第2話新しい街に到着

 家出したオレは転移装置で、遠い国に転移。

 遠くに都市を発見。


 山道を降りていく、なんとか入り口まで到着した。


「うわぁー、近くで見ると、更にボロボロだな?」


 街を囲む城壁が、至る所が壊れている。

 崩れた石を登っていけば、中に入れるぐらい。


 王都の壮大な城壁とは偉い。

 どうして、こんなボロボロになってしまったのだろう。

 それに何故直さないのかな。


「とりあえず街の中に入るか」


 正門らしき場所に向かっていく。

 衛兵らしい人がいるので、中に入れてもらおう。


「おい、止まれ! 何者だ! どこから来た⁉」


 いきなり鋭い槍先を向けられてしまった。

 かなり殺気だっている。


「えーと、ボク、あっちの方からきました。ここに来た理由は、冒険者としてこ頑張りたいと思いまして」


「あっちの方向だと……まさか、あのロッキーズ山脈を超えてきたのか⁉ あの断崖絶壁で魔物だらけの危険地帯を⁉」


「あ、はい。でも安全な道を探して、ここまできました」


 たしかに、ここまでの道中はけっこう険しかった。


 でも家族の鍛錬場に比べたら、楽だった。

 あの燃えている険しい山に比べたら、道中はハイキングのような感じだったかも。


「そ、そうか。安全な道が出来たのか? まぁ、とりあえず身体検査をするぞ。ん? 何も荷物を持っていないのか?」


「あっ、はい。実は家族と喧嘩して、着の身着のままで、来ちゃいました」


「そうか。それは難儀だったな。とりあえず身体検査は終わりだ。入場料は持っているか?」


「あっ、はい。それくらいなら」


 懐の財布から、指定の金額を渡す。

 小さい時から貯めてきた、お小遣い。


 家出でも、これだけは持ってきていたのだ。


「それじゃ、通っていいぞ。だが、この街にはあまり長居は進めないぞ。早く他の街に行った方がいいぞ、身のためにも」


「えっ……どういう意味ですか?」


「街の中を歩けば、分かる。あと冒険ギルドは街の中央広場の所にある」


「あっ、わざわざありがとうございます!」


「礼はいらない。仕事だからな。あと、最後にひと言だ……『ようこそクソッたれな都市国家ダラン』に、ボウズ!」


「なるほど、ダランという国なんですね。ありがとうございます」


 門番の人に挨拶をして、先に進んでいく。


「色々と親切な人だったな……」


 あの人は言葉が厳しいけど、悪い人ではない。

 ちゃんとギルドの場所まで教えてくれたのだ。

 感謝しかない。


「さて、教えてもらった広場に行くか……ん? なんだ、こりゃ⁉」


 城門をくぐり抜けて、思わず声をもらしてしまう。

 目の前の街の光景が、かなり寂れていたのだ。


「ここは……人は住んでいるのかな?」


 正門から続いていく大通りは、閑散としていた。


 通りの商店も、閉まっている所も多い。

 通行人も少なく、かなり活気がない場所だ。


「うーん、王都に比べたら、この格差は凄いな」


 オレが生まれ育った王都は、人口が二十万以上。

 三車線の大通りには、ひっきりなしに馬車や荷車が走っていた。

 街の中は常に喧騒に溢れ、市民の活気に溢れていたのだ。


「いや、比べちゃダメだ。ここに住んでいる人に失礼だ」


 ダランの街に敬意を払うようにする。

 いや……さっき都市国家って言っていたから、この街自体が小国家なんだろうな。


「とにかく中央広場に向かおう! ん?」


 大通りを進んでいた時。

 横の脇道から、女の子の声が聞こえてきた。


「ん? 何か、困っている声尾の、感じだな?」


 とりあえず寄り道をすることにした。


 今の自分は自由の身。

 冒険ギルドにも、そんなに急ぐことはない。


 小さな通りを、ずっと進んでいく。


「たしか、この方向から、女の子の声が? あっ、いた!」


 目的の子を見つけた。

 神官着の少女だ。


 場所は、ここは墓地かな?

