5歳
1
「にぃに、今日はクッキー作ったよ」
詩音はクッキーの入った小袋を僕にくれた。透明な包みを赤いリボンでとじた可愛らしいものだ。
母と一緒に作ったのかと思ったら、どうやら幼稚園でクッキー作りの食育活動があり、作ってきたのだそうだ。
ハートの形をしたもの、丸いものや星形のものなど、様々な形のものがある。幼稚園児のお手製の物なので作りが雑なのは否めないが、愛する詩音が僕のために作ってくれたものだと考えれば、そんなことは些細な問題である。
2
「ねぇ、今日はにぃにと一緒に寝ていい?」
ある梅雨の日の夜、枕を抱えて詩音が僕のところへやってきた。
父と母はダメと言いたげな顔をしていたが、結局折れて、詩音は僕のところで寝ることになった。
柔らかそうなほっぺ、美しい黒髪。
寝息を立てる詩音は本当に可愛らしい。
手を出せないのは拷問に近いぞ……
「……にぃに」
詩音が寝言で僕を呼ぶ。その切ない響きに、僕は我に返った。
ああ、何を考えているんだ僕は。
詩音の寝顔を見守りながら、僕はしんみりした雨の音に耳を傾けた。
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