人形も、人も

「どうなさいましたか?主」

「誰!?なに!?who are you!?」


誰何何故何故!?

混乱に混乱を重ね大パニック状態の中、彼女は淡々と機械のように冷静に


「私は完全自立型魔力機器系統操従人形『美瑠みる』と申します」

「完、全…操従?」


なにやら聞きなれない単語に首をかしげる。


「主に家事全般をこなす二次魔力電池型の家事人形です」

「へ、へぇ…」


異世界だということを加味すると、これはこの世界で言う「メイドロボ」的なもの…なのか?

まあ、とにもかくにも…。


「君は、どこから来たんだい?」

「質問にこたえます。作り主は『ジョイノワール』という方です」

「ジョイ、ノワール?」


初めて聞く名前に首をかしげると


「これ以上は作り主からの制約で話すことはできません」

「そ、そっか」


そう言いながらもう一度全体図を見てみる。

少し小さめの体だが、少し鋭いきりっとした目つきがその容姿を少し大人に見せる。メイド服を着るには少し出るところが出てない気もゲフンゲフン。

ともかく!このロボがなんでここにいるのか。それを探らなければならない。


「君、一体どこから来たの?」

「制約で話すことはできません」

「ジョイノワールさんはどこに住んでるの?」

「……」


その質問に、少しだけ悲しそうな顔をしたから、俺は


「…やっぱ、いいや」


そう言って、とりあえず休ませることにした。すやすやと眠る彼女に向かって俺は


「…“ジョイノワールの元に戻れ”」


代償を乗せていった。

フラフラと立ち上がり、彼女は玄関から出て行った。


「ふぅ…無事戻れたらいいな」


ま、俺のスキルがあれば大丈夫か!そう思うことにして和風の風呂に入りちょっとした豪華な飯を作り俺はベットに横たわった。



「…あれ、ここは」


私が目を覚ました時、なぜか私はある一軒家の前で立ち尽くしていた。


「…家に、帰らなきゃ…」


いや、どこに帰るというのだ。

きっと、私を気味悪がって捨てたに違いない。だから、寝ているところをこうして放られたのだ。

ああ。これまでか。

近くにあった幹にもたれかかり下を向いた。


「…ノワール、様…」

「美瑠?美瑠か!?」


遥か昔、聞きなじんだ声が耳に入った。

…幻聴も聞こえるほど好きなのか。

さあ、もう終わりだ。このまま、ゆっくりと意識が消えるんだ。


「美瑠!お前…なんでこんなとこに…!」


肩をつかまれ、私はやっとわかった。

私の聞いた声は、幻聴じゃなかった。だって、幻聴なんてものじゃ説明できない程にその声は感情があったのだから。

思わず、飛びついた。もう離さないように、強く、確かに抱きしめた。

私の背中に手が伸びた。大きく、安心して、何十年も片思いした手だった。


「…いこう。僕の家に。僕らの家に」



その後、この世界では意識の改革が起こった。

前例無しの人と人形の恋。批判も集まった中、彼らを祝福する声も多数上がり、少しの間人形ブームが来たのだがそれはもう少し後のお話。

この話の元がハイロであるとわかるのは、そのさらに後の話である。

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