母親の入社祝いの書留の封を開けずにカラーボックス（カラボ）にのせる

おとめ座、けんこううんぜっこうちょう　やぎ座、はやくしんでください

はねあがる石油の価格を思ほえばアンクル・サムの「I WANT YOU」

誰からのメールを待っているんだよささくれがまた痛みだす夜

たよりないものたよりつつ自販機のコーラから炭酸が抜けていく夏

ドアを強く閉めて去りゆくこの人をにくめずにいるわれを憎悪す

この威容をかけて発射す精子などわが身にかかる　ティッシュはどこだ？

さくらばな見目麗しく散りまがい散らぬ心を持ちたくている

愛するひとと肩寄せて眠る夢のなか醒めなければそれもまた悪夢

日付しか正しくないという揶揄をにれかみながら東スポを抜く

愛猫の死を悼む母の後ろ姿をiPhoneで撮る親父の悼み

百円の鰯の寿司を喰らいしが歯茎の小骨朝まで抜けず

抜群に晴れたる空のさみしさに色とりどりのタオルを干して

ペダルこぐ合間に初秋のにおいしてぼおっとしてて尻をうつなり

ボーリング場ってこの道だっけ別にボーリング場はいかないけれど

少年愛ならそれもありかと思いつつ『トーマの心臓』のページをめくる

消化不良の嘔気こみあげ起きだして　誰かのメールが届いてほしい

ぬいぐるみ群れなすベッドサイドにはいつもうなだれている熊がいる

過去形の言葉忘れて過去形のようにふりむきひとけなき道

入社式がはじまるまでの三月に隕鉄のごとき携帯に換える

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