Innocent World

 サンキュー!ありがとう!盛大な拍手をありがとう!!

 イノセントワールドでした!




 改めまして。レイモンドです。みんな本当に今日は来てくれてありがとう!

 僕のことを知ってる人も知らない人も、ミスチルが好きな人もそうでない人も、楽しんでいってもらえるよう努力しますので、どうぞ最後までお付き合いいただけたら大変嬉しく思います!



 今日のこのライブは、僕の大好きなミスターチルドレンの楽曲と共に、僕の半生に起こった出来事、主に恋愛体験を中心に歌を通して表現できればと企画しました。

 構想3年、コロナで2年延びて、実に5年越しの実現となりました。




 さて、オープニングで歌ったイノセントワールドのイノセントとは、日本語で「無垢な」とか「純粋な」という意味で。

 僕がまだイノセントだった中学生の頃。友達と遊ぶ事がこの上なく楽しかった時代。

 中学に入って間もなくピーちゃんという友達と出会い、意気投合して、それからというもの毎日のように遊ぶ仲になり。


 その頃考え出した遊びの中にプンプンレースというものがありまして、それは何かというと、三輪車で坂道を下りながらレースをするというくだらないもの。ブンブーン!とバイクレースの様な迫力もスピードもないし、プンプン程度がいいとこじゃね?ということでプンプンレースと名付けました。


 住宅街の狭い坂道のコーナーへ惰性に任せてスピードを上げ、靴の底をアスファルトに切りつけながら減速しつつ体重移動と共に駆け抜け、悲鳴を上げて滑り出すタイヤにカウンターステアリングを当てて制御する。

 ある者は制御できず壁へ激突。ビビッてブレーキを早めたものは先頭グループから脱落。勇気とテクニックを持って一番にフィニッシュラインを駆け抜けた者が勝利する。そんなスリルと競り合いに夢中で遊んでいました。




 ある日、いつものようにプンプンレースをしていると雨が降り始めたのでお開きにすることに。

 友達と別れ、小雨降る中、自宅マンションの階段へ足をかけようとしたところ、後ろから「先輩!」と声が聞こえました。振り向くと「キャッ」と言って物陰に隠れてこちらを見ている二人組の女の子が。

 一人はフランス人形のようなハーフっぽい容姿、それでいてとても素朴な可愛らしい女の子。


 お人形ちゃん。


 もう一人はずんぐりむっくりの体にそばかす、メガネ、だみ声。絵に描いたように残念な女子。


 ザンコちゃんと名付けましょう。



 まぁ冷やかしかなと思いながらも、それまでにも家の周りで見かけるグループの子達だとわかったので、無視するのもなんだからと軽く手を振ると、「キャー」と言いながら走り去って行きました。

 なんじゃいあれはと思いながら部屋に入り、自分一人のお楽しみの時間、レコードを聴くことに。


 当時好きだったのが、映画トップガンのサウンドトラック。デンジャーゾーンというテーマソングのみならず、バラードのテイク・マイ・ブレス・アウェイ、トップガン・アンセムなど名曲揃いです。

 映画トップガンは自分の中の好きな映画ランキング1位に君臨しているのですが、ついに公開された続編「トップガン・マーヴェリック」は、並んでマイランキング、ワンツーを占めてしまいましたw



 しばらくそんな一人の時間を楽しんでいると、家のドアホンが鳴りました。

 玄関のドアを開けると、さっき僕のことを後ろから呼んだ女の子の一人が立っていました。






 ザンコちゃんだ。





 だみ声で、


「あの…、先輩、私、隣の中学のものなんですけど、交換日記してください!」


 と言ってノートを渡そうとする。

 交換日記なんて、そんな時代だった訳だが、したことも無ければ女に興味もなかったイノセントな年頃。

 しかもザンコちゃんと来ては…。



「ことわる」



 そんな言い方はしなかったかもしれないけど、クライアントからの依頼を断るゴルゴ13が如く、眉間にシワを寄せながら断ったものでした。



 それ以来その子達とは、ちょこちょこ顔を合わせると話をしたりして距離は縮まったのですが、特に何がある訳でもなく、高校へ上がる頃には音沙汰もなくなっていました。




 高校はピーちゃんとは違う学校に通うことになるも、それでもいつも一緒に遊んでいました。

 イタリアのヴェスパというスクーターを愛用するお洒落な奴で、ファッション面でもお互い高め合っていたものです。

 一年間アメリカへ留学した時も絶え間なく手紙でやり取りをして。

 日本へ戻ってからも会わない時間などなかったかのように変わらず楽しい時を共に過ごしていました。


 高校時代にというものを知ったのですが、ピーちゃんはまだ済ませていないようで、そのことは言い出せずにいました。

 程なく、ピーちゃんの家へ泊りに行った時に最近初体験をしたと聞き、実は僕もなんだと、朝までその話題で語り明かしたものでした。


 毎年恒例の、夏と冬の旅行も、いつもピーちゃんが一緒で。

 卒業して社会に出てからもその仲は変わらず続いていました。




 高校を卒業してからは都内の広告代理店への就職が決まり、社会人生活を送っていたある夏の日。

 仕事を終えて家に帰ってトップガンを聞いていると、-この頃にはレコードではなくCDでしたが。- 家のドアホンが鳴りました。

 スマホが普及した今では突然の来訪者には慌ててしまう感もありますが、この頃は直接友人宅に訪問する事も当たり前だったなと思い返します。




 ドアを開けるとそこに立っていたのは…、中学の時に声をかけられたもう一人の方、お人形ちゃんでした。




 小麦色に焼けた肌、茶色く染めた長い巻き髪、小悪魔のように特徴ある八重歯、あの頃の素朴な面影をほんのり残しながらも、その美しさには磨きがかかった、魅力溢れる女性に変貌していたのです。



「先輩、お久しぶりです。あれから長いこと会ってなかったですが、ずっと気になっていて、一大決心で伺っちゃいました。」



 もうね、そんな嬉しいこと言われる前に僕の方から一目惚れでした。

 幸せな再会でした。




 ここで一曲聴いてください。



「Replay」



 そう、聴いてくださいw



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る