Replay
時を経て僕の元へReplayしたお人形ちゃん。
「エムちゃん」と呼びます。
程なくしてエムちゃんとお付き合いするようになりました。
社会人になって稼げるようになっていた頃でもあり、都内の対面ステーキ屋さんへ奮発してデートに行ったり、ショッピングに出かけたり、海岸に沿った通りへ連れ出して防波堤に打ち寄せる波の飛沫を浴びたりと、楽しい日々が数ヶ月か経った頃。
誘っても都合が悪いとかで断られることが多くなってきました。
家に行くよ、と言っても今日はダメとか何とか。
でも会いたいし、とにかく少しでも顔を見たいなとある日、アポなしで家に行くと、、、
彼女の家の前にヴェスパが停まっていたのです。
そう、ピーちゃんの愛車。
ものすごい混乱に見舞われて、状況をまとめようとする。
僕との都合は断ってピーちゃんが家にいる?
ピーちゃんとできてるの?
二股?
よりによって僕の親友と?
答えが出るはずもない、真実を知る由もない。
とにかく家に帰ることにしました。
さんざん考え、迷った挙句、電話することに。
そこにピーちゃんがいることもわかってる。
「もしもし、俺だけど。」
「うん。」
「今日は遊べないって言ったよね。」
「うん。」
「ピーちゃんと会うからか?」
「えっ?、いや、その…」
「そこにいるのはわかってる。一体どういうこと?どっちが大事なの?」
しばらくの沈黙の後、
「今は答えられない…」
「・・・それが答えなんだね。わかった、もういい。」
電話を切った。
うん、ピーちゃんも惚れてしまったんだな。
仕方ないよ。かわいい子だもん。
僕の親友が好きになってしまったんだ。
エムちゃんも嫌ではないみたいだし。
そう、僕が身を引けばいいんだ。
誰も、何も、傷つかなくていい。
ただ一人消えればイイ。
彼女と親友を同時に失くした瞬間でした。
それ以来、二人とは会うことも連絡が来ることもなかった。
いつも通り日常は続き、毎日満員電車に揺られ仕事をこなす日々。
特にトキメキもない平凡な日常を送っていました。
あれから一年近く経った年末の霧雨煙る静かな夜。
仕事帰りにポータブルプレイヤーでトップガンを聞きながら街を歩いていると、すれ違いざまに「久しぶり」と声をかけられました。
エムちゃんでした。
久々に会ったその風貌は更に美しく大人びていて、胸の高鳴りが止まらず、やっとの思いで口を開きました。
「お…おう、久しぶり。元気か?」
「あの…、本当にごめんなさい、あの時は気が動転していて…。本心を言えなかったんです。」
「どういうこと?ピーちゃんと付き合ってるんだろ?」
「いや、あの後すぐに別れました。いや、ちゃんと付き合っていたわけでもないけど…。とにかくあの時はピーちゃんを傷つけたくない気持ちが先になっちゃってて…。私は今でもあなたのことが好きなんです!」
・・・
そーんなうまい話に乗っちゃう奴なんている訳ねーだろ!
ってすぐ乗っちゃったオイラw
いや、本当に好きだったんだもん。
未練タラタラだったもん。
ただ一人消えればイイなんてカッコつけてたけど、本当は悲しかったんだもん。
抱きしめたいと心の底から思ったわけです。
歌います。
「抱きしめたい」
いや、聴いてくださいw
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