 沢山の簡易型のお墓が並んでいる。


 よし、声をかけてみよう。


「大丈夫ですか? 何か困っていますか?」


「ひっ⁉ えっ? あ、あなたは誰ですか?」


 いきなり背後から声をかけたので、少女がビクッとなる。


「あっ、ごめんさい。ボクはハリトと申します。この街にはさっき来たばかりで、大通りを歩いていたら、キミの声が聞こえたから」


「えっ……大通り……から? あんな遠い場所から? 本当ですか」


 昔からボクは地獄耳。

 集中すると遠くの声も聞けるのだ。


「あっ、うん。ほら、ボク、地獄耳だから。あと、どうしたの、なんか困っていたような感じだったけど?」


「見苦しいところを、お見せしました。私はマリアと申します。この街で司祭見習いをしています」


 マリアと名乗った少女は、司祭見習いだった。

 歳はオレと同じくらいかな。

 銀髪で小柄な可愛い子だ。


「何か、あったですか? こんなにお墓が多くて? あと街の様子が……」


「ダランに初めてきたんですよね、ハリトさんは。この街を見てビックリしたでしょう? 前は、こんな感じじゃなくて、もっと活気ある街だったのですが……」


「昔っていうことは、最近、何かあったの?」


「はい、実は何年か前から、急激に魔物や野盗の襲撃が急増しまして。それで、ここまで国が疲弊しているのです」


「魔物や野盗の襲撃が急増? 何か理由でもあるの?」


 普通は城壁に囲まれた都市を、魔物はここまで襲撃してこない。


 あとこんな寂れた国を、野盗が狙う理由もない。

 もっと豊かな国を狙った方が、効率がいいのだ。


「実は、この街は《初代勇者の降臨の聖地》なんです?」


「えっ、あの初代勇者様の⁉」


 今から五十年に降臨した魔王。

 それを倒すために召喚されたのが、異世界人である初代勇者だ。


 大陸を守った大英雄として、今でも世界中で祭られている偉大な存在なのだ。


「はい、そうです。だから街の中央にある城……その宝物庫が狙われていると言われています」


「そうか……そんな理由があったのか」


 マリアの話を聞いて、色々と納得がいった。


 この周囲の城壁がボロボロなこと。

 街に活気が無かったこと。


 全ては魔物と野党の襲撃が、原因だったの。


「ちなみに地下の宝物庫の物は、遠くに破棄できないかな? あとは住民が、違うところに引っ越すとか?」


「私たちは、このダランの国で生まれ育ちました。だから多くの者は苦難に耐えながら、今でも暮らしています。あと宝物の物、は移動出来ないという噂です」


「生まれ故郷か……そうだったんだ。ごめんね、無神経なこと言って」


 引っ越せばいいとか、つい軽はずみなことを、提案してしまった。

 頭を下げて謝る。


「いえ、気になさらずに。この国は特殊なので、細かいことは気にしていられません」


「そっか……強いだね、マリアは。あっ、そうだ。ところで、ここで何をしていたの?」


「実は魔物の襲撃や、病気や餓死した方の亡骸と魂を、ここで浄化している最中だったのです」


「あっ、そうか……」


 不遇の死を遂げた者は、しばらくするとアンデット化してしまう危険性がある。

 グールやスケルトン、レイスなど魔物化するのだ。


 それを防ぐためには聖魔法の《浄化》で、魂を天国に向ける必要がある。


「でも、この大量の数なので、私一人では魔力が足りなくて、それで泣き言を口にしてしまったんです」


「そうか。それならボクも手伝うよ。少しなら聖魔法が使えるから!」


「えっ? 本当ですか。それは助かります」


「あっ、その前に、マリアはかなり“魔力欠乏症”だね。ちょっと右手出してちょうだい」


「えっ、はい? こうですか?」


「それじゃ今からボクの魔力を分けてあげるから、楽にしてちょうだい」


「えっ……『魔力を分けてあげる』ですか。でも、それは上位魔法の……」


「それじゃいくよ……【魔力注入マナ・チャージ】!」


「ひっ……あっ……えっ? これは……あん……」


 マリアが頬がピンクになる。

 全身がピクピクしていた。


 相性がいいから【魔力注入マナ・チャージ】が上手くいきそうだな。

 ドンドン自分の魔力を、マリアの体内に注入していく。


「それじゃ仕上げにいくよ。【魔力注入マナ・チャージ】ラストチャージ!」


「ひっ……あっ、あっ、あ……」


 マリアは光悦こうえつな表情を浮かべる。

 身体をビクビクさせながら、その場に腰をついてしまう。


「う……今の下腹部が熱くなったのは……いったい……?」


 人の魔力は体内の下腹部に、最も蓄積できる。

 マリアは初めての体験に、言葉を失っていた。


「とりあえず、ちょっと休んだ方がいいかな? その間に、ボクの方で浄化の手伝いをしておくね」


「えっ、はい? ありがとうございます。でも、この数なので、無理はしないでください」


「分かった。よし、やってみるか……」


 意識を集中して、墓地の中を感知。

 浄化されていない魂たちを、ターゲットロック。


「いくよ……【神聖浄化乃光ホーリー・ライト・ブレス】!」


 聖魔法を発動。

 墓地全体が、明るい光に包まれていく。


「えっ……今の光は? ええ⁉ 全ての魂たちが……⁉」


 座り込んでいたマリアは、空を見上げて声を上げる。


 墓地から大量の御霊が、天国に登っているのだ。


「も、もしかして、今のは、ハリト君がやったんですか……?」


「そうよ。あまり聖魔法は得意じゃないから、これが限界だけど」


「い、いや、得意じゃないとか、何の冗談を言っているんですか⁉ 今のは【聖女様レベル】の極大聖魔法ですよ⁉ ハリト君、あなたは一体何者なんですか⁉」


「えっ、そうかな? でも母さんは、もっと凄い聖魔法が使えるから、ボクは才能がないんだよな」


 ボクの母は聖魔法を得意としていた。

 前に見せてもらった時は、母さんはもっと威力あった。


 だからおボクは半人前の未熟者なのだ。


「えっ、ハリト君のお母さんは、これよりもっと凄い? えっ?」


 マリアは更に言葉を失う。

 驚きのあまり動けずにいる。


 でも、もうちょっと休憩したら、動けるようになるであろう。

 これな置いていっても安心だ。


「あっ、そろそろ時間かも。じゃあ、マリアまたね。ボク冒険ギルドに行ってくるから!」


「あっ⁉ ちょ、ちょっと、待ってください、ハリト君⁉」


 こうしてボクは、ちょっとだけ街の手助けをした。


 次に向かうは、最大の目的地であるダラン冒険ギルド。


「よし! 絶対に一人前の冒険者になるぞ!」


 でも冒険ギルドはどんなところ何だろう。


 ちょっと心配で、緊張してきたな。


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