第三章  ― 2 ―

 目覚まし時計が、昨日と同じ時刻に鳴った。


『朝が来たのだ』


 目を開けようとしたが、やはり、まぶたは開かなかった。こすっても、ほっぺたを、叩いても、開くことはなかった。

 昨日のことが夢であって欲しいと願ったが淡い希と消えた。


『両親は、大丈夫なのだろうか』


 水道水だけでも飲んで、喉の渇きを癒してほしいと、願うだけしかできなかった。


 こんなに朝早く起きても、何もすることはなく、一日を過ごすということになるのか。と、思ったら、怒りが沸々と沸きあがってきた。

 が、ぶつける物もないので、二度寝を始めようと思った。

 と、その前に、メダカに、朝ごはんの差し入れをする。

 今までと同様に水面に、二匹のメダカが、パクパクと口を開けて待っている姿を想像して、落とし入れた。


『二度寝をした』


 普段、二度寝をしたら、確実に会社に遅刻する。朝六時半の起床は、遅刻するギリギリの時間なのだ。

 だから、仕事のある日は、絶対に「あと五分」ができない。

 しかし今日は、「あと五分」の二度寝ができた。嬉しいことなのかどうなのか判らないけど。やっぱり、二度寝は気持ちのよいもので、少し身体が軽くなったように思えた。

 今は、何時なのだろうかと、テレビをつけた


 「午前10時32分10秒をお知らせします」


あと五分が、三時間位、寝たことになっていた。



 (テレビのリモコン)

 テレビをつけたので、リモコンでチャンネルを変えてみた。1chからボタンを押してみたが、昨日と同じで砂嵐か停波したのか、うんともすんとも言わないチャンネルだけであった。9chに戻して、テレビの電源を切った。

 テレビがついたということは、電力の供給は、まだ大丈夫だということだった。


『水は飲める』


 相変わらず、水道水を浴びるように飲んだ。顔を洗い、感じたのは。


『助かった』






 《電力の供給》


 何をするのでも、電気が必要になった。

 もちろん、部屋を明るくするのにも、電気が必要だ。水道水を、供給するのにも、電気が必要なのだ。

 水道水は、高い所から低い所へ勝手に流れるから電気なんか必要ないだろう。と、思われがちだが、その高い位置に水道水を持っていくために、ポンプ場が必要な地域が、たくさん存在している。

 電気によって、ポンプを作動させて水道水を送り込んでいるのだ。

 古い集合住宅であれば、屋上等に水道水を供給するための給水塔や大型のタンクを設置している。その給水塔に供給するために、電気を必要としている。

 現在の新しいマンション等は、直結給水方式が多くなっていて、受水槽をもたずに、直接、水道管から水道水が供給されるようになっている。

 増圧ポンプを稼働させて、高層階に水道水を送り込んでいる。

 この、増圧ポンプを動かすのも電気が必要なため、停電となれば、水道水が供給されることはなくなる。

 ちなみに、受水槽のメンテナンスが、必要なくなるのと、直接、水道水を飲めるので、直結給水方式が主流になっているそうだ。

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