ああ、激痛

「本当すげぇな…」


支給された家具やらなんやらを運びながら改めて呟く。

ザ・洋風の家かと思ったが中は案外和洋折衷の家で、和室やリビング。風呂に至っては和風と洋風の二種の風呂が完備。一体どこの貴族なんだってんだ。


「…一回でいいから、こう言うとこに住んでみたかったんだよなぁ」


いつか夢見ていた家にいざ住めるとなると、どうしてもテンションが上がってしまう。


「…あ、そういえば」


宅配魔法で宅配されたものを確認してみる。

中には契約書に書いてあった通りの豪華な食材たちがこれでもかと入っていた。


「こりゃ高そうな…うわっ、これ伊勢海老的なやつじゃないの?」


聞いたことしかない食材。こんなものがあると、逆に不安になってくる。


「よいっしょ、と。えっと、魔力コンセントとやらに繋げばいいのかな」


そう言ってコンセントを探す。

魔力500と書いてあるコンセントに冷蔵庫のプラグを差すと


「…寒っ!何これ!」


冷蔵庫の中から冷気が漏れる漏れる。その時の部屋を形容するなら、まさに南極。

急いでプラグを外そうとするも


「は、なれない…だとぉ!?」


なんと、自身が発した冷気でプラグとコンセントの間が凍り付いていた。

寒い寒い寒い!なんとかしなければ!


「は、“離れろ”!」


バキィン!という音と共に勢いよく外れたプラグは鞭のように俺の股間目掛け飛んできた。

さて、問題だ。魔法の力で勢いよく外されたプラグが男の急所目掛け吹っ飛んできたと仮定しよう。その時、HP減少が0のとき、痛覚に与えられるダメージはいくらでしょうか?

答えは


「……それは、だめ」


眩む視界の中、俺は股間に手を差し伸べる。

一応ついていることを確認して。俺は意識をゆっくりと手放した。



「…うう」

「あ、起きたか!?大丈夫か?」


目が覚めると、そこにはヴァルさんがベットの横にいた。

ふかふかなベットの感触の中、確かに残っている股間の違和感にまた身をよじる。


「ど、どうしたのだ!?どこか悪いのか!?」

「い、いや…別に…」


まさか冷蔵庫をコンセントに刺したら謎の減少で凍り付き、それを外したところ、飛んできたプラグに股間を撃たれた、なんて間抜けなことを知られてしまえば…。

一気に笑いものになるのが怖く、咄嗟に


「な、なんでもないので!す、すいませんでした!」


と謝罪を繰り返しながら玄関に無理やり連れて行った。


「ちょ、何するんだ!」

「い、いいから!本当、もういいので!」


何度も疑問をぶつけるヴァルさんをなんとか家から帰らせ、そのまま玄関のドアにもたれかかり、また違和感の残る股間に手を伸ばす。


「…うう…」


恥ずかしさに身をよじらせながら俺はもう一度家具の整頓を再開した。



説明書を初めてじっくり読んだ。

どうやら、500と書かれたコンセントに刺したのがいけなかったらしい。

この冷蔵庫の適量魔力は250であり、つまり俺は冷蔵庫の機能を二倍…どころの騒ぎではない力で使用してしまっていたらしい。


「怖っ…てかなんでこんな細々と書くんだ!」


と思うが、思えばここは異世界。ここにはここの常識があるんだと思ったらそんなことを考えるのが馬鹿らしくなった。


「…とりあえず、これで魔力機器の扱いは万全だな」


二度と間違えないことを誓いながら食材を冷蔵庫に詰めた。

…腹が減ったな。

そう思い、適当に食材を取り出し


「“うまいもんになれ”。なんてな」


なんてシャレの効きまくったジョークを一人寂しく呟いた。


「用でしょうか。主」


そう。メイドのいる空間で。


「ああ、これでなんか作っとい、て?」

「かしこまりました」


「いや誰ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」

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