第43話 事後

 カミュとストレンは爆発が起きた後、助けに来た冒険者により応急処置を施され、今はその冒険者たちにより、冒険者ギルドの中にある治療室に寝かされていた。


 そこに急いだ様子で現れたのは彼らのパーティーメンバーであるアリア。


彼女はレイスと別れた後まっすぐパーティーの拠点に帰ってきた。そしてすぐに仲間たちがいないことに気づき冒険者ギルドまで歩いてきた。しかし、その途中で彼女を知っていた人たちからパーティーメンバーが怪我したことを知り、急いでここまで駆けつけてきたのだ。


「……カミュ!ストレン!大丈夫!?」


 アリアは今も回復魔法使いに治療されている2人を見て声をかける。


「こら!今はまだ治療中だから子どもはまだ外で待っていなさい!」


 回復魔法使いは外とはあまりかかわりを持たないギルド所属の職員であったため、アリアの事を知らなかった。


 しかし、アリアはそんなこと気にしない。彼ら二人に近づくと二人を対象に魔法を掛ける。


「オール・リカバー・クインタプル」


「「同じ魔法を五重で!?」」


 魔法はイメージである程度自在に扱うことができる。それゆえ、一つの魔法を強力にしようと考えればある程度強化することは可能だ。さらに、二つ同時に魔法を使うイメージをすれば、同時に魔法を二つ使うこともできる。


 しかし、彼女が今したことは同じ魔法を五つ同時に発現させること。

一般的に、一つの魔法を強化するより、同じ魔法を2重にして重ねたほうが威力が高くなる。

しかし、同じ魔法を2つ同時に考えるのは難しい。なぜなら、同じ魔法であるがゆえにイメージが重なり合ってしまい、結局一つの魔法として発現してしまうからだ。


それを、五重。イメージが被らないよう微妙な差異を付けほぼ同じ魔法を五個同時に頭の中で描いたのだ。例えるなら、手足口を使って5本のペンを持ち、同時に全く同じ文字を書くということ。それも、それらを重ねた時に0.1mmの誤差も出ないくらい全く同じに書き上げるという神業。もはや普通の人間ではない。


「な、なんて子だ……。」


 アリアの回復魔法を受けたカミュとストレンの身体は、みるみるうちに回復していく。言い方は悪いが気持ち悪いほど急速に回復していった。


 炭化していた体は元の姿を取り戻し、欠損していた腕や足は何事もなかったかのように復活していた。しかも体力まで回復したようで、二人を回復魔法を掛けられてすぐに目覚めた。


「……カミュ、ストレン、大丈夫?」


「……ん?……ああ、アリアが救ってくれたのか。また返しきれない恩ができたな、はは。」

「……。なるほど。ありがとう、アリア。救ってくれて。」


 カミュとストレンは起きてすぐに状況を把握した。自分たちは死にかけたためにギルドへ連れてこられ、アリアに助けられたのだと。そして、アリアの人外の技により回復したのだということも。


 こんなにも早く状況を把握できたのは、彼らがこのような経験をしたのが初めてではないからである。それゆえ、自分が寝ている、アリアが傍にいる、これだけでおおよその状況把握ができるのだ。


「……礼は後でいい。……誰にやられた?」


「アリア、気持ちは分かるが、そんなに怒るな。おそらくまたどこかの貴族の仕業だろう。今回は小さな子どもを二人で自爆特攻させてきたぜ。まったく、人のことを何だと思ってるんだ!」


 アリアの感情が溢れてきていたことに気づき、このまま爆発してはいい結果が生まれないと判断したカミュは、アリアをたしなめるとともに、自分が代わりに怒ることにした。周囲に自分より感情をあらわにしている人がいると、自然と見ている人は落ち着くものであるからだ。


「……うん。……それで、今回はどうする?……あの貸し、使う?」


「あああれか。貴族には貴族を、ってことか。……よし、それでいこう!ストレン歩けるか?」


「問題ない。アリア再度感謝する。」


「……ん。……別にいい。……仲間だから。」


 そんな“ステイブル”の会話を聞いていた二人の回復魔法使いは、彼らが何の話をしているのか全くわからず、ただ茫然と彼らを見ているだけだった。


「ん?ああ、すまない。あんたらもありがとう。あんたらのお陰で助かったぜ。」


「そ、それは良かったです。それではお大事に。」


 二人の回復魔法使いはそそくさと部屋から出ていく。なんとなく、自分たちが聞いてはいけないような会話をしていると感じたからだ。


「さてと。あれ?そういやあ、マジカはどこ行ったんだ?」


「……知らない。……でも、たぶん、ナンパじゃない?」


「ははは。そうだろうな。なんてたって久しぶりの王都だからな。じゃあ、俺たちだけで行くか!」


「そうだな。少し気が引けるが仕方ない。」


 彼ら3人は今回の襲撃の新犯人を捕まえるために動き出した。


 まだ王都に帰ってきて1日も経っていないというのに。それから、死にかけてから1時間も経っていないというのに。


 できるだけ少ない犠牲で済ませるために。これ以上犠牲を出さないために。


 彼らは動き出す。




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