第三話 神種型レヴィ
戦勝国へと導いたシュバルツッヒや
当時、帝国が勃興する様子を受けた国民の間では、アルツフォネアの血統こそが崇高な存在という優生思想が生まれており、シュバルツッヒはこれを自身の思惑に活かした。
帝国の血が流れる者を「指定上級国民」とし、旧ノーフカロタの血が流れる者を「特例国民」とし差別化するこの法は、シュバルツッヒの狙い通り優生思想が強まっていた当時の帝国内で反対の意思を示す者はいなかった。
シュバルツッヒは戦時特国民保護法を通すと、次なる政策を打つ。
表向きでは、
当然、
特に情報操作の面でシュバルツッヒは「この開発は将来、帝国人の血を流すことなく軍事活動を遂行する事を可能にする」と政策で得られる幻想的な結末を繰り返し発言した。
祖国を無くした彼らにもはや選択の余地など残されていなかったのだ。
特例国民の強制送還が完了すると、シュバルツッヒはさっそく非人道的な人体実験を繰り返した。
宇宙聖遺物の
しかしながら徹底した隠蔽工作により、国民は帝国の抱える黒い歴史を今日まで知ることは無い。
こうした経緯から変事戦線地区は帝国軍人の間でいつしか「帝国の屑箱」と呼ばれるようになった。
宇宙聖遺物の
が、それと引き換えに爆発的な身体能力の向上を得られるというものだ。
帝国の謳う人型戦闘兵器「
それは
故に
そう定義したのであった。
シュバルツッヒは
しばらくしてこの世を去った。
現代になっても
加えて、現在の安全区域で日常が送れる残された時間も国民は知らないのだ。
『N《ノトス》・リーダーよりジャッジメンター。第六区防衛戦線に未確認の
「
『N《ノトス》・リーダーよりN小隊各位。
『N《ノトス 》2よりNリーダー。撤退したら、第六戦線はどうなるの』
『N《ノトス 》・リーダーより。ジャッジメンター命令だ』
『クッ……。了解』
五年前――
公歴五十七年。
竜のような頭をもった四足歩行の獣は、通常種であれば銀色の鱗に身を纏っている。
首が細長く、竜の頭を持ち、胴には神の相好をした石像が埋められており、その禍々しくも神の遣いのような風貌から神種型と呼ばれるようになった神種型は元来、激戦区である西部第一防衛戦線の要、各防衛戦線からかき集められた精鋭が集うF《フィアス》小隊で一度確認されたのみだ。
――リーダー危ない!!!
ミストリアの耳を刺すように流れ込んできたN《ノトス》小隊員の通信。
戦場は、一瞬の誤ちが致命的な損害へと繋がる。
ミストリアのその温厚で優しい性格は
判断を誤って当然の会敵であった。
指令室モニターに赤点で表示されている隊員達の表示が一つ、また一つと消えていく。
『N《ノトス 》3よりN小隊各位。俺が囮になる!
『N《ノトス》4より3! カント《スリー》君!』
『N《ノトス》・リーダーよりジャッジメンター。これより指揮権を委譲して下さい』
「ジャッジメンターより……。N《ノトス》……小隊各位。ごめん……なさい。わたしの……せいで……」
『N《ノトス》・リーダーよりジャッジメンター。
所詮は貴方も平和ボケした
《交信終了》
誤った判断を下し、命削戦隊の隊員達が死んでいく様子を、ミストリアは遥か離れたこの指令室からモニター越しに見守ることしか出来なかった。
大きな目頭に涙を浮かべ震えるミストリアに、追い打ちをかけるような声をかけた
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