第48話 裏話

「という事で慶太の家にお手伝いに行くよ! 慶太のとこに遊び……じゃなかった、慶太が元カノに襲われないために! ボクがお世話しに行くよ!」


『え?』

 朝の時間、みんながざわめいてる中で言ったボクの言葉にみんなから返ってくるのは疑問の返信、疑惑の声。


 まあまあ待て待て! ボクの意見を聞いてくれ!


「あのね、慶太たちは家から出たら危ないでしょ、今は学校から登校禁止令も出てるんだし! それに元カノに襲われるかもしれないし! だからボク達でお世話する、ご飯とか……あ、あと襲われないように夜の警備とか! これで合法的に慶太の家に……うへへ、3人でお泊りだ……えへへ」

 慶太が家から出れないから!

 だからそのスキをボクが慶太の家に行って……えへへ、色々しよう! みんな心配してるだろうし、解決するまでボクが慶太と海未ちゃんの家に泊るんだ……ぐへへ。


「福永、何だそんな気持ち悪い笑みは……まあ、でもそれは私も賛成。確かに家にいてばっかりじゃストレスも溜まるし、ご飯もなくなる。いい考えだ、それじゃあ今日は私が行こう、私が高梨の家でお料理作ろう。ちょうどチビたちも高梨に会いたがってたところだし」


「うんうん、そう言う事。やっぱり川崎ちゃんは……ってええ!? なんでそうなるの!? ボクがお泊りして遊びに行くって言ったよね、なんで川崎ちゃんも良く流れになってるの!?」

 ていうか川崎ちゃん慶太とは仲良くても海未ちゃんとは仲良くないでしょ!

 それじゃあ不適切、慶太に会いに行くみたいで不適切、両方と仲のいいボクが適任!


「いや、それ福永が言うか? それに私は海未ちゃんとも仲いいぞ、この前委員会でかなり話したからな。それに高梨には多少恩がある、この前弟たち迎えに行って一緒に遊んでてもらったし、夜ご飯手伝ってもらって一緒に食べて、それに合鍵も渡したし……高梨には色々お世話になってるからね。たまには恩返し、しないとね」


『はえ!?』

 そう言ってパチン、とウインクする川崎ちゃんに教室中がざわざわざわめく。


「あれ、やっぱりあの二人……」とか「もうそんな仲に……」「けー君? けー君!?」とか……ええ、川崎ちゃん!? 川崎ちゃんこのボクを差し置いてそんな関係に!?


「いや、違う、そんなんじゃない。何勘違いしてるんだ、みんな。弟が高梨になついてしまったからな、仕方なくだ。そう仕方なく……という事で今日は私に任せてくれ。福永一人に任せるのも不安だしな。私と弟たちで高梨の事は何とかする。今日1日は私が行くよ」


「ぐぬぬぬぬぬ……」

 やばい、負ける、押し切られる!

 このままだと慶太が知らず知らずに川崎ちゃんに食べられて……な、何!? 誰だ、肩を叩くのはこの僕に名案をくれる勝利の女神様か!?


「はーい、勝利の女神さん!!!」


「……何の話だ、彩葉?」

 希望を込めて振り返ると、後ろにいるのは良哉カップル。

 え、何、惚気? 惚気なの、良哉?


「惚気なわけあるか。いやな、お前料理出来ないじゃん、それに海未ちゃん一人になるじゃん、お前が行ったら」


「海未ちゃんとも一緒に寝る!」


「はい、アウト、倫理的にそれはダメ。という事で俺たちも行くよ、加奈子も海未ちゃんとそれなり親交あるみたいだし。だから彩葉、お前が俺たちもついていく、な加奈子ちゃん?」


「うん、良哉君の仰せのままに!!! 私もついていきます!」


「ぐぬぬぬぬぬ……」

 ……なんなんだこのカップル!

 そんな事言っていちゃつきたいだけのくせに、一緒にお泊りする大義名分が欲しいだけなくせに!


 ていうかこのままじゃボクの居場所がなくなる、せっかくのボクと慶太と海未ちゃんのラブラブお泊り計画が……

「話は!」


「聞かせて!」


「貰いました!」


『私たち、海未ちゃん大好きお友達! 私たちも参加します!!!』

 ……またわけわかんない子たちが組体操で乱入してきたし!

