花子さんだって恋をする!
雫石わか
1:七海小学校の三怪談
七海小学校には、三つの怪談がある(七つはないので、七不思議とはいえないのだ)。最初はそれについて話そうか。大丈夫。時間はたくさんあるから。
まず一つ目、「校庭のすみの石」。七海小の校庭のはしっこには両手でおわんをつくったときくらいのサイズの石がある。その石は、午後七時になると青く光り出し、犬が一匹その周りを走り出す。その犬にさわってしまうと、頭上から大きな石が落ちてきて、けがをする。下手すると死んでしまう、というものだ。犬は普通にかわいいので、癒しを求めにときどき子供たちが校庭のフェンス越しに見に来る。
二つ目は「紫おばさん」。この小学校は古くからあり、戦時中に子供たちが避難するための防空壕が今も残っている。真っ暗で危険なため立ち入り禁止となっているがたまに入ってくる子どもたちがいる。そして、そこには紫の着物を着て、紫の頭巾をかぶった通称“紫おばさん”がいる。紫おばさんは入ってきた子どもたちを追いかけて捕まえ、ずっとそこに閉じ込める。「外は危ないよ!こっちにおいでぇ!」昔は本当に外は危険だったから守ってあげたいという念が残ってしまったのだろう。悲しい話だが、子どもにとっては普通に怖い。
最後の三つ目、これは有名「トイレの花子さん」。生前はここの生徒だった西井華がトイレの花子さんとなって今も学校にいる。彼女がいるのは三階の奥から三番目の
トイレ。そのトイレのドアを三回ノックして、その前で三回回って「はーなーちゃん
、あそびましょ!」というと「は~あ~い」と華ちゃんが出てくる。そして一つお願い事を叶えてもらう代わりに本を三冊あげる、というものだ。
しかし、これで華ちゃんを呼び出せたものはいない。なぜならこれは、正規の方法ではないからだ。本当は本を三冊赤い紙でラッピングしたものをトイレの前に置き、
線香を三本お供えしてからあれをやらないと呼び出せないのだ。みんなが間違ったやり方をするから、それをした子たちは一週間風邪で寝こむことになる。華ちゃんはすごく、誰かに呼び出してもらいたいの!誰かこの方法を見つけてくれる人はいないの!?ずっと一人で、寂しいんだけど!紫おばさんは怖いし話そうとすると
閉じ込められそうになるから近づきたくないし、まあアオタ(一つ目の怪談の犬)は
かわいいし、癒されるけど言葉は通じないし……!
あ…う、コホン!紹介が遅れてごめんなさい。私こそが三階段の三番目、トイレの
花子さんこと、華ちゃんよ!え?私が怖い?ま、待って!怖くないから!私が死んだのだって普通に事故で、ここに忘れ物しちゃったのが気がかりでここから出られなくなっちゃっただけなの!心を痛めたけなげな少女なのよ!かわいそうでしょ一人じゃ!・・・・・・
一人でこれをやってるって冷静に考えるとヤバいわ私。とにかく、夜宮くんのこと、どうにかしないと!夜宮くんは七海小の六年生の男の子よ!爽やかなかんじでかっこよくて優しいの!やんちゃでたまに意地悪なところがすごくいいわ!…私も、話してみたいなぁ~・・・。
華ちゃんはぺたりと地面に座った。そして寂しそうに自分の膝をかかえる。
「もう、卒業しちゃう。一回でいいから話したい。そのために、なんのために御力を
使うか考えなくちゃ」
そういって華ちゃんは眠りについた。また明日、夜宮くんの顔をみるため、御力の
使い道を考えるためにーーーー (みちから)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます