外への冒険 その3

ガキッ!という音のみ。刃は一ミリも食い込まずにそこにあった。

何度か試すも刃どころか機能の攻撃さえ全てを無効化していた。


「ち…なんて硬さだ」

「カタカタカタ!」


相変わらず愉快そうに顎をならしながら突進をしてくる。


「だから効かないっての!」


悠々と交わしながら今度はスキルを使ってみる。


「“動くな”!」

「カタ…!」


突如体が動かなくなったムカデのステータスを見た。


“毒王 百足 Lv,70


HP 23000 MP 10000


身体筋力 12000 身体魔力 400 知識 ー 身体効率 9000


メインスキル 百足の長 Lv,Max 身体効率の大幅バフに加え特異魔法『万能毒』の使用が可能


サブスキル 百足 足音が気付かれにくくなる

      注射牙 歯を使って噛み付くと発動する。自身の得意魔法を歯を経由し相手の体内に入れることができる。

      外骨格 自身の体の周りに固い殻を生成する。ただし足回りは生成されない。”

「なるほど…」


しばらく熟考していると


「カタカタカタカタ!」

「うわっ!」


言論統制の効果が切れた百足が力の限り頭で俺を吹っ飛ばした。

近くにあった岩を二、三個砕き吹っ飛んでいった。


「痛ってぇ…」


かなり痛い。HPは減らないとはいえ、痛覚とケガは発生するから、多分今ので背中にはヒビは入った気がする。

ズキズキと痛む背中をさすりながら立ち上がろうとした時。

下から地鳴りのような音が俺めがけものすごい勢いでくるのが感じ取れた。


「チッ!」


慌てて宙に逃げるも…。


「カタカタ!」

「なっ…」


いつの間にか後ろには勝ちを確信した百足がいた。

絶体絶命。きっと、この状況になって生き残る冒険者はいないだろう。


「“触るな“」


俺が、相手じゃなければ、の話だが。


「全く…痛かったじゃねえか」

「…?」


全く近づけなくなった百足は必死に近づこうとするも、どうしても触れられなくなっていた。

そんな百足を見ながら俺は冷たい目で睨み


「…あの人の娘さん。どこにやった」

「……カタッ」


口元をふっと吊り上げ、百足は一足の靴をこちらに寄越した。


「…“鑑定”」


“残虐な片足 クエストアイテム


この村に住む子供の無残な最期の象徴。この一足の靴の中には殺した者の残虐性が見えるように片足がそのまま残り、そしてその奥には子供の目が一つ突っ込まれている”


「………」


ぐつぐつと。

腹の底から広がり、体全身が煮えくりかえる。太刀を持つ右手はその込めた力によって震えている。

そして、俺の口から飛び出た言葉は負けず劣らずの残虐な言葉だった。


「…“拷問を受けろ”」

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