 海未ちゃんのお友達……わけわかんなくはないけど、でもダメ! ボクとのラブラブ計画だったのに!


「あれ~、1年生だ! 可愛い~、好き! ねえねえ、頬ずりしていい? 頬ずりしていい?」


『え? え?』


「ふふふ~ん、みんな可愛いねぇ! 海未ちゃんも可愛かったけど、お友達も全員可愛いじゃん! ちっちゃい二人もキュートだし、大きなその子はビューティフル! よっしゃー、すりすりーすりすりー」


『うえっ!?』

 ……蓬生ちゃんの頬ずり攻撃食らってるのは可愛そうだけど、でもこんなに美味く行かないボクの方が可哀そうだから!

 だから、その可哀そうだけどここはちょっと穏便に……


「アハハ、やめなよ蓬生。ストップ、ストップ! 本当に可愛い子見ると見境ないんだから……いいよ、みんなも行こう! 海未ちゃんも喜んでくれると思うし、来ていいよ、3人とも」

 ……だからなんで川崎ちゃんが仕切ってるの! 意味わかんない、仕切るのはボクの役目なはずなのに! なんかリーダー取られてるんだけど!?


『あ、ありがとうございます! 私たち、金曜が良いです! 海未ちゃんとお兄さんとたくさん遊べる金曜日の夜が良いです!!!』


「うん、OKOK。それじゃあ今日は私が行くから、福永と加奈子カップルのペアは明日頼むよ。明日、高梨のお世話、よろしく頼むね!」


「ぐぬぬ……いいけど! 別にいいけど!」

 完全に乗っ取られたし! 日程も勝手に決められたし、それに……もういいけどさ! 慶太と海未ちゃんとお泊りできるだけで嬉しいけど……邪魔が多すぎるよ、もう!



 ☆


「というわけで私が来た。今日は私の役目だから」


「なるほど、そう言うわけね……どうりで彩葉からたくさんメッセージが来てるわけだ、ちょっと怖めの」

 朝から「慶太! 理性! ボクがいる!」とかそんなメッセージいっぱい来てたけど納得、そう言う事だったのね。にゃるほどにゃるほど……ありがと、川崎ちゃん。


「ふふっ、どういたしまして。それじゃあ早速ご飯作るから高梨は待ってて。とびっきりの、作ってあげるから」


「アハハ、ありがと。今日はお任せしようかな、川崎ちゃんに」


「うん、お任せしてよ。いつものお礼、したいからさ。だからちょっと待ってて……智樹とかの相手も、して欲しいし」

 そう言ってエプロンをキュッと締める川崎ちゃんに「よろしく」と一言かけて、もう一度ソファの方へ……ん、何してるんだあいつら?


「海未さん、海未さんって彼氏とかいますか? よろしければ、その俺が彼氏候補立候補していいっすか?」


「え? え?」


「何言ってるんですか健太。ダメですよ、そんなこと言っては。困ってらっしゃいます、海未さんが……ところで海未さん、野球部男子は好きですか? この後、ぜひ僕と……」


「何しとんじゃお前ら!!!」

 ソファに座る海未の手を握りながら、口説き落とそうとしていた双子の頭に鉄拳制裁。お前達何しとるんじゃ、人の妹ナンパしてんじゃねえ!


「な、何するんですかお兄さん! 人の姉取った人に言われたくないっす!」


「そうですよ、お兄さん! ちょっとくらいいじゃないですか!」


「だから川崎ちゃんとは付き合ってねえって! ちょっとダメ、海未は俺の妹! 絶対に手出すの許さないからな、マジで怒るからな!!! ほら、海未危ないから川崎ちゃんのところ行ってなさい……僕はこの二人お説教するから!」


「あ、はい……あ、ありがとうございます、兄さん」

 怯えたように身体を震わす海未をキッチンの方へ行かせて、そのまま僕は双子のお説教タイムに移行。


 全く油断も隙も無い……海未に何かしたら絶対に許さないからな!!!




「あ、川崎さん……えへへ、兄さん私の事大好きすぎて困っちゃいます。海未の事、大好きって……えへへ、困っちゃいます」


「……いきなり惚気ないでよ、海未ちゃん。良かったね、そう言ってもらえて」


「はい……あ、その……」


「大丈夫、高梨にそんな感情持ったことないから。安心して……お兄ちゃんは海未ちゃんのものだよ」



 ★★★

 感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る