落とされた1000万円

「おいおい、だから俺のだっつってんじゃん」


「はぁ?何いってんだよてめぇ、」


「いやいや、ほんとにこれ私のですって…」


「それはわしのじゃよ、、、」


「もう争うのは、やめましょうよ!」


「僕のものですって…!」


「お、れ、の、だよぉっっ!!」


「かえしてよ!!」


いつもなら静かになる時間帯。

さっきまであんなに眩しかった太陽も今では眠たそうに夕日へと変わっていた。

しかし今日はいつもと何かが違っていた。


ポツンとある交番の前には1000万円と、

それを巡って騒ぐ8人の老若男女。


みな口を揃えて「私、俺、が落とした」と言う。

そこに居る警官は、困り果てていた。

そしてその8人も今にも殴り合いそうな雰囲気である。

「いや、ほんとに俺のだっていってるじゃないすか」いかにも胡散臭そうなチャラ男。

「ここは、話し合いましょうよ、!!」

この場を落ちつかせようとしながらもチラチラと1000万を見る女。

他にもおじいちゃんやら、無駄にガタイのいい大学生まで…。

すべての人物が怪しく見える。


すると突如その空間を食い破るかのようなひとしきり大きな声が響いた。


「ちょっと、静かにしてくれ!!」


「あ、巡査部長、」

また一人の警官がボソリと言った。

その巡査部長は、真剣な顔をしながら今まで気付かなかった鳴り響く受話器に手を伸ばした。


「はい、もしもし…。ええ、そうです。え?イッセンマンエン?!一千万円を積んだ現金輸送車が襲われた?!」

つい声をデカくしてしまった。

男は、ドキリとし少し周りを見るとまた電話に戻った。

さっきよりまた小さな声になりながら。

「分かりました、えっとぉ…その1000万なら今ここにあって…」


チラリとまた周りを見回した。

勿論誰もいなくなっていた。


巡査部長は、ニヤリと笑った。






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カランコロン 3.14 @3140905

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