使用できる! だから、脱穀板の効果でパンが焼けるよ!」

「あ、コンボになるんですね。しかもパン焼き天板も出してる!」

「パン焼き天板まで流したのはやり過ぎたかな……織木さんが若い農夫だって知ってたら、絶対流してなかった……」

「ええ……何してんの、お兄ちゃん」

「でもすごいコンボだね! 石積君のも甘菜ちゃんのも織木さんのコンボもみんな面白い! よくドラフト中の短い時間に組み立てられるね、こんなの!」

「いや、まあ……私たちはやってる回数が違うからね……」

「それがすごいんだよ! アグリコラ、本当に好きなんだね!」


 土屋さんに褒められると、心がむず痒くなる。ナチュラルに人を煽ってくることもあるけれど、反対に素直に人を褒めることもできる子なんだよね。石積君が照れてたり甘菜ちゃんが褒められたがったりする気持ちも、わかるような気がするよ。

 あー、いかんいかん。こんなこと考えてないで、勝負に徹しないと。今日は土屋さんをボッコボコにするって決めてるんだから。やっと3人にできたしメインのコンボも完成したし、ここからが本番だ!

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