暴君カノジョにフラれたショックで激痩せしたら、薔薇色の大学生活がやってきた!〜彼女達は俺に染まって、俺もやがて染められて……もう元カノがどうなろうと知ったことじゃない〜
第1話 俺の高校3年間は無駄となった……
暴君カノジョにフラれたショックで激痩せしたら、薔薇色の大学生活がやってきた!〜彼女達は俺に染まって、俺もやがて染められて……もう元カノがどうなろうと知ったことじゃない〜
シトラス=ライス
★共通編★
第1話 俺の高校3年間は無駄となった……
「別れよう? てか、別れて武雄くん!」
「えっ……? な、なんで急に……!?」
「君のこと好きじゃなくなっちゃったから! ごめんねー」
「っ……!」
ショックのあまり、俺は拳を団子のように握り締めた。
そんな俺を見て、カノジョの「黒井姫子」はケラケラと笑い出す。
「ガチでウケる! なに世界の終わりみたいな顔しているわけ? あはは!」
「黒井さんっ……!」
「おっと! もうそれ以上近づかないでね! よりを戻す気はないから! もう私、彼氏いるし!」
「う、嘘でしょ!?」
「ホントだよー。まぁ、ストーカーになっても良いけどさ、私の彼氏怖いよ? 痛いの嫌だったら大人しくしてた方が良いよ?」
「……」
「それじゃあね、
ーーこうして一方的に別れを告げられ、俺「染谷武雄」と「黒井姫子」との高校3年間を費やした交際は、あっさりと終了したのだった。
この瞬間、俺の貴重な高校3年間は全て無駄となったのだった……。
俺は目立つことのない、いわゆる陰キャラという分類の人間だ。
更に子供の頃からずっとぽっちゃりしていて、小学生の時は"肉団子"とか"ミートボール"とか揶揄われていた時期もある。
こんな俺なんかに一生、彼女なんてできないと思っていた。
だけどそんな俺へ高校一年の春、奇跡が起きた。
『なんか染谷くんって、くまさん人形みたいで可愛いよね! 良いよ、ウチら付き合おうよ!』
クラスでも割と人気者だった「黒井姫子」は俺の告白をあっさり受け止めてくれた。
こんな俺にも彼女が! しかも相手は割と人気者の「黒井姫子」。
この交際はきっと最初で最後のチャンスに違いない。
そう思った俺は、ありとあらゆることを、黒井姫子に合わせて、彼女の色へ染まってゆく。
「男の子に奢ってもらえると、大事にされてるぅって気がするんだよね!」
「あ、ああ、そうなんだ……」
デートの時の支払いはもっぱら俺の役目となった。
幸い、小さい頃から溜め込んでいたお年玉貯金があったからなんとかなった。
今、俺のお年玉口座は空っぽになっている。
「うっわぁ……武雄くん、そういうアニメぽいの趣味なの? キモいなぁ……」
「わ、わかった! 明日から止めるよ! ごめんね」
黒井姫子が嫌悪感を示したので大好きなゲームやアニメを封印した。彼女と話題を合わせるために、彼女の大好きなアジア系アイドルグループなどをことを一生懸命勉強した。今でも、件のアイドルグループはみんな同じような顔に見えて、判別がつかない。歌もよくわからない。
「夏休みはいっぱい武雄くんとデートして、楽しすぎて宿題できなかったんだ! だからお願いっ! 助けて武雄大先生!」
「使って、ひ、姫子っ!」
「ありがとー。……てかさぁ、名前呼ぶの止めてくれない?」
「あ、あ、ご、ごごめん!!」
割と人気者な黒井姫子に唯一俺が優っていたのが成績だった。俺は成績の悪い彼女ために、宿題を見せたり、テスト対策のノート作りなんかをしていた。
これがなかったらもっと勉強ができて、成績上位者になっていたのかもしれない。
「ごめんね……私、小さい頃から手を繋ぐより先はちゃんと大人の18歳を過ぎてからって決めてるの……面倒臭いと思うけど、付き合ってくれたら嬉しいなぁ……」
「も、もちろん! そういう考え方、大事だよね! 黒井さんって、す、凄いね!」
