嫌われた魔眼持ち、辺境伯になって見返す

@katuniro

第1話辺境な領土へ追放




自然に出来た港で、船長のロベルトは俺の手を握って別れを惜しんだ。


「王子、あ!もう王子で無くなったんだな、シン・ローラン辺境伯。俺ら信じているぜ、あんたは良い奴だってことを・・・」


小型ボートに乗り込み、沖合いの魔導船へ帰ってゆく姿を、俺は見送っていた。


「シン様、屋敷に行きましょう」


「セバス、分かっている」


俺のお供は、セバスを入れても7人だけだった。

6人は平民上がりで昔からの俺の配下だった。

セバスは、俺の身の回りから教育まで何でもしてくれる頼もしい人だ。

そして俺は、自分自身の領土に足を踏み入った。




俺は今年で15歳になり、大人の儀式でもある鑑定の儀式を受けた。

結果は錬金術を、女神から授かったことになっていた。



しかし実際は違っていたが、俺は訂正しなかった。

錬金術は普通な恩恵であったが、皇族には相応しくなかった。

そして、それが理由で役に立たない辺境な領土の辺境伯に任命された。

しかし実質的には、追放の身と言ってもよかった。


それに、俺は皇帝が憎かった。ガーデン帝国そのものが嫌いだった。

いつも公の場で、俺の上の兄ライ・ガーデンから嫌がらせやののしりがたえなかった。

母が違い、その母親も俺の母親を嫌っていた。



よく言われたのが「赤眼、黒眼」だ。

俺の右の瞳は赤で、左の瞳が黒だったせいだ。

ガーデン帝国は、青か緑が主流で、俺の眼は好奇に見られていた。

黒は呪われた色として、特に嫌われていた。


それに、俺をいじめても誰にも怒られないのが原因。

そのせいで、物心つく頃からいじめが続いて、この帝国から出ることしか考えなくなった。



俺の母は、美人で皇帝のお気に入りの側室だった。

しかし、俺を生んですぐに死んでしまった。


皇帝は、俺が母を殺したと憎んでいるに違いない。


そのせいで皇帝は、俺に1度も会うこともなく、宰相らの勧めでこの辺境な領土へ追いやられた。

そしてシン・ガーデンから名を変えられて、皇族順位からも外されてここに居る。



「なんだセバス、これが屋敷か?」


「そうですね、少し時間は掛かりますが手直ししましょう」


俺が住んでいた屋敷も自慢出来ないが、ここは更にひどかった。


セバスが用意したベッドに倒れこむと、「ピキッ」と音がした。

しかし船旅の疲れでしだいに眠気が襲い寝てしまった。




窓から朝日が差込んできた。


「シン様、服を着たまま寝られたのですか?」


何時の間に、寝てしまったのだろう。


「そうだな、しかし誰も咎めないからいいだろ」


「それはいけません」


「セバスは、考えが古いよ。それにここには忌々しい監視者も居ない。だから俺は自由なんだ」


「それでも領主としての勤めがあります。兵を集めました。服を着替えて挨拶をお願いします」


セバスも一生懸命なのだ。ここはセバスの言う通りに行動しておこう。




兵の服装も揃っていない。

隊列も無く、ただ集まった集団だ。


事前に調べた通りで、ここは兵にとっては吹き溜まりでしかない。

そして、帝国から追放された民が住む領土だった。

開拓の見込みも無い領土で、呪われた領土と言われている。

ここは帝国の東端で、山脈によって帝国から切り離された、陸の孤島とも言われている。


1年前までは、洞窟で繋がっていたらしい。

しかし、落盤によって洞窟が塞がって、今では船でしか往来が出来なくなった。



「俺が領主のシン・ローランだ。お前らも思うことが多いだろうが、我慢して従ってくれ。今日は1人1人の面談をする」


兵士らは、突然の面談にざわつきだした。


「そこのお前からだ。名前は」


「カイ・ヘイモンドです」


俺は、カイ・ヘイモンドを見ていた。


カイ・ヘイモンド


HP10

MP15


STR3   VIT3

DEF3   INT3★

DEX3★  AGI3★


魔法

風魔法




「カイ、鑑定は受けたか?」


「受けてませんが?」


「カイは、風魔法が使えるから、明日から風魔法の練習をしろ。INTとDEXとAGIに才能が有るから更に伸びるぞ」


「それは、本当ですか? 俺に風魔法があるなんて信じられない」


ここの兵士達は、鑑定の儀式の金も用意出来なかったのだろう。

農村なのでは、鑑定の儀式すら行なわれないのが常識になっている。

鑑定師の数が少ないのが原因で、鑑定師はそれなりの金を要求する事が当り前になっていた。

鑑定師にもランクがあって、高いランクの鑑定士は貴族専用。

ランクの低い鑑定士は、街で金を受取って鑑定を生業にしていた。




兵士達が騒ぎだした。ただで鑑定をしてくれるからだ。

その結果しだいで、人生が変わるかも知れないからだ。



俺の本当の恩恵は【魔眼】だ。

この世の真実を見分けることが出来る能力。

錬金術は、魔眼の触りの能力でしかなく、鑑定では魔眼が鑑定出来なかった。

しかし、鑑定で錬金術の能力に反応して、鑑定結果が錬金術に成った。

それ以外にも、鑑定や死のことわりを知りえる死霊術も使える。

10分以内なら、死者蘇生も出来る能力だった。

それと、魔力やマナもこの【魔眼】で視える。



※★は、才能のバロメーターで、★1つで才能有り、★★2つで天才、★★★3つで神がかりな才能

 高いランクの鑑定士でないと★の数も見えない。

 低い鑑定士が出来るのは、名とHP・MPと魔法やスキルぐらいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る