2-11


 それからも兵隊さんをどうするのか話し合ったが、名案めいあんかばない。

 案がきた僕らがだまり込んでしまった時、


「こけ」


 と、僕が抱っこしていた鶏が鳴いた。

 鳴き声につられて、鶏の黒いつぶらなひとみを見つめると、急に脳内のうないにビビビッと「アズキばあちゃんの家」というワードが浮かんできたのだ。


「――そうだ! しばらくアズキばあちゃんの家であずかってもらうのはどう?」


「ほう? 何故なにゆえ?」とソックスが首をかしげる。


「アズキばあちゃん、鶏のお世話係を欲しがっていたんだよ。毛虫をいたいくらい忙しいって!」

「確かにアズキばあちゃん家は町から外れた場所にあるから、コマリ達と出会う可能性かのうせいも低い」

「それは名案めいあんであるますゾ! マメ!」


 められて、尻尾しっぽがパタパタする僕。

 ちょうど捕まえた鶏も返す所だったし、僕らはもう引き取って貰う前提ぜんていで、兵隊さんを農家から借りた台車に乗せると、アズキばあちゃんの家まで押して行った。



 (ΦωΦ)&(ΦωΦ)&(ΦωΦ)&(•ө•)/



 相変あいかわらず鶏達はとっても元気で、洗礼せんれいを受けながらアズキばあちゃんの家に辿り着く僕ら。

 ばあちゃんは鶏が帰って来た事に大喜びだった。


「――で、もう1羽は?」


 思わず右に居るソックスを見ると、ソックスも誰も居ない右側を向いてしまった。


 ――ソックスの奴、しらばっくれる気だな!!


「ソラマメ、早く見つけてくるんだよ!」


 そして、おしかりを受ける僕。


「ところで、ばあちゃん。この猫達なんだけど」


 ばあちゃんは、川の字に台車に乗ったまま気絶きぜつした兵隊さんを見て、目をぱちくり。


「なんじゃ、こいつらは」

「アズキばあちゃん、鶏の世話係を探していたでしょ? この猫達、どうかな?」

「何をやぶからぼうに!……しかし、こいつらきたえた体しているな。鶏の世話係にちょうど良さそうだ」


 兵隊さんの体つきを見て、まんざらでも無さそうなアズキばあちゃん。

 僕は話がまとまりそうでニコニコしていると、ソックスが腕をつついてきた。


「おい、大事な事を色々と言っていないぞ」

「にゃ? にゃにを?」

「もう! どうしてお前の脳みそはそんなにおめでたいんだ。ばあちゃん、こいつら、とかい島の猫なんだけどさ」

「……なに!?」


 アズキばあちゃんは、まゆひそめる。

 ソックスはコマリ達の事を説明し、それからコマリ達を追って来た悪者らしき兵隊さんである事を伝える。


 普通のおばあちゃんならば、そんな怖い兵隊さんを引き取るなんていやだと思う。

 けれど、アズキばあちゃんは、そこんじょそこらのおばあちゃんでは無い。


 ダテにファンキーやっていないのだ。


「分かった。じゃあここで鶏以外の事、ぜんぶ忘れちゃうくらい、ミッチリガッチリ働かせるよ」

「い、いいのでありますカ!?」


 こころよ快諾しょうだくするアズキばあちゃんに、目をまんまるくしておどろくネギ。


「ああ、私には島一番の強者つわものがついているんだ。まかしておけ」


 と、ニヤつくアズキばあちゃんの後ろで鶏達までもが、ニヤリと微笑ほほえんだ気がした。


 僕らまでもがゾゾゾ~っと背筋せすじこおりついた。

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