正解とアップルパイ
池田春哉
一日目、朝
アスファルトが揺らぐ炎天下の夏の日に、僕はロボットを拾った。
いや、拾ったというのは少し違うかもしれない。
盆休みの四連休初日。朝からスーパーで食料を調達しての帰り道だ。
それは、僕の家の玄関前に腕組みをして仁王立ちしていた。
「なんだ……?」
不審に思いながら近づくと、それはとても精巧に造られた女性型ロボットだった。
なぜロボットが僕の家の前に立ち塞がっているのか。
「お待ちしておりました」
「え、誰?」
「ダース=ダイヤモンド社製ヒューマンロボット、分類番号F-0025。ニコとお呼びください」
「いやそうじゃなくて」
表情を変えずに自己紹介をするロボットに僕はつい突っ込んでしまったが、彼ら相手には意味もない行為だったとすぐに気付く。
そしてこうしている間にも頭上から燦々と陽光が降り注いでいる。
「話はあとだ。とりあえず僕を中に……
ロボットを玄関の前から動かそうと肩を掴むと、その肩は異常な熱を持っていた。
「皮膚素材の下は金属パーツなので高温です。私に触れると火傷しますよマスター」
「アラートが遅いよ。あとマスターってなに」
「マスターとは私の管理者という意味です。これから私はマスターの命令に従い、日常生活のサポートをいたします」
「いつの間に僕が管理者に」
「初期設定段階で私に触れた者をマスターとするようプログラムされています。またアラートはマスターを対象に設定されています」
「嵌められた」
まさか自らこんな押し売り方をするロボットに出会うとは。
いや待て。それよりも気になることがある。
「そんなに高熱で君は大丈夫なのか?」
「想定以上の温度上昇に冷却ファンが故障したようです。早急に冷却しなければオーバーヒートを起こし…あ、がが、限か」
「早く中に入れ!」
僕が慌てて玄関を開けると、ロボットは「かし、こ…ます。たー」と音声をひび割れさせながら家に入った。
こうして僕はロボットを拾った。いや、拾わされたのだった。
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