命のカケラが結ぶ恋

へったん愛好家

命のカケラ

 今よりもほんの少し昔。学校にも行けず、病院で毎日を送る2人の少年少女が居ました。


 2人は重い病気を生まれた時から患っており、不自由で幸福の少ない生活を送って居ました。


 退屈な毎日を過ごす2人。そんなある日、神の悪戯で2人は出会いました。


 年の近い2人はすぐに仲良くなり、毎日のように病室やレクリエーションルームでじゃれ合う日々を送ります。


 男の子は毎日のようにピアノを弾きました。彼には天賦の才があり、独学で次々と人々を感動させる演奏を行いました。


 女の子は絵を描くのが好きでした。彼女も神様が与えた才能が早くから開花し、大人でも思わず息を呑む素晴らしい絵画を筆で生み出しました。


 特に、男の子がピアノで弾いた曲を女の子が筆で表現した絵画は病院内の全ての人々を感動の渦へ巻き込みました。


 しかし、束の間の幸せな時間は長く続きませんでした。


 男の子の容態が、ある日を境に悪化したのです。


 やがて自立歩行も不可能となり、寝たきりとなった男の子は、彼を心配して病室にやって来た女の子に言いました。


「ねえ。病気が良くなって大人になれたら、結婚しようよ」


 ちょっと男の子より年上で、オマセさんだった女の子はその言葉を聞いて満面の笑みを浮かべて言いました。


「良いよ! 私、君のお嫁さんになる!」


 それから数日後。男の子は帰らぬ人となりました。


 そして更に数日後。とある絵画を完成させた直後に体調が急変した女の子もあの世へと旅立ちました。


 2人の遺骨は同じ墓に納められ、静かにこの世の行く末を見守る事となりました。


……そんな2人が生前に書いた「臓器提供意思表示カード」が、ほんの少し先に生きる2人の男女の運命を動かす事になります。


 2人が残した命のカケラが、見ず知らずの他人の人生を一変させてしまうんです。不思議ですねぇ。


 さて、時を越えて強い意思が繋いだ愛の物語。ここに開幕です。

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