ケース2 プール⑳
反町ミサキは半狂乱でプールへと向かって走っていた。
しかし突然何かに足を取られて勢いよく転んでしまった。
見るとそこには血に塗れた赤ん坊達が縋り憑いていた。
「い。嫌ぁ……赦して……ごめんなさい……ごめんなさい……」
懇願するように泣きながらつぶやいても、赤ん坊達が止まることは無かった。
あ゛ぁ〜ん あ゛ぁ〜んと甘えたように泣きながら、おぞましい異形のモノが足を這い上がってくるのが見えた。
それはまるで母の乳房を求めて哀願し泣きじゃくる赤ん坊の姿だった。しかし反町ミサキの目には異形の化け物にしか映らない。
「来るなぁああああああ!!」
ミサキは怒声を上げて異形を蹴り飛ばした。
それを合図に赤ん坊達は火が付いたように大声で泣き叫んでミサキによじ登ぼってくる。
ミサキは恐怖で目を瞑った。
ぐっちゃ……
不吉な打撃音が聞こえて目を開くと、そこには金属バットを持った榛原大吾の姿があった。
「だ、大吾くん」
「どうすればいい?」
「え?」
「どうすればいいって聞いてんだよぉおおおお!!」
男はバットで地面を殴りながら喚き散らした。
「プ、プールでお祓いしてくれる人が待ってる……」
「ついて来い……」
男はミサキの手を掴んで立ち上がらせるとプールに向かって進んでいった。
プールに近づくにつれ館内を満たす湿度が高まっていくように思われた。
塩素の臭いに混じって独特の生臭さが鼻を突く。
二人は無言のまま進み、とうとうプールへと続く扉の前にたどり着いた。
男はハァハァと粗い息を吐き出しながらバット構えると、開けろと冷たくつぶやく。
ミサキは内心恐ろしくてたまらなかったが、凶器を構えた男のことも同様に恐ろしかったため、しかたなく扉に手をかけてゆっくりと押し開けた。
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