ある日、いきなり銀髪の可愛い神様から告白された話。

ゆみまる

第1話 出会い

目の前には、柔らかそうにふわふわと風に揺れている銀髪の長い髪。

俺を見つめてくるのは、透けるように綺麗な黄金色の瞳。それが眠そうに見えるのは、大きな瞳に少しだけ瞼が下がっているからかもしれない。


「好き。」


凛とした雰囲気を纏ったその少女は、澄んだ声ではっきりと告げた。

少女は、背後にした池の輝きにも増してキラキラと眩しいほどに光る。


きっと、ヒトでなはい……。


そう直感するが、まるで金縛りにあったかのように動けずにいた。


「どこにも行かないで。」


続けて言われた言葉でやっと我に帰る。

えっと……と一瞬言葉を探して。


「とりあえず、君……。だれ?」


彼女にそう問いながら、俺はなぜこんな状況になったのか、記憶を辿ることにした。



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まだ小さな子どもだった頃からお気に入りの場所である近所の神社は、いつもキラキラと輝いていて、心落ち着く場所だった。

大学受験が終わり、無事希望していた隣県の大学に合格が決まったところで、晴れ晴れした気持ちのままいつもの場所へとやってきた訳であった。


特に境内の池はいつも綺麗に光っているので、柵の外側から眺めるその景色はかなりの絶景。


無事受かった訳だし、やっとこの町からも出られるってことか。この景色も見納めだな……。


なんてしばらくぼーっと景色を眺めた後。

お世話になりました、と、心の中で呟いて、帰ろうと池に背を向けて数歩歩いたその時、視界の端からやけに明るい光が見えた。


なんだ?と思って振り向くと、ついさっきまで自分がいた場所に1人の少女が立っていた。神々しいまでの光を纏って。


「好き。」


人間離れした美貌の少女に目を奪われていたが、それでも俺は少女の異質さに気づいていた。


きっと、ヒトではない……。


「どこにも行かないで。」


とにかく訳が分からないことが多すぎて、まずは正体を尋ねてみることにした。


「えっと……。とりあえず、君……。だれ?」


なんだ?どう言う答えが来る??


「わたし、この町の神さま。」


………。

そんなバカな(笑)

予想の斜め上の答えが帰ってきてしばし沈黙。


神様?こんな女の子が?


それでも妙に納得する俺もいた。

どうりで眩しいわけだ。


「カナデには、分かるはず。」


納得したことを見透かされたように言われると言葉に詰まる。


……というか。


「え、なんで名前知ってる……んですか。」


「わたし、この町のことは何でも分かる。神さまだから。」


「あ、そっか……ん??そうか??」


信じられない気持ちと納得しそうな気持ちで戦う俺。

そんな俺を知ってか知らずか、追い打ちをかけるように少女は話を続ける。


「カナデのことも何でも知ってる。

この町の大地主である榊原家の次男。

視える力があるってことも、知ってる。」


視える力。


そう断言されて、心臓が激しく動き出すのを感じだ。


そう、俺は幼い時から他の人には見えないモノが見える体質だった。

ただ、俗に言う幽霊だったり、妖怪だったり、そんなものが見えるわけではない。


例えば。

誰かが心を込めて大切に育てた草花の周りはキラキラと光り輝く。

誰かが悪意を持ってやったイジメの痕跡には黒いもやがかかる。

良い気、悪い気 が視覚で認知できるという、ただそれだけのことなんだが。


そして目の前のこの少女は、出会った時から眩しいくらいに周りをキラキラさせている。

今まで人に光を感じだことはないからこそ、少女への違和感は強い。


悪いものではない事は明らかなのだが、それが神様に結びつくのか?

まだ信じられない。


というか、神様ってなんだ?


混乱に混乱を重ねていると、腹部に軽い衝撃。そしてほんのりと良い香り、温もり。


「とにかく、カナデは遠くに行ったらダメ。

わたしの近くにいないとダメ。」


えっと……。

俺、神様(仮)に抱きつかれちゃってる?!


慌てまくって少女を見下ろすと、


「まぶしっっっ!!!!」


到底目を開けられたものではなかった。

これはちょっと光りすぎではないだろうか。


苦しんでる俺をみて彼女は、はっとした後、すぐに離れて、申し訳なさそうに俯いてモジモジした。


「あっ。あの、つい。ごめんなさい。」


しゅんとした彼女からはもう光は消えていた。


「眩しかったよね。もう大丈夫。」


「えっ!それってコントロールできるものだったの?!」


「うん。神さまだから。」


そう言うと、彼女はくすりと小さく笑った。


ドキリとさっきとは違う意味で心臓が動き出す。それを誤魔化すように早口で聞いた。


「あの、なんで君の近くにいなくちゃいけないんでしょうか?」


「好きだから。」


当然のことのように即答されてしまった。ドヤ顔付きで。


あれ、そういえば俺、告白されてた??


「好き。」


最初に戻ったかと錯覚するかのように、彼女はまた黄金色の瞳を輝かせ、俺を見つめる。


最初と違うのは、俺の混乱が多少収まっていて、彼女の纏う光も無くなっていて、彼女をよく見ることができる事だった。


それが余計俺の心臓を暴れさせた。


………めっちゃ可愛い!!!


誰からも、家族からも求められることはないと思っていた俺。もちろん彼女なんかできた事はない。

こんなに真っ直ぐに好きと言われると、それだけでこっちも好きになりそう。

何よりめちゃくちゃ可愛いし。


鼻息荒くしている自覚はあるが止められない、どうしよう。と焦っていると、彼女の愛らしい声が、あとね、と続けた。


「カナデがいなくなったら、この町、大変なことが起きるよ。」


え?


好きだとかそんな浮かれた気持ちは一瞬にして消え失せた。

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