勇者パーティーをパワハラ追放された【自己評価の低い】支援魔術師、実は魔神に育てられた最強の男でした

ハーーナ殿下

第1話勇者パーティーをパワハラ追放される

「ハリト! お前みたいな役立たずは不要だ! 今日でこの勇者パーティーを辞めてくれ!」


 王都にある豪華な酒場の個室。

 支援魔術師であるオレは、勇者アレックスに解雇を言い渡される。


「わ、わかった、アレックス……でも何でオレが解雇されるか、理由を聞かせてくれないか? せっかく一年間も一緒に頑張ってきた仲間だったのに?」


「はぁ? 『一緒に頑張ってきた仲間』⁉ 冗談は口出しにして欲しいぜ! お前は戦闘では役立たず、敵を一匹も倒せなかっただろうがよ⁉」


「うっ……それは……」


 アレックスの指摘は正しい。


 何故ならオレの職業は支援魔術師。

 攻撃魔法は得意ではなく、仲間をサポートする魔法が得意なのだ。


「アレックス様の言う通りですわ! アンタみたいな役立たず、私の攻撃魔法があれば不要なのよ!」


 アレックスの隣にいる女魔術師エルザ。

 オレのことを不要だと、彼女も言い放ってくる。


 エルザは魔術師学園を首席で卒業した才女。

 たしかに彼女の攻撃魔法があれば、オレの存在価値はないのかもしれない。


「アレックス様、エルザ、それは言いすぎだと思いますわ。そこにいる頭の悪いハリトは『不要』じゃなくて、『邪魔』だって、ストレートに言った方がいいですわ!」


 同じくアレックスの隣にいる女神官のレイチェル。

 彼女はオレのことを邪魔だとさげんでくる。


 これで三対一。

 アレックス勇者パーティーは何事も多数決で決めている。


 つまりオレは絶対に脱退しないと、いけなくなったのだ。


「そっか……ふう。それでは短い間でしが、お世話になりました」


 頭を下げて、これまでのことに感謝する。

 本音を言えば悔しさもある。


 でも、こうなったら、残ることは出来ない。

 断腸の思いで、首から勇者パーティー証であるネックレスを外す。


「おい、おい、それだけじゃないだろう? お前の装備している武具と、有り金全部、ここに置いていきな!」


「えっ、でも、これはオレの見つけた……」


「はぁ? その装備は、オレたちが命を賭けて迷宮で魔物を倒して、ゲットしたモノだろうがぁ⁉」


「うっ……でも、オレもサポートをしていたから……」


「はぁ? なんだって、この盗人野郎が!」


 もはや反論すら出来ない状況。


 仕方ない。

 このパーティーに入ってから入手した装備を、オレは一式置いていく。


「はい、ご苦労さん。これ、今までの賃金な!」


 アレックスはそう吐き捨てながら、わずかな貨幣を放り投げてきた。

 オレから没収した金の、百分の一もないはした金だ。


「さすがアレックス様、慈悲深いです……クスクス……」


「ですわね、クスクス……」


 二人の取り巻きから、嘲笑ちょうしょうが向けられる。


 くっ……。

 もはやこの場にいるだけも、気分が悪くなってきた。


 早くここから出ていこう。

 オレが個室を出ていくこにする。


「ちょ、ちょっと、ハリト……反論しないの? 本当に辞めちゃうの?」


 出口の前にいた赤毛の女弓士、マリナに引き留められる。

 彼女は一緒に勇者パーティーに加入した幼馴染。


 この勇者パーティーの編成は


 ・【勇者】アレックス

 ・【天才女魔術師】エルザ

 ・【加護持ち女神官】レイチェル

 ・【天賦てんぶの女弓士】マリナ

 ・【支援魔術師】ハリト


 この五人パーティーだ。


 いや……今日でオレは解雇だから、四人パーティーになるのか。


 他の三人に比べて、幼馴染マリナだけはオレの唯一の味方だった。


「ハリト……もしも、良かったら私も一緒に……」


「それはダメだ、マリナ。キミは有能だし、お父さんの難病の治療費のために、ここに残るべきだ」


「そ、それは、そうだけど……ハリトはこれから、どこに行くの?」


「家には戻りたくないから、とりあえず反対の東の街にでも行ってみる。それじゃ、マリナ」


「あっ……」


 引き留めてきた幼馴染と、振り切っていく。

 すまない。


(マリナ……元気で頑張ってやってくれ……)


 アレックスは女クセが悪い。

 だがマリアのことは全く好みではないから、心配はない。


 それに彼女は毎月、膨大な治療費を稼がないといけない。

 普通に冒険者をしては、無理な金額。


 だからマリナは勇者パーティーに残った方がいいのだ。


 バタン。


 個室を出て、扉を閉める。

 これで本当に勇者パーティーとお別れだ。


『……よし。ようやく邪魔者もいなくなったことだし、今宵は祝勝会をするぜ!』


『賛成です、アレックス様~』


『あのクズから没収した金で、いっぱい騒ぎましょう~』


 アレックスと取り巻き女子の声が、扉の向こうから聞こえてくる。


 おそらくマリアはいつものように、飲み会には参加しない。

 もうすぐ、この部屋から出てくるはず。


 その前にオレも早く、この宿屋から立ち去ろう。


「さて、とりあえず……職を探しながら、東の街に行くか……」


 こうして勇者パーティーを追放されたオレは、辺境の地方都市へ向かうのであった。


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