第一部エピローグ 第二部プロローグ
暗澹たる安穏
清潔な白い建物の内側でじゅくじゅくと闇が蠢く音がする。
人目の届かぬ暗がりの中、血肉を貪るような悪辣な音がする。
邪悪はそれを隠そうともしなかった。
なぜなら人々は邪悪に目を留めず、安穏たる日々を消化していたからだ。
やがて骨まで蝕むような闇の中にクスクスと嗤い声が響いた。
「卜部。僕のともだち。贈り物は気に入ってくれたかな……」
邪悪で見惚れるほど美しく、吐き気を催すほどに醜い笑顔を浮かべて男は独りごちた。
コン……コン……
「どうぞ」
ノックの音で男は部屋に明かりを灯すと、客人を招き入れた。
「優子さんですね。どうぞおかけになって」
促されるままに優子と呼ばれた女性は丸椅子に腰掛けた。
「さっそくですがどのような問題が?」
男はにっこりと微笑んだ。
「その……色んな人の頼みを断れなくて……あっ……私は別に困ってないんですけど……友人が一度カウンセリングを受けた方が良いっていうもので……」
優子は照れたように笑って首を傾げ、髪を触る。
「なるほど……お友だちは優子さんのことが大好きなんですね。優子さんのことが心配なんだ」
男は再び笑いかける。
優子はまたしても困ったような笑顔を浮かべて首を傾げた。
「ですが……優子さんが皆に優しいのは良いことですよ。今みたいに笑顔でいると幸せの方から優子さんに近付いてくると僕は思うなぁ」
男も困ったような笑顔を浮かべて首を傾げて見せた。
優子は思わぬ言葉に少々驚きの表情を浮かべたあと、三度ほど首を縦に振った。
「その笑顔をぜひ、たくさんの人に向けてあげてください。笑顔をもらった人も幸せな気持ちになるでしょう」
「はい……」
優子が頷くと、男はカルテに美しい字でさらさらと何かを書き込んで棚にしまった。
「困ったことがあれば、いつでも相談にいらしてください」
優子は丁寧に頭を下げて部屋を出ていった。
男は邪悪な笑みを浮かべて優子の出ていったあとの扉に手を振った。
男はデスクに伏せられた写真立てを手にとって愛おしそうに眺めて人差し指を這わせる。
「また贈り物が見つかったよ。卜部……」
邪祓師の腹痛さん 第一部 完
第二部へと続く
Down into the next darkness.
To be continue.
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https://kakuyomu.jp/works/16817330654971285008
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ここまで読んでくださり誠にありがとうございます。
読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
卜部とかなめは、これからもまだまだ闇の奥へと歩みを進めていきます。
二人の過酷な旅路をどうかこれからも見守り、応援してあげてください。
上記のリンクから第二部へと飛べるようになっております。
是非、続けてフォローのほどよろしくお願いします!!
皆様の温かいコメントと応援が力強く作者の背中を押す励みとなっております。
394 my dear friends!!!!!
Please continue to read!!!!!
深い深い感謝と親愛の情を込めて。
深川我無
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