28歳の女
璃々花
世の人間がしていること
彼の唇が近づいてくる。
その唇が、私の、わたしの唇へ。
こ、こ、、、これが
私のファーストキス。
、、、と考える余裕もない。
彼の口からは舌が伸びてきて、私の口の中に入っていく。私の舌に絡みつき、そして、歯や歯茎、口内すべてを彼の舌が舐めまわしていく。
「、、、んっ」
え、私ってこんな声出るの!?
私は、どうしたらいいの、、、同じようなことを?した方がいいの?
「舌、出して」
彼から指示が出ました。
はい、私、言う通りにします。
舌を伸ばすと、彼は私の舌を自分の口内に含み、舌を吸ったり唾液の交換をしたり。
少しずつ理解をしてきた。私もまぁ少しは知識はあるんだ、ぞ。
一度、唇を離した。
「ふふふ」
お互い口角を上げて、軽く笑った。
目を合わせ、何かが通じ合ったかのように、私と彼はもう一度唇を重ね、濃厚なキスをした。舌を絡み合わせ、そして唾液が混ざる音が聞こえる。
お互い、息が上がり、更に激しいキスをした。何度も左右に顔を傾け、何度も色んな方向から舌を入れた。
ああ、なんだか、気持ちいい。これが、「感じている」ということなのか。私はこのキスで、「女」になって、身体中がうずうずしている。
唇が離れた。
まだ余韻が残ってて、心臓がバクバクしている。
「初めて、だったよね」
「うん、、、」
「可愛かったよ」
「、、、もう!」
はい。
只今、24歳。女性。
私、清原麻衣の
ファーストキスが終了しました!祝!!
世の人間はこれをしていろのか!?!?
なんという高度な技!
と言いながらこなした私は器用な者だ。自画自賛。
さぁ、相手は、、、というと
幼馴染の谷口修斗。
修斗とは幼稚園からの仲。
小さい頃から追いかけっこやサッカーをしては、どっちが勝ったか負けたかで喧嘩して、お互いのお母さんに怒られたりした。
小学・中学は、家も近所だったから同じ学校に登校した。クラスは違っていたが、仲は続いていた。
修斗は一目惚れが多い。好きな子が出来ては、帰り道に相談を受けていた。というものの、ちっちゃい子供の恋なんて可愛いもんだ。告白なんてせずに、好きな子にはちょっかいを出して、楽しく笑い合って、、、と思えば、次の可愛い子に目がいく。修斗はそういう男の子で、中学までは大きい恋愛もせずに過ごしていたようだ。
そう話す私は特に何もなかった。ガサツな女の子だった、と自分でも思うし、修斗にも言われていた。
「お前、好きな人とかいないのかよ!まあ、男みたいなもんだもんな、麻衣は。どんまいどんまい」
さぁ、青春時代と言われる、高校生。
私は特に将来を考えていなかったため、普通科のある公立高校へ進学した。なにかしたいことが見つかるだろうと思っていた。
修斗も同じ高校だった。
というものの、私と修斗は同じくらいの学力で、まあ、公立高校の普通科を志願するなら、南高校と北高校の二つの高校しかなかった。私と修斗は、通学のことを考えるとしたら、家から近いのが北高校だったので、自動的に、その高校への志願となる。
まあ、私たちは家族のような存在になっていたので、両親も修斗のことを息子のように見ていて、晩御飯も一緒に食べていた。一緒に勉強したり、お互いの実家を行き来し、夜遅くまで暗記を一生懸命していた。
なんだかんだ、私と修斗は合格した。
高校時代は友人の範囲が広くなり、私たちはそんなに関わることはなくなった。
修斗はサッカー部に入っていたので、部活に打ち込んでいて、一緒に過ごすことは少なくなっていった。私は部活に入らず、ファミレスのアルバイトをしていた。帰りにグラウンドを通る時、修斗の姿を見るだけで、話すことは無かった。
風の噂で、修斗がサッカー部のマネージャーと付き合った、とか、バドミントン部の女子と付き合った、とか彼の恋愛話を聞きはした。同じクラスでも無かったし、わざわざ聞くことでも無いな、と思って、放っておいた。しかし、よく聞いたのは、
「また谷口くん、別れたらしいよ」
「次は違う女の子と付き合ったって」
だった。相変わらず、一目惚れなのか。変わらないなぁ、、、。
私は正反対。男の子に興味はなかったし、言いよられることも無かった。だから、恋愛はなく過ごしていた。
そんなこんなで、高校3年生の夏。
修斗が所属しているサッカー部は大会を終え、彼は引退した。
私は引き続き、アルバイトを続けていた。
ふと、修斗は高校卒業後、何をするのか気になった。
丁度、そう思った日の帰り道。
「麻衣!」
久々の声だ。
振り向くと、小走りで来る修斗。
「おお、修斗。今帰り?」
「うん、なんか久しぶりだな」
本当に久しぶり、というか学校でも話すこともなければ、すれ違うことがほぼなくて。なんだか懐かしい声だった。
「ほんとに修斗?」
知らぬ間に身長が高くなっていて、男の子、というより、男性だった。しばらく会っていないうちに、こんなにも変わったのか、とびっくりしたとともに、ちょっと切なくなった。
「俺だよー-。いやぁ、麻衣と話したいと思っていたんだけどさ、お前、アルバイトしてるらしいじゃん?おばちゃんに聞いてたんだよ。麻衣が遅くまでアルバイトしてるって。学校の帰りもグラウンド通るくせに、俺になにもしないしさ?」
おばちゃんというのは、私の母のこと。
「うん、部活は面倒でバイトしてた。え、グラウンド?私も見てたけどね。あぁ修斗頑張ってるなぁ、って。色んな女の子と付き合ってるって噂は聞いてたけど、あははははは」
「そんな噂になってたのかよ」
「ふーふー。一目惚れでしょ?」
「うるせぇ。今はもう落ち着いてるよ、彼女はいない」
「あ、そう。また可愛い子いたら、ぴょんぴょんいくんでしょ」
「はぁ可愛くねぇな、相変わらず、麻衣は。そういやさ、お前は卒業後どうする?」
え、同じこと考えてたんだ。
「何も決めてないんだよねえ」
「俺もなんだよ。ずっと同じ道を通ってきた麻衣の今後が気になってさ」
私たちは頭の隅でお互いを気にしていたようだ。
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