2-13


 予定外のハプニングに新聞作りは難航なんこうしながらも、なんとか作り終えた僕ら。

 ミケランジェロさんとタマジロー先輩がさっさと帰ろうと帰り支度を始めたので、僕は慌てて二匹のワイシャツを引っ張った。


 「ちょっとちょっと! コマリ達がもう怖くないなら、ミケランジェロさんやタマジロー先輩がお世話しても良いんですよね?!」


 顔を見合わせる二匹。すると突然、


「…………アッ! 持病じびょう空腹くうふくがっ!」


 と、タマジロー先輩がまあるいお腹を押さえて盛大に苦しみ出した。

 そして字面通じめんどおり、そのまま転がる様に消えて行ってしまった。


 ……残されたミケランジェロさんは、ギクリとして、アワアワと僕の机の上にあるメモ帳をペラペラとめくった。


 そして何を思ったのか。

 園児が描いたうんちの絵をバーン!! と、僕らに見せつけた。

 

 ポカーンとする僕ら。


 メモの内容に反応がないのを不思議ふしぎに思ったミケランジェロさんが、メモ帳をのぞいてビックリ!「お、お前、一体何描いてんだよ!?」とちょっと恥ずかしそうに、もう1ページめくった。そこには……、


『新米新聞記者は、とかい島の猫の面倒を見る』


 と書いたメモが。

 更に、昼間にお説教せっきょうされた時の言葉で、とどめを刺してきた。


「『新聞記者は常に約束アポに誠実でなければならない』だろ?」


 勝ちほこった顔のミケランジェロさん。


 僕はやられた! と思った。



 (ΦωΦ;)〜&(*ΦωΦ*)&(ΦωΦ)☆



 借りているアパートの大家さんのシノおばさんに手短てみじかに事情を話して、今夜は僕の部屋に泊まらせて貰える事になった。


「✕✕✕✕」

「✕✕✕✕✕、✕✕✕」


 相変わらず、何を言っているか全く分からない二匹。でも、僕の部屋を物珍ものめずらしそうに見ていて、とても楽しそう。


「――で、なんで、君も居るの?」


さびしいかと思って」


 まくらを片手に、当然の様にいるソックス。

 すると、ハヤテが僕の肩を突いて、字を書くジェスチャーをする。

 何か、書きたいらしい。

 僕は仕事で使うメモ帳とペンを渡した。

 すると、ソックスの五十音表を見ながら、何かを書き出した。


 しばらく経って、ハヤテはこんな手紙を僕とソックスに寄越よこした。


【わたしたちを たすけてくれて、ありがとございます。


 わたしたちは、とかいじまから にげて ました。


 コマリは、とかいじまの おひめさまです。


 わたしは ちいさいときからコマリを まもってきた きし です。


 ほんとだったら、きょうは コマリの けつこんしき でした。

 

 しかし、コマリが いやがったので、にげて きました。


 とかいじまに かえりたく ありません。


 はてなじま で くらしたいです】


「……にゃあ! 本当にお姫様と騎士だって!! けつこんしきって結婚式だよね?」


 すると、コマリはまた僕たちに、例の言葉を言う。


「オマメ、イヤ。リテヌスけっこんヲタチナロしたくない!」


 それを聞いていたソックスが、五十音表を見つめる。


「リテヌス?…………結婚って意味だ……つまり……分かったぞ! コマリがずっと俺たちに伝えていたのは、お前マメが嫌いって事ではなくて「オヨメお嫁、イヤ」だ! 言い間違えていたんだ!!」

「あにゃあ……!」


 ソックスの名推理めいすいりが光る。

 良かった。僕が嫌いじゃなくて、お嫁さんになるのが、嫌だったんだ。


 安心した~。


「そうか、コマリがお姫様だから、兵隊が連れ戻しに来たのか」

「ソックス、これからどうすれば良いのかな?」

「マメはどうしたい?」

「にゃっ?!」

「お前が世話するんだ、お前が決めれば良い。コマリはお前にぶつかって来たじゃないか。これは運命だよ」


 ……運命!?


 そっかぁ、運命ならしょうがないのかな……?

 確かにニクニクさんの占いも、僕に女難の相が出ていた訳で。

 そっか……運命だから、お世話しなくちゃいけないのか……。



 ……でも、運命ってモヤモヤするにゃあ……。


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