5-6
たどり着いた時、教会の
ツツジ月は夜7時でもまだ
……なんて、階段の踊り場から
「オカワリ、マメ!」
「ただいま~。もう晩ご飯の時間?」
そう尋ねるとハヤテが申し訳なさそうに言う。
「ワタシタチ、デカケマス」
「あにゃ?」
「スグ、モドリマス」
……珍しい、用事で出かけるなんて。
二匹がこっちに来てから二週間。
仕事のある日はコマリは新聞作りのお手伝い、ハヤテは畑仕事やソックスの助手をしていた。
お休みの日は三匹で、はてな
そんな感じで、いつも一緒だったコマリ達が初めて「
……まあ、それだけはてな島に慣れてきたって事でもあるけれど……。
ずっと一緒だった僕としては何だか
でも、引き留める理由も無いから、二匹の背中を見送った。
(ΦωΦ)/∼
それから、シノおばさんと久しぶりに二匹だけで晩ご飯を食べた。
しかし、今夜はシノおばさんもちょっと変だった。
「マメちゃん、あ~ん♪」
僕の真隣にぴったりと座り、スプーンに乗ったレトルトご飯を差しだすシノおばさん。
僕はためらったけれど、気分を悪くしちゃいけないと思って、素直にぱくりと食べた。
うー、恥ずかしいにゃ。
コマリ達がいたら、絶対にやらないのに……。
「うふふ、おいしい??」
「う、うん。おいしいけど……」
「じゃあ、まだまだあるから、たくさん食べましょうねー♪」
と、にゃん太郎食堂で購入した大量のレトルトご飯の瓶詰めを僕に見せつける。
今日のお昼も同じお店のレトルト。まさか夜まで同じお店のご飯を食べるとは思わなかった。
「でも、こんなに食べると、ふくふくになっちゃうにゃ〜」
「大丈夫よ♪ これは夜まで働く猫のためにヘルシーに作られたご飯なんですって。いくら食べても平気よ~♪」
そう言って、スプーンを僕に差しだす。
僕はしぶしぶ、ぱくりと食べた。
――その後も、かいがいしくシノおばさんにお世話される僕。
紅茶とケーキとおせんべいを出されて、毛並みを整えてくれて、破れたズボンを縫ってくれて、靴を磨いてくれて、更に爪まで磨いてくれて……。
――ここまでくると、ちょっと気持ち悪くなってきた。
僕ってシノおばさんの子供だったっけ?
って。
でも以前から、シノおばさんのお世話したい欲は
そういえば、長いことおばさんの家に居るなぁとチラリと時計を見れば、なんと!
もう11時45分!?
もうすぐ日にちをまたいでしまう時間だった。
……そういえば、コマリとハヤテも帰って来ていない。
ちょっと出かけると言っていたのに……。
何かトラブルに巻き込まれたのかもしれない。僕は心配になって、外へと探しに行く事を決めた。
「おばさん、そろそろ帰るねー」と言いに、キッチンに佇むおばさんの元へとソロリと近づけば、おばさんは一匹でうふふふふ……♪と笑っていた。
そして、おっそろしい事を呟いていた。
「……本当は、ハヤテ君をじーっくりお世話したのに……、どこへ行っちゃったの? シノ、悲しいわ。だから、マメちゃんでガマン♪ ガマンよ、シノ♪ ガマン、ガマン、ガマン♪」
……な、なんて、怖い上に、僕に超失礼な事を!!
その瞬間、おばさんがギギギギと油のきれたブリキ人形の様に、ぎこちなく振り向いた。
そして、泡でアワアワの手を僕に差しだしてニタリと笑った。
本能で後ずさりする僕。
おばさんはブツブツと「ハヤテ君、ハヤテ君のお世話、ハヤテ君……」と呟き続けた後、
「お世話させてぇえーーーー!!」
と、僕に突進して来たのだ!!
「ひ、ひえええええ!!」
僕は死にものぐるいで、シノおばさんから逃げた。
(ΦωΦ;))))==33
自分がどこを走っているから分からなかった。
けれど僕は、シノおばさんから逃げるために、とにかくがむしゃらに走っていた。
夜中だけあって、家の明かりは少ないが、異様に雄たけびや争うような声が耳に入って来る。
実際、僕の真横を「キャッシャーアァ!!」と言いながら通り過ぎる猫も居た。でも、僕もちょっとオカシクなっていたらしい。周りなんて、どうでもよかった。
とにかく、走っていた。
すると、なんだか体がフラフラとして来て、視界がグラグラと揺れた。
異様に暗い気もして、なんでだろう? と空を見上げたら、今日は新月だったのを思い出す。
そうか新月で、暗いから、僕は。
僕は、僕は、僕は……。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
僕は。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ。
ぼ……。
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たん。
……押したい、にゃー♪
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