3年間も付き合っていたにも関わらず、俺は黒井姫子と手を繋ぐこと以外許されなかった。
だから俺は我が手を黒井姫子のものと思い込み、3年間必死に自分を慰め続けた。
今思えば、彼女がいるのに我が手がもう1人の恋人だったなんて、変だったと思う。
「ウチら、大学へ行っても一緒にいよ!」
「い、いつまでも一緒にいるよ、黒井さんっ!」
黒井姫子とこれからも交際し続けたい。
そう思う一心で、俺は彼女と同じく、地元の私立大学を進学先に選んでいた。
担任からは"君ならもっと上の大学を目指せる"と言われていた。
だけど当時に俺は黒井姫子の側にいることが、至上の幸福だと思い込んでいた。
ーーしかしこれらの努力は、交際終了宣言であっさりと無に帰した。
俺の貴重な高校3年間は全くの無駄となってしまった。
更に追い討ちをかけたのが、同級生からの黒井姫子に関するリーク情報だった。
「染谷くん、黒井さんと別れて良かったと思うよ。あの子、5股? 6股だっけ? してるみたいで……」
その同級生は親切心で教えてくれたんだろうけど……俺へはトドメの一撃となった。
ーーもはやなにもかもがどうでも良くなった。怒りや悲しみを飛び越えて、俺は強い無気力状態へ陥った。
特に食べることが億劫になった。
大好きだった唐揚げを見れば吐き気を催し、コーラの甘ったるさが喉を通らなくなった。
それでも親に、こんなことで心配をかけてはいけないと思い、出されたものには一応手をつけた。
母親も少し様子のおかしい俺に気づいてか、食べやすいヘルシーなものばかりを用意してくれた。
だけど食べる量はこれまでの10分の1にも満たなかった。
そんな生活がしばらく続き、気づけば高校の卒業式を迎えていた。
終わりの儀式というのはそれだけで、なにか心に区切りをつけるきっかけとなりうると感じたのは、この瞬間だった。
きっと暖かくなり始めた陽気の影響もあったらしい。
俺は卒業式を終え、打ち上げなども全て断り、帰宅する。
絶望の象徴である高校の制服を脱ぎ捨て、パンツ一丁の自分を鏡へ映す。
そして黒井姫子にフラれた日から、ずっと手をつけていなかった長い髪を掻き分けた。
「これが俺か……?」
お腹はすっかり凹んで、顎のラインがシャープになっていた。
丸くてふっくらしていた体のあらゆる箇所が、スマートな鋭角へ変化している。
その時、不意に頭を過ったのは、親戚の叔父さんの姿だった。
叔父さんは子供の目からみてもすごくかっこよくて、俳優さんみたいで、憧れだった。
両親も"あんた痩せれば翔吾叔父さんみたいになるのにねぇ"と言っていたことを思い出す。
今、まさに鏡に映っているのは、将吾叔父さんにそっくりな、誰か。
いや、これは間違いなく、今の俺の姿!
「お、おいおい、マジかよ……おいおい! これ、俺かよっ!」
そういえば、最近周りがヒソヒソと俺のことを話していたような。
気づく人は、これに気づいて、もしかして!?
身体が震え出し、体の奥から熱い何かが昇り詰めてくる。
きっと春の陽気の影響もあるのだろう。
分厚い肉のフルアーマーがパージされ、軽快な高機動型俺へ変形したからだろう。
今日で黒井姫子に振り回された暗黒の高校3年間は終わりを告げた。
だがこれは自業自得だ。
自己評価が低かったばかりに、間違った選択をし続けた結果だ。
もう二度と、あんな思いはしたくはない。やりたくもない。
だからこそ俺は生まれ変わりたいと強く思った。
幸いにも、俺はそのきっかけを掴んだ。
そして今、この時こそが、その願いを叶える絶好の機会!
「やってやる……やってやるぞ……! 俺は、これからなんだ……!」
*続きが気になる、面白そうなど、思って頂けましたら是非フォローや★★★評価などをよろしくお願いいたします!
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