運任せの異世界冒険記-召喚スキルはガチャ仕様でした-

Naka

第0話 SSRから始まる異世界転移

 僕の名前は雲季義弥。

 略してうんよしとか言われて勝手に神仏扱いされることもある、普通の男子高校生だ。

 歳は17で、先月に誕生日を迎えたばかりである。

 そしてそんな僕には同級生の幼馴染がいる。それは初春夢花という名の笑顔の眩しい女の子だ。

 品行方正で成績も優秀と生徒として見ても非の打ち所がない。男子人気も高く、告白されている現場を遠目に見たことすらある。そんな彼女と幼馴染だなんてバレたら何されるか分からないので、学校では余り話さないが交流は続いている。

 彼女への好意を自覚したのはつい最近で、一度自覚してしまうともうそれまでのようには接する事が出来ない。かといって急に話さなくなって疎遠になったと勘違いされても困る。さらに長い事悩むのは僕の性に合わない。

 だから僕は自分の気持ちにケリをつけるべくさっさと告白してしまおうと決めたのだ。


「……」


 彼女に呼び出しの連絡を入れた。場所は公園で、幼い頃によく遊んだ思い出の場所だ。きっと彼女ならここに呼び出した訳をもう分かっている事だろう。

 彼女がやって来たら何を言うかを考える。ありきたりなセリフがいいのか、それとも多少は捻ったものがいいか……。


「くっそ分かんねえ。世の男性女性はこんな事を考えて生きてるのかよ。凄えな、ホントに」


 模範解答があるなら教えてほしいものだ。

 せめて神社にでも行くべきだったかと僕は考える。願掛けなどというものに精神的緩和を図る以外の意図が無い事は知っているが、今はその緩和が欲しい。

 今更神社に向かっても彼女が来るのが先だ。これから告白をしようって時に何十分も待たすのはダメだろう。


「仕方ない」


 僕はスマホを開くととあるアプリを立ち上げた。それは【ルインズサーガ】という名前のスマホゲームだ。魔王が存在する世界で、魔王を倒すための勇者候補生としてプレイヤーがこの地に降り立つというものだ。グラフィックや声優など細かな部分に力を入れている割にゲーム性は大雑把だが、却って時間をかけずに遊べると好評だ。

 ガチャ画面へと移行する。今のピックアップは【大盗賊アーレンス】というキャラだ。フードを被っていてイマイチ顔が見えにくい。こういう場合は進化をすると外れるのだろうが、スマホゲームにおいて第一印象が分かりにくいのはいかがなものかと思う。


「まあいいか」


 ちょうどガチャを引くアイテムも揃っている。このゲームでは魔石を使用してガチャを引く。3個あれば一回ガチャが引けて、30個で10連ガチャが引ける。確率は結構渋いけれど、調子のいい時は何故かポンポンと高レアが出現してくれる。

 今は石は246個あるので、10連を8回、単発を2回引ける計算だ。無論そこまでする気は無い。ちょっとした願掛け、運試し程度のものだ。

 さて、とりあえず10連のボタンをタップしようか。意外とこの最初の一回がドキドキするのだ。課金なんかしていると罪悪感に苛まれているので、ドキドキ感は薄れてしまう。プレイしながら石を貯めた時にしか分からない快感だ。

 このゲームはN、R、SR、SSRのレア度が存在しており、上に行く程に出にくい。出てくるのも、ユニットと装備品扱いのスキルがあり、SSRのユニットともなると確率は1%だ。

 最初の10連は爆死だ。SRのゴミスキルが出ただけで、他はRとかNばかり。まあ、まだ216個もあるのだ。ゆっくり楽しもうじゃないかと、のんきしているうちに気付けば石は残り30個となっていた。

 何も出てこない。単発を2回引いたのは乱数調整の意味合いだが、そんな事プラシーボ効果以外の何でもない事は理解している。ただやらねば気が済まなかったのだ。


「ここで、引くべきか……だがここで引かねば男が廃る……」


 ガチャを引くか、撤退するか、どちらを選んでも引くという行動に変わりはない。

 ので、ガチャを引く事にした。

 するとSSR確定の演出が現れる。

 やはり幸運の女神は僕を見捨てていなかったのだ。大盗賊アーレンスが欲しいとかではないが、単純にレアキャラが出てくるのは気分がいい。


「おお!」


 ついつい上がってしまう声。

 大仰な演出の後、SSRのユニットが召喚される。だが、僕はそれを見て固まった。【女神リースティア】。銀髪の長髪で、白いシルクの衣装を身に纏った女性ユニットだ。魔法攻撃に特化しているようなステータスとスキルをしている。

 それが今しがた召喚したユニットだが、こんなユニットが実装されているなんて知らなかった。きちんとお知らせ読んで、ちゃんとやっているはずなのにだ。


『見つけました』


 その時、頭の中で声が響いた。

 ガクンと体から力が抜けていく。


『雲季さん。どうかお願いします。私を救ってください!』

 

 その声を最後に、僕の意識は断線した。

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