転生
「HP1でどうしろってんだぁ!カスったら死!わかる!?ちょっと攻撃食らっただけで…」
ヒュッと矢が頬のすれすれを通った。
恐る恐る後ろを振り返った。
そこには、数十頭のゴブリンが武装して立っていた。
「死ぬんだって…」
無情にも、その声と共に、鬼ごっこ狩りが始まった。
「うわあああああ!やめろ!本当にやめてくれぁ!マジで当たらないでくれぇ!」
次々と放たれる矢をすべて間一髪でよける。
無理無理!もう本当に無理だって!と何度考えただろう。そろそろ足が棒のようになってきた。足も徐々にもつれるようになりついに木の根っこに躓いて転んでしまった。
「いでっ!あ…」
後ろを振り返ると、ゴブリンが今夜の夕飯を見つけたといわんばかりに小型ナイフで解体しようとしてきた。
「あ…あ…も、もう…」
極限状態の俺は、この危機的状況にこの蜘蛛の糸ほどしかない頼みの綱に任せるほかなかった。
「もう!あ~あ!強いスキルとやらでこいつら全員“倒れねえかな”!!?」
直後。一人のゴブリンが「ウッ!」と苦しみ、倒れた。それが連鎖するようにゴブリンが次々と倒れ始めた。
急なその展開に、俺はただ茫然と見てることしか出来なかった。
そしてすべてのゴブリンが倒れた後、膠着していた口から出た言葉は
「…えぇ…」
と、絶句の一言であった。
「いや…確かに倒れろとは言ったけど…そんな一気に倒れられても…」
あまりの出来事に混乱した俺は、本当に死んでるのかを確認してみた。
そこら辺にあった長めの木の棒で強めにつついてみた。しかし反応はなかった。
「…なんで死んだんだろ…」
そう考えた瞬間。目の前に“ヘルプ→事象の説明→スキル説明”と書かれたウィンドウのようなものが出てきた。
「うわっ!びっくりした!」
急に出てきたそれに書いていたものは
“スキル“言論統制”によるものです。
言論統制 放った言葉に代償を乗せることで言ったことを現実にしたり事象を操ったりすることが可能。代償は言葉の強さ、具現化の難易度によって変動します。”
というものだった。
どうやら、この世界に来るにあたって与えられた“強いスキル”とやらの説明らしい。ていうか…
「それ強すぎじゃね!?」
だって、変な話黙れって言ったら黙って消えろって言ったら消えるんだろ?
チートすぎじゃないか…。
「あ、自分のステータス的なものってどう見るんだろ…」
ヘルプと書かれたものには
“ステータスについて
ステータスの閲覧は基本できません。しかし、閲覧系、または鑑定系のスキルを使用することで閲覧できます。この世界ではステータス閲覧用の消費アイテムを使い閲覧します。”
「じゃあ自分じゃ見れないのかな~」
そこでふと、自分のスキルについて思い出す。
“言ったことを現実にできる”
「…あれ?俺見れるんじゃね?」
…とりあえず、物は試しだ!
「えっと…“ステータスを見る”!」
すると、目の前にステータスが出てきた。
「えっと、何々…?」
“スズムラ ハイロ Lv,1
HP 1 MP 20
身体力量 40 身体魔力 100 知識 90 身体効率 40
メインスキル 言論統制 Lv,Max 放った言葉に代償を乗せることで言ったことを現実にしたり事象を操ったりすることが可能。代償は言葉の強さ、具現化の難易度によって変動します。
サブスキル 自決阻止 HPが1の時、代償を払う時に発動する。HPを払う代わりにMPを払う。それでも尚足りない場合、代償の支払いを中断する
抑制 使用MPが軽減される。
臨時鑑定 発動で鑑定したいもの、ステータスのおおよそを確認できる。
富豪の懐 アイテムをほぼ無限に保持できる。
バッドスキル 創造主の縛り HPが1で固定される”
「あ~!これか!」
最後に書いてあったスキルを見て、HPを1にしている要因が分かった。
「こうみるとサブスキルも中々強いなぁ~」
使用MPの軽減に鑑定スキル。さらには自滅を阻止するためのリミッターのようなスキルまであった。
「…で。どうしようか」
この世界のことは全くわからない。これからどうすればいいか。これから目指すものは何かが何もわからなった。
ここが現実世界と大差ない世界なら、まず目指す場所。
というより、今から瞬間移動するべき場所は…
「…街、だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます