片恋インスピレーション

小川琴葉

プロローグ 出会い、あるいは再会

 中学校に行く途中、横断歩道でなにかにつまずいて転んだ。

 そのまま地面に吸い寄せられるみたいに、いつの間にかコンクリートの上に座りこんでいた。


 ――あれ、私・・・なんでこんな所に座ってるんだろ?


 そう思った時にはもう遅くて、歩行者信号の青が点滅している。頭のどこかで動かないと、と思っているのになぜか足が動かない。


「危ない!」


 とても綺麗な声が遠くで聞こえて、気が付いた時には腕をつかまれていた。そのまま腕を引かれて走り出す。

 黒髪で、とても瞳がきれいな男の子。

 顔をはっきりと見ることはできないけれど、横顔からそれだけが見えた。


「あ、あの・・・っ」


 何も話さないのがあまりにもどかしくて、思わず声を上げる。


「助けてくれて、ありがとう」


私のことを掴んでいた腕が、離れていく。

次の角を曲がった瞬間、男の子はいなくなっていた。

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