二〇〇八

消失点



人がまた轢き殺されて街灯はうなだれて立つ真名鶴となる





マグネットのイルカめくれば欠ける爪 どうやら俺は生きてるらしい





台風が熱帯低気圧に変わる 出生率はさがりつづける





母よりもあたたかりける羽毛布団の軽さになぜか責められている





内気なるホルスタインを絞りあげハーゲンダッツはかなしくうまい





NHKを流していれば薄まるよ死とか性とか尿意とかぜんぶ





戦争が終わったことも知らぬままミサイル係は平和をねが





電池切れの時計は四時をさしたまま「笑っていいとも!いいとも」にまたタモリが出てる





いもうとが人を殺して帰宅するいや君はおとなりさんのいもうと





羽虫らの死骸ひしめく流し台を近景として菜を炒めいる





抑うつに幽閉されたからこれはハロゲンヒーターと心中するコース





生卵落としたのちのでろでろを置き去りにした聖なる不貞寝





首を縦に振ることを拒んでいる リモコンもまだ見つからなくて





青姦の青、青空の青、青ざめる空まっぷたつに飛行機雲が





坂本九を葬るために華々しくダッチ・ロールを起こす飛行機





交差点に捨てられた煙草の吸殻を拾うすべなく過ぎるパトカー





ティッシュはリアルな場所にあるべしゴミ箱も辞書も時計も夢も





遠くから聞いたことのないうめき声きこえてどうやら親の声らし





とう色に照らされてああ夕焼けのいやそうでなく白熱灯の

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