2. シーズーのキントキ、シロフクロウのミネル
「はゎゎ……かわいい……」
「クゥン? (お姉さん、誰?)」
「あ、私はね、シズクっていうの。よろしくね、子犬さん」
「キャン! (僕、子犬じゃないもん! 立派な大人だもん!)」
「あ、そうなんだ。ごめんね、犬さん」
「ワン、ワフ? (わかってくれればいいんだよ。ってあれ?)」
あ、この犬さん、私とお話できていることにようやく気がついたみたい。
こんなところもかわいいなぁ……。
『無事でなによりじゃ、シーズー』
「ワォン! (あ、シロフクロウ! 助けを呼びに行ってくれたんだね!)」
『シーズー、お前もそこの娘と契約しろ。そこな娘は〝ペットテイマー〟じゃ』
「ワフン!! (本当!? じゃあ、契約する!)」
「え、いいの? 私と契約して」
『その者では大自然の中では生きていけないからな。ペットテイマーに保護してもらってともに助け合って生きていくのが一番じゃろう』
「なるほど。犬さんもそれでいい?」
「ワフワフ! (うんうん! 早く、お名前頂戴!)」
この犬さんも急かしてくるなぁ。
でもお名前かぁ。
白と茶色の毛並み……。
うん、いいのが思いつかない!
私が好きなお菓子の名前にしよう!
「じゃあ、キントキっていうのはどうかな? 私の好きなお菓子の名前で申し訳ないんだけど」
そう告げたら犬さんの体がピカって光ってネックレスもついた!
契約成立だ!
『うん、今日から僕はキントキ! よろしくね、シズクお姉さん!』
「よろしく、キントキ。さて、キントキを助けるときに倒したウルフの解体を始めなくちゃ!」
『かいたい?』
「そう。毛皮を綺麗に剥ぎ取って食べられるお肉と食べられないお肉に分ける作業なの。退屈かもしれないけれどちょっと待っててね」
『それなら僕ができる! 《ディスアセンブル》!』
「え?」
キントキが魔法を唱えたら倒したウルフが輝いて切り分けられたお肉の塊と毛皮になっちゃった!
肉の下には汚れないように、よくわからないけど大きな葉っぱも敷かれているしものすごく楽ちん!
「キントキすごいよ! こんな綺麗に解体できるだなんて!」
『僕、褒められた!』
「あ、あとはカバンの中にこれを詰め込んで……」
『その必要もないよ! 《ストレージ》!』
「え?」
キントキがまた魔法を使ったらお肉や毛皮が黒い穴に吸い込まれて消えちゃった。
これ、ひょっとして伝説の空間収納魔法!?
「キントキ、《ストレージ》ってものを出し入れできる魔法?」
『そうだよ? 生き物はしまえないけれど、僕がいる限りシズクお姉さんは楽ができるよ!』
「うわぁ! すっごい! キントキ、ありがとう!」
『僕、また褒められた!』
キントキって小さいけれど本当に優秀!
こんなすごい子が私と契約していていいのかな!?
『さて、落ち着いたか?』
「あ、ごめんね、ミネル。待たせちゃった?」
『仕方があるまい。とりあえず、〝ペットテイマー〟としての能力を教えたいがのんびり教えていると日が暮れてしまうな。まだ街へは戻らないのか?』
「あ、うん。お肉は手に入ったけど、薬草も手に入れて帰らないと……」
『薬草か。そういえば、この先にある沢の上流に薬草の群生地があったな。荒らされない程度に採取されているとは思っていたがシズクの仕業か』
「ええと……まずかった?」
『荒らされているわけではないので問題ない。あれならば、薬草が育ちきったあと、種が落ち新しい株が生えてくれるからのう』
「よかった。そこに行って薬草も採って帰らなくちゃいけないの。でも、これからだと、閉門ぎりぎりかなぁ……」
『それなら僕に乗っていってよ!』
ここで声をかけてくれたのはキントキ。
気を遣ってくれるのは嬉しいけれど……。
「キントキの大きさじゃ私を乗せられないよ?」
『僕のスキルに〝騎乗〟があるから、乗れるくらい大きくなれるし平気! ちょっと待ってね!』
そう言うとキントキは段々と大きくなっていって……本当に私が乗っても大丈夫な大きさになっちゃった。
キントキって本当にすごい!
『どう? これなら乗れるでしょう?』
「うんうん! 乗ってみてもいい?」
『いいよ! 沢の方向も知っているから乗せていってあげる!』
「よろしくね、キントキ!」
私がキントキに乗るとキントキは勢いよく駆け出してくれた。
そのスピードは本当に速くって、林の木々がビュンビュン通り抜けていってる。
なにこれ、すごく気持ちいい!
キントキも楽しくなってきたのかどんどんスピードを上げていってくれるし、これならもうすぐ沢に……って!?
目の前に枝!?
キントキ、止まって~!?
********************
「……痛かった」
『ごめんなさい、シズクお姉さん……』
『キントキもシズクもはしゃぎ過ぎじゃ』
「反省してます……」
『うん……』
結局、私は林に生えていた木の枝に激突。
そのままキントキからも振り落とされて頭をしたたかに打ち付けちゃった……。
とっても痛い……。
『まあ、反省せよ。さて、ここから先は沢登り。必要な装備は持ち歩いているのか?』
「もっちろん! 毎日のお仕事だからね!」
『そうか。まあ、今日からは必要なくなるがのう』
「え?」
『儂のスキルを使え。《静音飛行》じゃ』
「あ、空を飛べるんだっけ……」
『そういうわけじゃ。キントキは元の大きさに戻り、抱きかかえられながら空を飛ぶといい』
『わかった。シズクお姉さん、よろしくね』
「うん! 《静音飛行》、発動!」
私はキントキを抱えてミネルから借りたスキル、《静音飛行》で空に飛び上がった。
なにこれ、こっちもすごく楽しい!
ものすごく静かに空を飛べる!
普段は1時間近く駆けて行う沢登りも1分で終わっちゃったし、今日も薬草を少しだけ、錬金術師のお姉さんが使う分だけもらって帰ろう。
草木の恵みは荒らしちゃだめだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます